第21話 ゴミ掃除
ボクの目には領主邸が映っている。
門から屋敷入口までは革命軍の人達で埋め尽くされている。
ボクの暗殺が失敗した場合に備えていたのかもしれない。
無駄だよ。こんなゴミがいくら集まったところで、ボクを殺すことなんてできないよ?
「お前と一緒に行った仲間をどうした?」
「はははっ! ゴミが仲間とか……笑える」
「な、なに!? 貴様! 我らを──」
頭が果実のように『潰』れ、汁を散乱させる。
面倒だなぁ。
手に『剣』を出現させて、振るう。
相手の攻撃など関係ない。
首を斬られようが胸を刺されようが『治』してただ首を切り落としていく。
時には『重』さで地面に押しつぶし。
時には胸を『貫』いて殺していく。
途中で気づいた。
身体を『鋼』にする。
身体が重たいけど、これで『治』す手間が省ける。
自前の力で『鋼 』の拳を振り下ろしてくたばらせる。
肉弾戦になったボクは次々と革命軍をなぎ倒していく。
入口に着いた頃には屍が散乱していた。
片付けは後にして、今はこの気持ちをぶつけるために領主の部屋へと向かう。
マングさんが立ちはだかった。
この人は何の天漢だったか。
放たれた掌底をそのまま身体に受ける。
身体の内部に衝撃が伝わり、赤いものが口から溢れてくる。
それを『治』して構える。
この人の天漢は『武』だったんだね。
武道を習得しやすい星の元に生まれている。
だからって、ボクに勝てると思わないで欲しいな。
様子見は悪手とみて攻めてきた。
ジャブからのストレートを放ってくる。
タイガさんに教わったダブル。
そんな普通の攻撃効くと思った?
懐へと潜り込み胸を『貫』ぬ……けなかった。
咄嗟にのけぞりバク転したマング。
ボクは構わず攻め続ける。
踏み込みから『速』い動きで『重』一撃を放つ。
片腕を奪った。
だが、まだ健在だ。
残った腕で貫手を放ってくる。
ボクは『守』りに入った。
その隙に押され始める。
攻撃は効かない。
守り続ける。
拳を弾きあげ。
蹴りを受け止めて掴み、床へと叩きつける。
なんでこんなにタフなの?
本当に面倒。
動きの止まった頭を掴む。
「ハハハハハハッ! 字力を沢山使っただろう? もう無くなるんじゃないか?」
笑うダンテを果実のように『潰』した。
字力? ボク、そんなのなくなったことないもん。
ゆっくりと階段をあがっていく。
この辺りにはもう邪魔をする人は居なくなっていた。
「【動くな】」
あぁ。ようやく出てきたの?
我慢できなくて部屋から出てきた感じ?
馬鹿だなぁ。閉じこもってればいいのに。
そんなのボクは『無』効にできるんだよ?
無駄だよぉ。
ゆっくりとゴッコに向かって歩いていく。
「お前の弱点は分かっている! 倒すべくちゃんと調査したからな!」
「あの時、最初泊まった時は殺す気だったんでしょ?」
「あぁ! そうだ! まさか、『殺』の天漢に対抗できる能力を持っているとは知らなかったからなぁ!」
ゴッコはニヤリと笑いながら離れたところで警戒している。
お前の能力は中距離むきだもんね?
「【動くな】」
だから『無』駄だって言ってるじゃん。
剣で斬りかかってきた。
僅かなタイムラグを狙ってきたみたい。
でもね。
ボク、そんなに天漢に頼らなくても強いよ?
剣を紙一重で避けて上段蹴りを放つ。
頭にクリーンヒットした。
少しグラついた。
胸を『 貫』く一撃を放つ。
胸は貫いたが、「【治る】」の一言でそれは治った。
天漢を聞いた時に思った。
あの『辞』の天漢はボクの能力に似ている。
なんでもできる。
汎用性のある能力だった。
それだけに制限があると言っていたけど。
あれは本当だと思う。
恐らく死に関することは、制限が強いのではないかと思うんだよね。
「驚いたか? 【字力が無くなり、死ね】 」
その言霊を言い放つと同時に胸に剣が刺さった。
口から赤い液体が溢れる。
【死ね】という部分は辛うじて『無』効化できたみたい。
ボクの字力がなくなった。
胸から溢れる赤い液体が止まらない。
治せないみたい。
でもボクもタダじゃ負けないよ?
自力でゴッコの喉を突く。
「ゴフッ! まだ……じなぬが!」
ボクの『集』める能力ってねぇ。
字力も集めるんだ。
だからなくなってもすぐに満タンになるんだよねぇ。
傷を『治』して捕まえたゴッコを『重』さで
そして、天漢を奪う。
この字、便利そう。
大丈夫だよ。ボクがきっと役に立ててあげる。
タイガさんの作る『粋』領のね。
すぐに『天』へと返していき、屋敷を綺麗にする。
領主邸の掃除だけで結構時間かかっちゃった。
あーぁ。この領を管理する人いなくなっちゃったじゃん。どうしよう。
ボクはこの領を一旦出てタイガさんに相談しよう。
そして、理由を話した。
僕達は騙されていて、革命軍の人達も悪い人たちだったって。
だから、みんな殺しちゃったって話したの。
そしたら頭を抱えていたけど、そうなったのは見抜けなかった俺のせいでもある。シュウイを咎めることはしない。けど、その領を収めてくれないかと。
「それって、ボクが領主になってってこと?」
「あぁ。シュウイがいてくれれば安心だ」
そんなことになってボクは驚いたけど、タイガさんの役に立てるなら、領主やってみるよ。
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