第14話 「惚れてたり?」

「……ねぇ、どう思った? 今日の乃音のこと」


「うーん……。正直に言わせてもらえば、完全に探偵ではなくなってたよね」


 私と聡乃は藤堂君による蒲生君の調査を覗き見した帰り道、藤堂君の話をしていた。


 藤堂君は探偵なので、誰かの調査をするときは影からコソコソと調査をするべきだ。


 まあそうは言っても大事な情報を得るには多少大胆にならなければわからないこともあると思うので、潜入調査くらいならまだわかる。


 しかし、今日の藤堂君は思いっきり調査対象である蒲生君に喧嘩を売り、ストラックアウトでのバトルで派手に勝利して見せた。


 そんな場面を目撃してしまった私の感想が『探偵ではなかった』という感想になるのは当然のことである。


「ね、流石にでしゃばりすぎてたね。普段はあんなことしないんだけど」


「えっ、よくあることじゃないの? 初めて覗き見した調査で派手なことやってたから、てっきりよくやってることなのかと思ったんだけど」


「よくあることじゃないよ。毎回あんな派手なことしてたら探偵だって噂話がすぐ広まっちゃうし。初めてじゃないかな。あそこまで派手なことしてたのは」


「へぇ……。そうなんだ」


 聡乃の話を聞いた私は心が跳ねた。


 藤堂君が蒲生君に喧嘩を売った瞬間も、私の心は跳ねていた。


 自分のために自分を顧みず立ち向かってくれる、そんな姿に私はもう恋に落ちてしまいそうだった。

 

 そこからさらにダメ押ししてくるように今回みたいに派手なことをするのが初めてだと聞いた私は、藤堂君が私のことを特別だと思ってくれているような気がした。


「なんであんなことしたんだろ。普段はあんなことしないのに。もしかしたら莉乃に惚れてたり?」


「そ、それは無いでしょ流石に! まともに喋ったのだって私が最初に探偵部屋に行った時だし、そこまで関わりも無いし!」


 聡乃が急に、藤堂君が私に惚れているかも? なんて話をしてきたので私は焦ってしまう。


「まあ流石に無いかー……ってあれ、莉乃なんか顔赤くない?」


「赤くないよ⁉︎ ほら、ちょっと覗き見するのに疲れちゃって、体温上がってるんだよ」


「あー確かに私も覗き見で疲れてるや。物陰に隠れて覗き見るって結構体力使うんだね」


 苦しい言い訳ではあっだが、なんとか自分の顔が赤くなっていた理由を誤魔化すことができたようだ。


 とはいえ、もう自分の気持ちには誤魔化しが効かない程、私は藤堂君のことを意識してしまっている。

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