佳文は、堤防道路に車を止め、エンジンを切り、

車のドアを開け、車を降りてドアを「バン!!」っと

勢いよく、車のドアを閉めた。

後部座席のドアを開け、後部座席に置いた。

デジタル一眼レフカメラを、手に取り後部座席のドアを閉めた。

取り出した一眼レフカメラには、55-250mmのレンズが付けられていた。

以前、買ったレンズがセットで売られてる一眼レフカメラだ。

堤防道路に立ち、橋の方に視線を向けて、


「確か…あの辺りだったよな…」そう呟き

レンズに着いたレンズカバーを外しファインダー接眼部に

片目を近づけ覗きこんだ


「見えないな…」

レンズのズームリングを回し倍率を最大にし、フォーカスリングで焦点を合わせ

調節した。


「う~ん…セット売りカメラのレンズじゃあ…遠すぎか」

佳文が、カメラのファインダー越しに見ているのは、

大河川に架かる、700mを超える長い橋だった。


「堤防を下りて河川敷から見てみるか…」

佳文は、斜めに張られた堤防斜面のコンクリート部分を、恐る恐る降りて行った。


「スパイクソウル靴底のウェーダーや長靴なら、スイスイ降りられるのに、

こちら側にも階段を作って欲しかったな…」

対岸の堤防斜面には、階段が作られていたが、

佳文が降りる堤防斜面側には、階段が作られてなかった。


「俺…不格好な降り方してんな…」

滑って転がらず、なんとか佳文は、河川敷まで降りた。

川の護岸まで歩き河川敷から、橋を見上げ

カメラのファインダーに、片目を近づけ覗いた。

レンズのズームリングを回し最大に、焦点をフォーカスリングで合わせ

対象物があるであろう場所を確認し、何度もカメラのファインダーに、

片目を近づけ覗いた。


「あの辺りなんだけど…見えないな…」

何度も見たが、見つけられなかった。


「もしかして…もう消えたのか?」

カメラのレンズにレンズキャップを付け、河川敷を歩き

コンクリート護岸を歩き堤防道路に戻った。


「うわぁ…こんな登りで…息が切れるって…体力落ちてんな」

佳文は、肩で息をしていた。


「ふぅ」大きく深呼吸をし、呼吸を整え堤防道路を橋へ向かい歩き出した。

この長い橋は、車の交通量は多いものの、橋を歩いて渡る人は、かなり稀だった。

稀な橋を渡る通行者では目立つ、カメラを、ぶら下げた人ならばと佳文は考えた。

それに、右側を歩けば、車を運転する人や同乗者と目が合うのは必至なのだ。

あまり目立ちたくない佳文は、眼下の川を見ながら橋へ歩いた。

たぶん、橋を走る車の中から見る、

首からカメラを提げて歩く、佳文の姿は、風景を撮りに来た。

アマチュアカメラマンの姿だろう。

橋の歩道へ進み、足を止めた。


「こちら側からだと、あの標識の向こうだったな」

確認して歩き出し、数日前の事を思い出した。




数日前、友人と会った後、帰路途中

別の橋を渡り帰ろうとしたが、事故で別の橋は、通行止めになり  

遠回りをして、この橋を車で渡ったのだった。

車の窓から見える、川の風景を楽しみながら、車を走らせていた。

県境を示す標識が先に見え、なんとなく歩道に視線を向けると、


「顔っ!?」


歩道に、顔?だけが出ている、

驚いた佳文は、後続車が無い事を確認し、車を徐行した。

ゆっくりと車を走らせて


「やっぱり…顔か…」


その顔は、20代くらいの男だった。

その男の顔は、橋の歩道部分に、顎から上だけが出ていた。


「あぁ…いつか肩から上が、道路から出ている男を見たけど…」

以前見た事を思い出した。


「ププッ」と後ろから、クラクションが鳴り

ルームミラーを見ると、後続車が迫っていた。

佳文は、ハザードランプを2回点滅してから、車の速度を上げ

その場から離れ帰宅した。


佳文は、家に着き車を止めて、玄関の鍵を開け、髪の毛をドアから剥がし家の中に入った。

玄関のドアの鍵を閉め、自分の髪の毛を1本抜き

内側のドアとドア枠に渡し抜いた髪の毛を貼り付け

玄関を上がり、ソファーに座り考え込んだ。


「この前…は、肩から上の男を見つけて、1ヶ月後、その場所へ行ったら

もう消えてたんだよな…今回は…顎から上の男…か、

もし…導かれるモノが、消えかけのモノだったら…

俺は、どう対処したらいいんだろう…」

佳文は、1ヶ月前の出来事を思い出し悩んでいた。


「導く時…手に触れて…この場合…手は橋の中?下?

いや…橋の中だよな…」

佳文は、導かれるモノの状況から、対処できないと判断したが


「ん~確認…いや…見に行ってみよう」

決めたのだった。



佳文は、橋の歩道を歩き、県境を示す標識の近くまで来た。

標識の先に、歩道から、もう頭部しか出ていない、男の頭を見つけた。


「河川敷から確認したけど…身体から下は、見えてなったよな…

この場合…どうしたらいいんだ?」

佳文は、家で悩み解決できると思ったのだが、

この状況を目の当たりすると、再び悩んだ。


「この状況の対応を、教えてくれよ~」と

呟いたが、あの女性が現れる事はなかった。


「はぁ…どうすんだ…」

橋の上から、眼下の川面を見つめながら悩んだ姿は、

橋を通る車の中から、どう見えたかは想像ができるが、

佳文は、一眼レフカメラを首から提げ、橋の上に立っている

どう見ても、アマチュアカメラマンが川を撮影しに来てる姿だった。


佳文は、「ふぅ」っと溜息を吐いて

橋の欄干に背中を預け、歩道から頭部だけが出ている男を見つめた。

当然、通る車の中から見えるの姿はアマチュアカメラマンが

撮影した画像を確認する素振りでだ。

佳文は、その場に立ち数十分が過ぎた頃、

男の頭部が、歩道のアスファルト部分に吸い込まれる様に消えた。

驚いた佳文は、橋から下を覗き込んだ。


「どこへ消えた?」

橋の上から見える範囲を探して見たが、男の姿も頭部も見つからなかった。


「どう言う事だ…」

理解できない状況に、暫し動けなかった。

佳文は、数分が経ち橋の歩道を歩き駐車してあった車に戻り

車のドアの鍵を開け、後部座座席のドアを開き、

一眼レフカメラを後部座席に置き、後部座席のドアを閉め

運転席のドアを開き、車に乗り込み運転席のドアを閉め

シートベルトを締め、車のエンジンを始動し


「どう言う事だ…」と呟き、サイドブレーキを下げ

ギアをⅮレンジに入れて車を発進させた。


佳文は、家に着き車を止めて、玄関の鍵を開け、髪の毛をドアから剥がし家の中に入った。

玄関のドアの鍵を閉め、自分の髪の毛を1本抜き

内側のドアとドア枠に渡し抜いた髪の毛を貼り付け

玄関を上がり、ソファーに座り考え込んだ。


「消えて無くなった…導かなくても…消えるのか?

そうだよな…戦場跡を車で通った時…武将の姿を見た事ないもんな…

う~ん…今日は、考えるのをヤメよう」

暫くソファで眠ってしまった佳文は、

パソコンを開き、検索をした。


橋の名前と事故・事件・自殺で検索をしたみた。

いくつかのサイトを見つけ調べた。


「2年前…女性が事故で亡くなる…違うな…女性は…見なかったな…」

続けて、同じサイトの記事を、遡った。



「27歳男性・飛び降り自殺…これか?7年前か…他には…女性・10代男性・女性…」

佳文は、サイトで、あの橋の事故・事件・自殺を見た。


「2年前に事故で女性が、亡くなってるけど…病院へ運ばれる途中なのか

以後なのかは、書いてないし見えなかったな…

他は、女性が二人と10代男性か…そうなると…

27歳男性の飛び降り自殺者…7年前か…」


7年前の自殺者の方だと、なんとなく佳文は感じたが

なぜ、消えて無くなったのかは、解らなかった。







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