2人目の調査
第9話 「そこのドグソヤンキー」
時刻は夜の二十時を回ったところ。
俺は中野の時のように次なるターゲットの後をつけ、バッティングセンターへとやってきていた。
月野から告げられた月野に告白してくる2人目の生徒は、同学年ではあるが俺と月野とは別のクラスで、サトノンと同じクラスの
蒲生は名前からイメージできる通りのヤンチャな生徒で、同級生からも先生からも評判はよくない。
授業中は寝てばかりで、その原因は夜な夜などこかで遊び歩き寝不足になっているからという噂もある。
実際今日だってもう二十時なのにこうしてバッティングセンターにやってきているので、噂は真実だったということだ。
というか、そもそも同じ学校の生徒とあまり関わりのない蒲生が、なぜ月野を好きになったのだろう。
……まああれだけの可愛いさを持つ月野なので、一目惚れってところか。
月野に告白してくる二人目の相手が蒲生だと聞いた俺は、まずサトノンに女子'sNetworkで蒲生の情報を調べてもらった。
女子's Networkによると、蒲生は身長百八十センチ後半で、体格も良く、額に傷跡があるという見た目のせいで皆から恐れられ、学校に馴染むことができず親しい友人もいないらしい。
特に何か悪事を働いたという情報は出てこなかったが、すれ違う生徒全員にガンを飛ばしているらしく、それだけでも友達ができない理由としては十分だった。
「
「おっせーぞ! 待ちくたびれて先に何回か打っちまったじゃねぇか」
「すんません! あ、じゃあストラックアウトやりましょうよ!」
蒲生が山際先輩と呼んで慕っている様子の男性は見た目の年齢から判断するに、大学生といったところだろうか。
蒲生と同じく人を寄せつけない外見で、蒲生のヤンキー仲間だと思われる。
蒲生に気づかれないよう蒲生との距離を縮めた俺は、山際先輩とやらとの会話を盗み聞きし、二人よりも先にストラックアウトがある場所へと向かった。
ストラックアウトをできるスペースは二カ所あり、俺はそのうちの一カ所でストラックアウトをプレイし始めた。
蒲生がプレイを始めた後で俺が真横にあるもう一カ所でプレイし始めると、邪魔に思われて俺の顔を覗き込まれてしまい、俺が同じ学校の奴だと気付かれる可能性が高まる。
それならば蒲生がストラックアウトの場所に来るよりも先にプレイをしておけば、違和感はないし俺を気にしてくることはないだろう。
まあ一応帽子を被り眼鏡をかけ、マスクをして変装しているので気付かれないとは思うし、そもそも学校でも目立っていない俺の顔を仮に見られたとしても気付かれないとは思うが。
俺がストラックアウトを始めてすぐ、蒲生たちがもう一台でプレイを始め、何やら不穏な話しを始めた。
「そういえば景虎、おまえこないだ同じ学校の超絶美人に告白するって言ってたけどまだなのか?」
「まだっすよ。来週告白するつもりっす」
「絶対断られるだろ。おまえみたいな見た目いかついやつ。しかも関わりもほとんどないんだろ?」
「任せといてくださいよ。断られても無理矢理そこら辺のホテルに連れ込んでやりますわ」
「ははっ。ちゃんと動画でも撮って口止めはしとけよ」
--っこいつら。
やはり蒲生は噂通りのクズだ。
月野に蒲生の素性を報告するために調査をしていたが、こいつは調査するまでもなく最低な人間である。
調査は切り上げて早く月野に報告をしなければ--。
「おい、そこのドグソヤンキー」
「……なんだテメェ?」
蒲生が月野に告白をして、本当に無理矢理ホテルにでも連れ込んでしまったら、月野は今以上に男子に対して苦手意識を持ってしまう。
そんなことさせるわけには行かないと思った俺は、いつのまにか俺の横でストラックアウトをしている蒲生に喧嘩を売っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます