揺れる葉




「あら、」

その言葉で佳文は、目を覚ました。


「いつものか…」

佳文は、年に数回同じ夢を見た。


「戒めの夢か…」

佳文は、面倒くさくなると見えても見えないフリをする癖があった。


「4か月も…見えないフリを、してりゃーあの夢を見るよな…

あの夢も面倒だ…けど」

佳文の面倒な夢は、夢でなく、たぶん本当に起きた出来事だった。


それは…


「何だろう…風も吹いてないのに…あの葉っぱだけ動いてる」

小学生の佳文は、公園で友達を待っていた。


「なんか…気持ち悪い…だけど…」

なぜ、風も吹いてないのに木の葉っぱが、一枚だけクルクルと

動くのか興味が湧いてきた。


「変なモノ居ないよね…」

あと数歩で動いてた葉っぱの木に近づくと、クルクルと動いていた

葉っぱが、「ピタっ」と止まった。


「うわっ!!」

少し後退りして、興味が気持ちに打ち勝ち

動いていた葉っぱの木の前まで進んだ


「動いてた葉っぱって…この葉っぱだよね…」

佳文は、動いてた葉っぱを、指で挟んで動かしてみた。


「あれ?動いていた葉っぱを揺らしたら、他の葉っぱも枝も動く…

力が強いのかな…」

少し、ほんの少しの力で葉っぱを揺らしてみた。


「ダメだ…他の葉っぱも枝も動く…なんで?」

何度も繰り返していると


「おーい!!ヨッシー何してんだ~!!」

公園で遊ぶ約束の友達が集まってきた。


「あっ!!ごめーん、今行く」

友達と合流し、三角ベースで夢中で遊んで

もう揺れる葉っぱの事は、忘れていた。


数日が過ぎた頃、学校の帰り道の途中に立つ木

プラタナスの葉っぱが、一枚だけ風も吹いていないのに揺れていたのを見て、

佳文は、公園の揺れる葉っぱを思い出した。

手の届かない高さの葉っぱが、クルクルと動いているのを

ボーっと眺めてると、


「おーい、ヨッシーなに見てるんだ?カミキリが居たのか~?」と

幼馴染の同級生が声をかけてきた。

佳文は、なぜか葉っぱが動いてるのを言っちゃあダメな気がして、


「うん、カミキリが居ないか見てたんだよ!!」と

咄嗟に答えた。


「カミキリ居たの?」と

言いながら幼馴染が近づいてきた。


「ううん、居ないね」

揺れる葉っぱを見ると、もう動いていなかった。


翌日、学校への行き帰りに、揺れていたプラタナスの葉っぱを見たが

どの葉っぱも揺れていなかった。


そして、数日が過ぎた。


「ヨッシー!!今から、クワガタを採りに行かない?」と

幼馴染が呼びに来た。


「うん、いいよー行こう行こう、どこまで行くの?」と

佳文が聞くと、幼馴染が


「チャリで、○○川の雑木林まで行こうぜー

俺のクラスのヤツが、そこの木を蹴ったらクワガタやカブトが

ボトボト落ちてきて、虫かご満タンに採れたって見せてくれたんだよ!!

採れたクワガタとカブト見せてもらったけど、すげーイッパイだったよ~

クワガタは、ノコギリばっかだったし、いいよなー」

幼馴染は、興奮し汗をかきながら、話した。


「じゃあ、用意するから待ってて」

佳文は、虫採りタモと虫かごを用意して自転車に乗った。

小学生が自転車を漕ぐ速さで1時間の河川敷にある雑木林に着くと


「こうちゃん、やっぱり来たんだ!!」

幼馴染の耕史のクラスメイトの進が来ていた。


「あっ、ヨッシーも来たのかー!!三人で、ここのカブトとクワガタを

採り尽くしちゃおうぜー!!」

そう言いながら、進は、雑木林の中へ入って行った。


「進~速いよ!!俺達初めて来るんだから、ゆっくり頼むよ~」と

こうちゃんが言うと、立ち止まって、


「木を見てみなよ~クワガタとカブトが、いっぱい居るぜ!!」

周りに生えた木を指差す。


「すっげぇ~クワガタとカブトが生る木だぁー!!」

佳文と耕史は、同時に同じ言葉を叫んだ。


「どれでもいいから、木を蹴ってみなよ!!」と

進が言うと、耕史が


「とぉ!!」と叫んで木を蹴った。すると木から

ボトボトっとクワガタとカブトムシが落ちてきた。

それを見た、進と佳文は、「とぉ!!」と叫び木を蹴って

クワガタとカブトムシをボトボトと木から落とし

虫かごに入れた。


「あはは、すげぇーなぁ~」と

騒ぎながら落ちた、クワガタとカブトムシを集めた。

すると、耕史は、


「はーい、これから誰が一番大きなクワガタとカブトを捕まえるか競争しまーす」

と言い出し、進と佳文は、即座に賛成した。

そして、三人は雑木林の中に分かれて行った。


「大きなクワガタとカブトは、どこだ~」と

言いながら雑木林を歩く佳文が、ふと見上げた桐の木の

葉っぱが一枚クルクルと揺れていた。


「あっ…」と声を出すと、揺れていた桐の葉っぱは

ピタッと止まり「バサっ」と音がして何かが飛んで行った。

鳥かと思ったが、その大きさは、人程の大きさに佳文には見えた。

そのまま、佳文は、桐の木の前で固まってしまった。

暫くすると、


「はーい、時間です」と声がしたが、

佳文は、動けないままで居た。

なかなか戻らない佳文を探して、耕史がやってきた。


「ヨッシー!!大きいクワガタとカブト捕れた?」

桐の木を見て動かない佳文に、耕史が肩を叩きながら


「ヨッシー、なんか居るのか?」

佳文は、我に返った。


「ううん、なんかデッカい、なんか凄くデカいモノが飛んだんだよ!!」

佳文は、凄く早口で話した。


「ヨッシー、怖い話すんなよ~」

耕史は、そう言い


「俺が、今夜オネショしたらヨッシーのせいだからな~」

耕史が大笑いし騒いでると、進がやって来て、


「なに大笑いしての?大きいヤツ捕れたの?」と進が聞く


「大きいのは、採れないよー」

耕史が笑いながら

「ヨッシーがさ、デッカイなにかが飛んだのを見たって脅かすからさー

今夜、俺がオネショしたらヨッシーのせいだからな~って

言ってたんだよ」


それを聞いた進が

「こうちゃん…もしかして、まだ…オネショしてるん?」

耕史は、


「みんな、オネショしないの?…俺…たまにだよ!!」

その言葉に、三人は大笑いし、佳文の怖い思いも薄らいでいた。

三人は、雑木林から出てきて自転車に乗り


「また、ここに来る時は三人だけだぞ!!秘密の場所だからな!!」

進が言い、「バイバイ~」と進と途中で別れた。


「ヨッシー…さっきの事、ほんとう?」

耕史が聞いた。


「うん…たぶん…大きな鳥かもしれないけど…」

佳文が答えると、耕史は、


「きっと鳥だよ!!デカい鳥!!決まり!!」

家が近づき

「バイバイ~明日なー」と叫んで家に着いた。


次の日、朝から三角ベースをやろうと公園に集まる約束があった。


少し早く公園に早く着いた。佳文は

公園のベンチに座っていた。

公園の地面には、所々に雑草が生えて、あまり整備をされてはなかった。

ベンチに座りながら、公園の中を、ぐるりと見回すと一人の

女の人が地面に座り込んで、生えた雑草に息を吹きかけていた。

その雑草は、クルクルと動き、その動きは、今まで見た。

葉っぱの様な動きだった。

その女の人は、スクっと立ち上がり、アジサイの木の方へ歩いた。

その様子を佳文は、目で追いながら眺めてた。


「あれっ?あの木って…一枚だけ葉っぱが動くのを初めて見た木だ…」

佳文は、声には出さなかった。


その女の人は、アジサイの葉っぱ一枚だけを、指でクルクルと回した

不思議な事に、他の葉っぱは、微動だにしなかった。

その行動を眺めていると、その女の人は、「フッ」と消えた。

佳文は、ベンチから立ち上がり、公園の隅々まで見回したが、

公園には、誰も居なかった。佳文は、ベンチに座り直し


「俺…夢を見てたのかな…」とつぶやく

すると、となりに気配を感じ「誰?耕史?」と佳文は、声にならない声で叫んだ

となりを見ると、雑草とアジサイの葉っぱを、クルクルと回してた

女の人が、となりに座って居た。


「あら」「私が見えるのね」そう言い、

佳文のとなりから「すぅ~」と、女の人は消えた。


「お~い、ヨッシー!!なにベンチで寝てるんだよ!!」

耕史の声で我に返り佳文は、ベンチから起きあがった。


「あれ…今のは…夢だったのかな…」







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