第2章 探偵をかけたバトル

水族館

第17話 「水族館でも行かない?」

 月野から依頼されている月野に告白してくる生徒の素性調査は、二人の調査を終えて三人目の調査対象が判明するのを待っている状態。


 その間も他の仕事は溜まっているので、他の仕事を熟すため俺は探偵部屋でキーボードを叩いていた。


「はい、これお茶」 


「ありがと聡野。探偵部屋で飲むお茶本当美味しいんだよね。これってほうじ茶?」


「そだよ。パックのお茶。そんなに高くないけどね」

 

「そうなんだ。でも本当美味しいよこれ。家でも同じやつお母さんに買ってもらおうかな」


「そうしなよ。緑茶も同じパックのやつあるけどおいしいよ」


「じゃあ両方買ってもらおっと--」


「なんで普通に月野がいるんだ⁉︎」


 ツッコむのはやめておこうかと思ったが、サトノン君と月野があまりにも平和ボケした会話を続けているので、ツッコまざるを得なかった。


「え、なんでって別に理由はないけど」


「理由が無いならこの部屋にくるのやめてくれない⁉︎ せめて三人目の素性調査対象がわかってから来てくれよ! ここは遊び場じゃないんだぞ⁉︎」


「……ぐすっ。……なんでそんな冷たいこと言うの?」


「おい嘘泣きはやめろ」


「あちゃーバレたか」


 俺に探偵部屋から出ていくよう指摘された月野は泣くような素振りを見せたが、それが嘘泣きであることはすぐわかった。


 嘘泣きをする月野のことを思わず可愛いと思ってしまったのは内緒である。


「ここは仕事をする場であって雑談をするために集まる場所じゃないんだ。用が無いなら出ていってくれ」


 そう月野に伝えるのは心苦しいが、仕事と遊びはハッキリ分けておかないと仕事に悪影響を及ぼしかねない。


「そんなんだから友達少ないんじゃない?」


「ゔっ……。それはまあ指摘されると苦しいところだが」


「探偵活動も大事だけどさ、友達も大切にしなよ?」


「……まあそあだな」


「ってことだから私はこの部屋から出ていきません!」


「……邪魔はするなよ」


 できれば静かな空間で集中して仕事をしたいところだが、俺は月野に指摘された通り友達が少ない。


 ここで月野を探偵部屋から力ずくで締め出すことは難しくないが、それをしてしまえば月野との友好関係を築くことはできないだろう。


 仕事も大事だが、仕事ばかりではなくそろそろ人間関係も大事にしないとな……。


 そう考えて、月野を探偵部屋から締め出すのはやめておくことにした。


「あ、そーだ藤堂君。今度一緒に水族館でも行かない? お母さんが親戚からチケットもらったらしいんだけど、仕事で忙しくて中々行けないみたいでさ」


「え゛っ」


 月野からの誘いを聞いたサトノン君は、どこから出したのかわからないような声を出した。


「サトノン君? どうかしたか?」


「い、いや、なんでもないけど」


「そうか? で、水族館だっけ? 別に構わないけど」


「えっ、いいの? そんなにすんなりオッケーしてもらえらと思ってなかったんだけど」


「まあ断る理由も無いしな。探偵活動はあるけど暇な日もあるし。それにサトノン君が水族館すきだからな」


「え゛っ」


「どうした? サトノン君と同じ声だして」


「い、いや。なんでもないけど」


「ふっふっふー」


「……?」


 月野もサトノン君と同じくどこから出しているのかわからないような声を出しているが、サトノン君は水族館に行けることが相当嬉しかったのか、やたらニマニマしていた。

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