となりに立つ二人
「うぅぅ…」
夜中の1時頃、佳文は複数の視線を感じ目が覚めた。
「誰か居るのか?」
照明器具の常備灯の光が、薄暗く部屋を照らした。
「気のせいか…」
そう言葉を発せ終わるか終わらない時
ぼんやりと、二人の男女が佳文が寝てるベットの
となりに立っていた。
「うっ…」
うわっ!!っと叫ぼうとしたが、声を押し殺した。
「たぶん…二人の顔は…みてない…よな」
佳文は、自分なりに導かれるモノの顔を見ない様にしている
なぜ見ないかは、自分自身、分かってはいないが
見ちゃあダメな気がしていた。
「なんで…家に入って来てるんだ…そりゃあ…
鍵なんて掛けても入れるんだろうけど…さ」
佳文は、自問自答を繰り返した。
「それより…この二人を、ここで導いていいのか?
シチュエーション的には、俺ん家に導いて下さいと尋ねて来てる感なんだけど
いや…押し入って来たってのが正しいのか?」
そうこう考えていると、尿意を催しベットから起きて
トイレに向かった。
「電気…つけていいよな…」
構わず手元に置いた。部屋の照明器具のスイッチをONにして、
部屋を明るくした。
「消えないんだ…」
ベットのとなりに立つ二人は、部屋が明るくなっても消えなかった。
「カチャッ」と部屋のドアを開けて隣の部屋に入り
隣の部屋のドアを開けて進み、佳文は、トイレのドアの前に立った。
「トイレの中にも…居るって事は…ないよな…」
そう思ったが、尿意には勝てずトイレの照明スイッチを押し
トイレの中が明るくなった。
「いませんように…」
ゆっくりとトイレのドアを開け、少し開いた隙間からトイレの中を覗いた。
「ふぅ…居なかった」
トイレのドアを勢いよく開け、尿意を放出しながら
「いや~トイレに座ってたら…どうしようかと思ったよ
それが…若い女子の…だだったら…」
邪まな事を思い浮かべて、少し気が楽になった。
「あぁ…すっきりした…」
尿意を放出した。佳文は、トイレから出る前の、いつものルーティン
トイレの窓を開けて、窓から外を見る癖を、いつもの様に行った。
「えっ…」
トイレの窓を開けて、外を見た佳文の目に入ったのは、
制服を着た。高校生くらいの女子だった。
「なんで…夜中の1時過ぎに…女子高生が居るんだ?
ってか…家の敷地内に…」
トイレの窓の下に、一人の制服を着た女子高生が、立っていたのだ。
「あぁ…導かれるモノか…」
佳文は、そう思いながら
「トイレの中でも外でも…導かれるモノのでも…女子高生に…聞かれたってのは
なんか…なんかだ…」
羞恥心が揺さぶられた。
「ちょっと…待てよ…家の中に二人…外に一人…それだけか?」
イヤな予感を感じた佳文は、寝室の部屋を除き1階と2階の各部屋を確認した。
「家の中は、あの二人だけか…」
安堵した佳文は、2階の窓から外を覗いた。
「うわっ…玄関前に二人立ってるじゃん!!」
2階の窓から玄関先を見ると、二人の男が立っていた。
「俺ん家…集会場か?」と軽く思ったが
一人二人と増えそうな気がした。
「どうすりゃあ…いいんだよ…来たモノ…全て…導けばいいのか?
ってか…これから毎日、導かれるモノが、訪ねて来て日課にでもなったら
俺…寝られないぞ…」
そのモノが、家の周りに集り、中には家の中まで入って来た事に
恐怖を感じてなかった自分に、少し驚いた。
「教えてなかったか…」
聞き覚えのある、女性の声がした。矢継ぎ早に
「先ずは、外のモノから導くぞ、外へ来い!!」
姿は見えないが、佳文は、外へ呼ばれた。
「外へ来いって…」
そう思ったが佳文は、玄関ドアの鍵を開け、ドアを開けて外へ出た。
「君の髪の毛を1本抜き…ドアとドア枠に髪の毛を…渡し張り付けろ」と
佳文に女性は言った。
「髪の毛を抜いて、ドアとドア枠に髪の毛を渡し張り付けるんだな」
復唱し佳文は、自分の髪の毛を1本抜いて、ドアとドア枠に張り付けた。
「私が…この二人を…導く…から君は…そこの子…を導け」
女性は、玄関に立つ導かれるモノを導くらしい
「えっと…自分の髪の毛を一本抜いて…導かれるモノの髪に付けて…
導かれるモノの手を取り…手を高く上げる…だったな」
そうブツブツと言いながら、女子高生の手を取り手を高く上げた」
すると、女子高生は、「ふわっ」と舞い上がり消えた。
佳文が、振り返ると女性の導きも終わり
導かれるモノが、「ふわっ」と消えようとしていた。
「家を…空ける時は…必ず自分の…髪の毛を…1本抜いてドア…に張り付けろ
ドア…を閉め…同じ事…を家の中から行え…
家の中の…二人は一緒に…君が導くのだぞ…くれぐれも間違える…な
二人は…同時に…だぞ」
そう言い、女性は消えた。
「詳しく…いや…しれっと…二つ説明したな…せめて全て教えてから消えてくれよな…」
佳文は、ドアに張り付けた自分の髪の毛を取り、家の中に入った。
「ん?この髪の毛が結界の役目だったら…髪の毛を貼り付けたら
あの二人は…導けないんじゃあないか?」
なんとなく、そう思い髪の毛を貼り付けなかった。
佳文は、寝室に戻り、そこに居た男女二人の髪に、同時に自分の髪の毛を付けて
同時に、二人の手を取って高く手を上げた。
すると、二人の身体は、「ふわっ」と舞い上がり消えた。
「やっぱり…たぶん…そうだよな…」
そうブツブツ言いながら玄関に戻り、自分の髪の毛を1本、
玄関ドアとドア枠に渡し張った。
佳文は、寝室に戻りベットに横になった。
目を閉じて、寝ようとしたが、
「寝れるわけないよな…」と起きだしキッチンに向かい
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、指先でステイオンタブを引っ掛け空け、
缶ビールを一気に飲み干した。
もう1本缶ビールを冷蔵庫から取り出し、ベットへ持ち込んで
ついさっきの出来事ではなく、昼間の出来事を思い出した。
「そう言えば…昼も…導いたっけ…」
缶ビールのステイオンタブを指先で軽く引き離して
「パキッン!!パキッン!!パキッン!!」と何度も音を立てた。
佳文は、昼にも導かれるモノを導いていた。
「ここって…病院だったよな…」
暇な休日は、ふらっと近所を散歩するのが癖の様になっていた。
毎回同じコースは、通らず気が向いた交差点を曲がって散歩コースにした。
「マンションが建ったのか…十代の頃…一度だけ通院したっけ…
なにで通院したのかも忘れたな…」
全然思い出せなかった。
「あまりいい噂は聞かなかったなぁ~」と呟いて
マンション駐車場の端に視線を向けた。
視線の先に、入院着を着た女性が、うな垂れたいた。
「あぁ…やっぱり病院の跡地だからな…通るんじゃあなかったな…」
そう思ったが、時すでに遅しだった。
「三重海岸以来…か…覚えてるかな…」
そう思い、三重サーフの導きを思い出した。
「どうやったっけ…となりに立ち…自分の髪の毛を1本抜いて…
導かれるモノの髪に…自分の髪の毛を…付けて…
導かれるモノの手を取り…手を高く上げた…な」
一連の動作を思い出したが、マンションの敷地外近くだが
マンションの敷地内には、違いはない、
なんとなく不自然にならないように、周りを確認してから、
自分の髪の毛を1本抜いて、導かれるモノのとなりに立った。
そして、導かれるモノの髪に、自分の髪の毛を付けて
導かれるモノの手を取り、手を上げた。
「ふわっ」っと舞い上がり導かれるモノは消えた。
「誰も見てなかったよな…」
マンションの窓に道路、辺りに視線を配り確認した。
周りには、誰も居なかったが、幾つかの視線を感じた。
しかし、視線を感じた先を確認しても誰も居なかった。
「気のせいか…まぁ…見られっちゃダメだって思ってるからかな…
と言うか…通報案件だもんな…通報されたら…どう言い訳するればいいんだよ」
もしもの時の言い訳を考えながら散歩を終えて帰宅した。
「あぁ…思えば…誰かが後を付けてる気がしたっけ…
それが…これか…」
そう思い出した時、佳文は、深い眠りについた。
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