はじまり…





佳文は、夏休みの宿題に追われていた。


「ヨッシー!!あ~そぼ!!」

幼馴染の耕史の声が外から聞こえた。

「おーい!! ヨッシー!!居るんだろ?

ま~た寝てんのか!!」

「あははは」

耕史の他に数人の笑い声が聞こえた。


窓を開けて、佳文が叫ぶ

「寝てないし!!」


「あっ!!ヨッシーが起きた!!」

「あははは」

耕史達は、大笑い


「耕史!!お前っ!!ヨっちゃんを、からかうんじゃあないよ!!」

と耕史の母親が、叫ぶ


「あっ…かぁちゃん…」

耕史は、母親に叱られた。


「こうちゃん、怒られてやんの~」

「わははは」

耕史は、数人のクラスメイトに笑われていた。


「耕史は、夏休みの宿題終わったの?」

そう言いながら、佳文は、玄関から外へ出た。


「俺?まだ終わってないよ~この中で

夏休みの宿題終わった人~手を挙げて」耕史が言うと、


「は~い!!」

周りのクラスメイトは、全員手を挙げた。


「えぇー…」

佳文と耕史は、同時に声をあげた。


「お前ら…すげぇーな」

耕史は、うな垂れた。佳文もうな垂れた。


「みんな、これから何処へ行くの?」

佳文は、聞いた。


「さぁ…」

クラスメイトの一人が言うと


「そういやぁー、なにも考えてなかった」

耕史が言うと

「あははは」

みんなが、大笑いした。


「じゃあ、公園へ行って遊ぶか~」

耕史が提案し、みんなは、それに賛成し公園へ向かった。

佳文は、家に戻り夏休みの宿題に取り掛かった。


午後を過ぎた頃

「ギギギギー!!」と電車の急ブレーキ音が聞こえてきた。

佳文の家から、私鉄の線路までは、直線で250m程で

家の窓から、電車が通るのが見える位置にあった。


「カンカンカンカン…カンカンカンカン…」

と踏切の音が鳴り続けていた。


「どうしたんだろ…」

佳文は、家の窓から外を見た。


「あんなところに、電車が止まってる…なんでだろう」

そう思ったが、小学生の佳文には、いつも止まらない場所に

電車が止まってるだけにしか見えなかった。

窓から離れ、夏休みの宿題の続きに取り掛かった時

遠くから、救急車のサイレンが聞こえ、近くでサイレンの音が止まった。

佳文は、救急車の音には、気にせず夏休みの宿題を続け

鉛筆を置いた時に、長く鳴り続ける踏切の音に違和感を覚えて、

家の窓から、私鉄の線路を見た。


「あれ?あの電車…同じ場所に止まったままだ…」

そう思い、時計を見た。


「2時間?…同じ場所に電車が止まってる…なんでだろう…」

家の窓から、同じ場所に止まった電車を見ていると


「ヨッシー!! すげぇーよ!!」

興奮した。耕史が真っ赤な顔で走ってきた。


「なにかあったの?」

と佳文が聞くと耕史は、


「電車止まってるじゃん!!あれ、人が飛び込んだんだって!!

俺、見て来たんだけどさ、身体がバラバラで運ばれてたんだよ!!」

興奮した耕史は、捲し立てる様な早口で話した。


「俺…今日…気持ちい悪くて寝れないかも…」

そう言いながら耕史は、家に帰って行った。


「電車に…誰かが…飛び込んで死んだのか…」

止まった電車を見ていると、


「ふぁーん」

と電車のホーンが鳴って、止まっていた電車が、ゆっくりと

動き出した。

それを見た、佳文は、玄関に向かいドアを開け外へ出た。

足は、飛び込み事故が、あった場所へ向かっていた。

少し小走りで歩き、すぐに飛び込み事故のあった場所に着いた。

この私鉄の線路は、単線路線で1時間に往復4本の路線で

30分間隔で電車が行き来する


事故現場に着くと、保線作業員が作業を終え、線路を歩き

事故現場近くの駅へ向かって歩いていた。

好奇心に駆られた佳文は、線路へ入っていた。

保線作業員が、佳文に気づき


「ぼく!!あと20分程で電車が走るから、早めに線路から出てね!!」

と大声でさけんだ。


「うん」

と保線作業員には、聞こえない声で佳文は応えた。


線路の枕木には、〇や×に、丸にバツ印が書いてあった。

敷石は所々濡れていたが、血液ではなく、たぶん水で流した跡だった。

佳文は、なぜか丹念に飛び込み事故の場所を見て回っていた。

するとレールと枕木の間に、なにかを見つけた。


「うわっ!! でっかい臭玉」

思わず声が出た。しかし臭玉しては、大き過ぎると気付き

佳文は、

「これって…脳ミソ…」

薄っすらと、血液が付いたそれは、人の脳の破片だった。

急に怖くなった。佳文は、線路から出てあぜ道に立った。

すると「カンカンカン…」

と踏切の音が鳴りだした。


「カタンカタン」

と線路から音がして、電車が通過した。

佳文は、線路横のあぜ道に、「ぼーっ」と立っていた。


ふと線路に目線を向けると、そこに

白いワンピースを着た女の人が線路に座っているのが見えた。


「あっ…」

と声にならない声をあげた佳文は、となりに気配を感じた。


「あら」「君、アレも見えるのね」

声が聞こえた方を見ると、公園で見た女の人が、となりに立っていた。

「楽しみだな、君、見てなさい」

そう言い、女の人は、線路に座る白いワンピースを着た女の人の

となりに座り、自分の髪の毛を抜き、白いワンピースを着た女の人の

髪の毛の中に入れた。

そして、白いワンピースを着た女の人の手を取り空に向けて手を上げた。

白いワンピースを着た女性は「ふわっ」と浮き上がり空中に消えた。


その光景を目の当たりにしても…その女性が何を行ったのか、

小学生の子供には…たぶん大人であっても、理解できないだろう、

公園で見た女性は、歩いて来るでもなく、

そして音も無く、呆然と立つ佳文の、となりに「すぅ~」と立った。

隣に立つ女性と佳文は、目が合った。


「うわっー!!」

急に恐怖心が沸き上がり、佳文は家に急ぎ帰った。

家に帰った佳文は、眠気を覚え自分の部屋の床で転がり眠った。


「佳文~ご飯よ!!」の母の声で眠っていた佳文は起きた。

床から起き上がった佳文は、自分の部屋から、

台所へ歩き、椅子に座った。


「よっちゃん、あそこの踏切で事故があったみたいね」

佳文の母は、作り終えた夕飯のおかずをテーブルに並べながら話した。


「うん、知ってるよ」「踏切の音がず~と聞こえるからさ~僕見に行ったんだ」

佳文の言葉に母は、


「よっちゃん…見に行ったの…まぁ…」

母は、少し顔を曇らせた。



「うん、でもね遠くから見て、直ぐに帰って来たよ」

佳文は、夕ご飯を食べた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る