第15話 「かっ、かわっ--」
蒲生の調査を終えた俺は、調査内容を月野に報告するべく月野を探偵部屋に呼び出していた。
まああれは調査というよりは成敗だったような気はするけど。
「蒲生なんだけどな、えーっと、月野への告白をな、その--」
「やめたんでしょ? 知ってるよ。私も女子's Networkで情報手に入れてたし」
「知ってくれてるのはありがたいけど相変わらず探偵の仕事奪うなぁそれ」
蒲生はかなり最低なことを言っていたので、月野への告白をやめさせられたのはよかった。
しかし、告白されると思っていたのに急に告白されないとなると月野もショックを受けるだろうし、どのように伝えようか悩んでいたのだ。
「まあよかったよ。どうせ告白してきてもらっても断るだけだし。告白されて断るのって断りづらいんだよね」
「贅沢な悩みだな」
「私も莉乃くらい告白されたいもんだよ」
「サトノン君も十分告白されてるだろ」
「それで、調査結果はどうだったの? せっかく調査してもらったんだし、どうせ付き合うことはないけど一応調査結果は聞いておこうかなと思って」
……まあそうなるよな。
告白してこないならもういいや、となってくれはしないものかと思っていたのだが、思う通りには行かなかった。
「あー……うん、いい奴ではなかったな」
「……へぇ。そうなんだ。具体的にはなんでそう思ったの?」
「えーっと……」
俺は月野からの質問に、どのように回答するべきか悩んでいた。
一応『いい奴ではなかった』とだけ伝えたので、月野が今後蒲生に近づくことはなくなるだろう。
しかし、調査当日に起きた一連の出来事を伝えるにはあまりにも内容が濃すぎるし、探偵として自分が派手な行動をした事実も知られたくない。
何より『蒲生が月野を無理矢理ホテルに連れ込もうとしていた』なんて伝えたら男子に対する恐怖心を植え付けてしまうことにもなりかねないので、月野に事実をそのまま伝えるわけには行かないのだ。
「えー、なになに教えてよ〜」
「そ、それはまあ告白もされないことになったんだしもういいじゃないか」
「別に調査結果をただ報告するだけなんだし教えてくれてもよくない?」
「ま、まあそれは……」
「教えてくれるまでこの部屋出ないよ?」
「シンプルに脅してきた⁉︎」
「脅しじゃなくてただの連絡だよ」
月野のためを思って調査結果を隠そうとしているのに、月野は一歩も引かないのでこのまま蒲生の調査について何も言わないわけにはいかなさそうだ。
それならもう適当に嘘をついてやり過ごすしかない。
「……あれだ、蒲生が女癖悪いって噂を蒲生の先輩から聞いたんだよ。だから月野みたいな、美人で可愛くて人気者の人間には蒲生は相応しくないと思ったんだ」
「かっ、かわっ--」
「……? どうかしたか?」
「そ、そうだったんだねー! 女癖悪いなんて最低だね。本当蒲生君が私に告白してこなくてよかったよ。それじゃあ私はこれで!」
「えっ、ちょっ、月野? 急にどうし--」
月野は俺から調査結果を聞いた瞬間、探偵部屋を飛び出していってしまった。
そんなに調査結果を聞けて満足したのだろうか。
「……行っちゃったね」
「ああ……。なんだったんだ一体」
あんなに調査内容が気になっていたと言うことは、まさか月野は蒲生に多少なりとも気があったのだろうか?
いや、流石にそれはないと思うが……。
そうだ、もしかしたらお花を摘みにいったのかも知れない。
うん、きっとそういうことなのだろう。
こうして俺は色々と問題はあったものの、一人目に続き二人目の素性調査も完遂してみせたのだった。
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