第21話『真実』
魔術学院を出たメリルは、学院側の尾行を撒いて首都ワイバニアの南西にある廃屋を訪れた。ここは近く取り壊しが決まった二階建ての煉瓦造の屋敷で、天井や壁に所々穴が空き、黄昏時の光が差し込んでいた。
メリルがいるのは、廃屋一階にある部屋だ。かつて応接間だったようで、ボロボロになった革張りのソファーとシロアリに食われて穴だらけになったテーブルが置かれている。
「メリル」
声がすると同時に、メリルの目の前の空間がぐにゃりと歪む。歪みに黒い大きな穴が穿たれて、そこからシャーロットが姿を現した。上下白のジャケットとズボン、黒いシャツと赤いネクタイという出で立ちだ。これはワイズ帝国軍の軍服である。
「どうしたの?」
シャーロットの声音に、いつもの陽気さはない。ここは非常事態があった時にシャーロットと落ち合うための場所。メリルがここに来たと言うことは非常事態の知らせだ。
服装が変装ではなく、軍服なのも戦闘に備えるためであろう。
メリルは、教員寮から持ってきた紙袋をシャーロットに差し出した。
「これ返すわ」
シャーロットは紙袋を受け取り、袋を開けて中を覗き込んだ。
「……失敗したってわけじゃなさそうだね」
挑発的な笑みを浮かべてシャーロットは、紙袋を握り潰した。
「食べさせなかった? ううん。一枚減ってるから食べようとしたけど食べないようにした、が正解?」
ひょうきんな態度が常のシャーロットだが、彼女は優秀な軍人であり魔術師だ。
空間魔術の技量と潜入工作のスキルに加えて、相手の感情を読むことにも長けている。
シャーロットはとっく気づいているのだ。メリルがニーナを殺せないことを。
ニーナと過ごす日々で思い知らされた。たしかに強大な力を秘めており、いずれ世界を滅ぼすかもしれない。だが、心根の優しい子だ。ひねくれてはいるが思いやりの心はちゃんと持っている。正しい力の使い方を身に着けさせれば世界を滅ぼさないかもしれない。
リョウが主張していた可能性にメリルも賭けたいと思っていた。
「あたしには……あの子を殺せない。悔しいけどリョウの言うことが正しいわ。あの子は世界を滅ぼさない優しい子になると思うわ」
「だから殺さないって?」
せせら笑うようにシャーロットは言った。
「ねぇメリル。あんた自分が何言ってるか分かってる? 皇帝陛下への裏切りだよ」
「分かってるわ。それでもあたしは、あの子を殺せない」
「帝国が裏切り者を許すと思う?」
「許さないでしょうね」
許すはずがない。あらゆる手段でメリルを殺そうとするはずだ。だとしてもニーナを手に掛けるより、自分の命を賭けるほうがずっといい。
皇帝や帝国を裏切ることより、ニーナを裏切ることのほうが今のメリルには罪だった。
「あんたは紅だよ。ルギタニア人を数え切れないぐらい殺した。亡命出来ると思う?」
「無理でしょうね」
亡命出来るわけがない。身分を明かせば拷問を受けて殺される道しかないだろう。それでもニーナの人生を終わらせてしまうよりもずっといい道だと、メリルは思った。
「それでもニーナのために生きるってわけ? 仲間を見捨てて?」
「……そうよ」
そう決めたからこそ、メリルは今ここにいる。
どれだけの時間をニーナと過ごせるかも、どれほどのものを与えられるかも分からない。
だけど許される限りは、ニーナの隣にいたい。与えられるだけのものを与えたい。
メリルは、心から止めどなく溢れる想いを瞳に込めてシャーロットを見据えた。
「あの子を……愛してしまったから」
メリルの告白に、シャーロットは後頭部をかきながら微笑んだ。
「あの紅が暗殺対象の子供を愛したね……皇帝や貴族連中は驚くだろうねぇ。ま、あんたの仲間なら誰も驚かないだろうけどさ。メリルは、この任務に向かないと思ってた。情が深すぎるんだよね。あの子をキャシー・ランドーからかばったのも予想通りだったよ」
シャーロットの言葉に、メリルはそこはかとない違和感を覚えた。
ここでキャシー・ランドーの名前が何故出てきたのか。
そしてキャシーの名前を聞いて思い出したのは、彼女の最後の言葉だ。
「妙なことを彼女は言い残したわ。あいつの言う通りだって。家族を持って幸せをあたしが感じてるとか、しかもあたしの正体をキャシーは知ってた。誰が話したのかしら?」
メリルはシャーロットの顔を凝視した。表情筋の一切の動きを見逃さないように。
シャーロットは、笑みを浮かべる。どことなく冷たさを感じさせる、そんな笑みだ。
「私が漏らしたって? 根拠は?」
「スーパーで思念通話した時、連蔵殺人の犯人の目星はつけてたって言ったでしょ? あなたは彼女を知っていた。それに彼女を殺した空間魔術。いくらあなたでも事前に相手に触れて仕込みをする必要があるはずよ。つまり彼女に触れられる距離にいた証拠よ」
メリルが推理を披露すると、シャーロットは腹を抱えて噴き出した。
「ぶふっ! あははは! さすがだねメリル。そうだよ。彼女とは取引したの。あんたへの復讐の機会を提供してあんたを試した。どこまでニーナちゃんへの情に目覚めているか」
「そのためにキャシー・ランドーを利用したの? あなたらしくないやり口ね」
「メリル。あんたが私の何を知ってるの?」
普段の陽気さを微塵も感じさせない鋭い眼差しがメリルを突き刺した。
裏切り者は黙っていろ、ということだろうか。
たしかにメリルは任務を放棄する決断をした。シャートットからすればいい迷惑だ。
下手をすれば連帯責任でシャーロットも厳罰に処される可能性もある。
これ以上、言葉を交わしても平行線になるだけだ。メリルはシャーロットに背を向けた。
「……あなたはあたしが裏切ったって報告を」
シャーロットをわがままに巻き込むわけにはいかない。メリルに責任を擦り付ければシャーロットの身の安全は確保出来るはずだ。この提案に、シャーロットは肩をすくめた。
「私は皇帝の味方なんだよね」
陽気さを保っている声の裏に、殺気を忍ばせているのをメリルは察知した。
「……あたしを消すつもり?」
振り返りつつ右手に召喚魔術の構築をすると、シャーロットは両手を振って微笑んだ。
「まさか。無理だよ。空間魔術の中なら
謙遜のように聞こえて、実際は自分にはメリルを殺せる実力があるとの示唆だ。
事実、空間魔術の土俵に持ち込まれたらメリルが不利である。
すぐさま右手に直剣を召喚し、切っ先をシャーロットの喉元に突き付けた。
「シャーロット。あなたとは戦いたくない。だからこのまま帝国に帰って」
シャーロットは、芝居がかった動作でやれやれと首を横に振った。
「あんたは、あの子の真実を知らないからそういうこと言えるわけ。メリル。あの子はなんだと思う?」
「アポカリプス・ドーターでしょ」
「あの子はアポカリプス・ドーターじゃない」
「えっ?」
強大な魔力と髪や瞳の色素の薄さ。アポカリプス・ドーターの条件はそろっている。もしもニーナがそうでないのなら、一体彼女はなんなのか。メリルには見当もつかない。
「じ、じゃあッ! あの子はなんなの!?」
「五型特生兵器」
シャーロットは、喉元に突き付けられた剣を右手の人差し指で逸らした。
「それがあの子の正式名称。ワイズ帝国が作り上げた対ルギタニア殲滅兵器だよ」
「……帝国が作った……どういうこと!?」
兵器。想像していなかった単語の登場で思考が凍り付いた。戸惑うメリルに対して、シャーロットが一歩踏み込んできた。思わずメリルは一歩下がってしまう。
「ワイズ帝国とルギタニアの戦争の理由、知ってるでしょ?」
「ええ……旧神の王の骨をめぐっておきたことよ」
また一歩シャーロットが踏み込んできた。一定の距離を取ろうとメリルは一歩下がる。
「講和条約の内容は、旧神の王の骨の所有権はルギタニアが持つこと。ただしルギタニアは旧神の王の骨に封印処置を施し、一切の研究を停止すること。知ってるよね?」
「え、ええ」
さらにシャーロットが踏み込んでくる。またメリルは一歩下がった。
「だけどワイズ帝国は、旧神の王の骨の一部を奪取している」
「あれは、終戦と同時にルギタニアに返却されたはずよ。まさかッ!?」
ずいっとシャーロットが近づいてくる。間合いを保とうと後退するメリルだが、壁が背中に当たった。
シャーロットの顔が迫り、艶やかな唇がメリルの左耳に触れそうな距離まで近づいた。
「ただの旧神の骨ならワイズ帝国にもあったわけ。文字通り腐るほどね」
吐息と一緒にシャーロットの囁き声が鼓膜に流し込まれる。
「普通の旧神の骨を加工して王の骨の贋作を作り、ルギタニアに返却したってわけさ」
「王の骨も旧神の骨であることに変わらない。だから形状さえ盗んだものと同じにすれば、ルギタニアにも気づかれない……でもそこまでして王の骨の一部を手に入れる意味は?」
メリルが問うと、シャーロットはゆっくりと離れていった。
「今旧神の王の骨の一部はどこにあると思う? 拳大の大きさの骨だけどさ」
シャーロットは、握り拳を作って自分の左胸にとんとんと当てた。
「心当たりはない? あの子に心臓がない心当たり」
「っ!?」
今日、授業中の事故がきっかけでニーナの心臓が動いていないことを知った。心臓の代わりに旧神の王の骨が使われているなら納得だ。心臓の鼓動があるはずがない。
幼い子供を人体改造して兵器にする。悪辣非道な帝国への怒りがメリルの心を焦がした。
「帝国は……なんてことをっ!!」
「あの子は生まれてすぐに旧神の王の骨を埋め込まれて兵器にされた。そのコンセプトは戦災孤児偽装型自爆兵器。メリルも知っているように、ルギタニアには戦災孤児が多くいた。戦時のゴタゴタの中で一人紛れこませるぐらい訳はなかったみたいだよ。しかも旧神の骨を埋め込んだ副作用で髪と目の色が帝国人とは異なったのも追い風だったみたいね」
「そんな理由で子供を……ニーナを兵器にしたの?」
帝国の行いへの怒りを抱きながらもメリルの思考は、ある種冷静に稼働してもいた。ある疑問が生じたのだ。何故シャーロットがニーナの真実に詳しいのかである。
「シャーロット……なんであんたはそこまで知ってるの?」
シャーロットはひび割れた窓に近づき、黄昏時の空を眺めて目を細めた。
「あの子を作ったのは、私の父さんなの」
「あなたの父親……ジェイル博士が!?」
ジェイル博士は、ワイズ帝国でも指折りの魔術学の権威だった。ルギタニア人の女性と結婚してシャーロットを授かったことで純血主義の帝国では冷遇されていた人物である。
「父さんは、皇帝から指示されて開発を始めた。旧神の王の骨の移植に耐えられる適合者を探して見つけたんだよ。自分の……末娘が適合してるってね」
シャーロットの言葉に、メリルは思わず息を呑んだ。ジェイル博士の末娘が旧神の王の骨の適合者でそれがニーナであったのなら、シャーロットとの関係性は――。
「末娘って……じゃあまさか。あなたがニーナの……お姉さん……本当の家族!!」
思いもよらぬ真実の暴露に、金槌で頭を殴られたような衝撃がメリルを襲った。
「父さんはね、ルギタニア人の血が混じった私たち家族を守るために五型特生兵器を作った……一人を犠牲にして他の家族を守ったんだ」
ルギタニア人の血を引くシャーロットたちは、帝国で蔑視の対象であった。ジェイル博士は、自分の家族の救うため一人を犠牲にした。娘を一人生贄にする非人道的な兵器製造に手を染めたのだ。そうしなければならない状況に皇帝と帝国が追い詰めたのである。
皇帝と帝国の非道な行いへの憤怒が、メリルの中で溶岩のように滾っていた。
「皇帝は……帝国はっ! なんて残酷なことをッ!!」
「だけど悪いことは出来ないもんでさ。ニーナは、兵器として失敗作だった」
ニーナを失敗作扱いされるのは腹立たしいが、彼女が生きている事実が自爆兵器としての完成度の低さの表れでもある。
シャーロットは、左手の人差し指で自分の左胸を突きながら苦笑した。
「旧神の王の骨を埋め込んで自爆兵器にしたけど、あの子は開発コンセプトを越えて膨大な魔力を我が物にした。実験の失敗がばれて父さんは帝国での立場を失った」
「それでジェイル博士は無理心中を……」
「私だけは生き残ったんだ。父さんにニーナのことを託されたの。あの子との行く末を見守るためにってね。自爆しなかったニーナは、戦中戦後のごたごたで孤児院をたらいまわしにされた」
「そして帝国の諜報員がニーナの足取りをようやく掴んだのが今というわけね」
「そういうこと。で、あの子に関して一番やばいのは、開発コンセプトだ」
ニーナは、ワイズ帝国の罪の象徴。旧神の脅威から世界を守ることを国是としてきた帝国が旧神の王の骨を兵器利用した。ワイズ帝国が国際的な信用を失うのは確実である。
「ニーナが脅威なのは、その力だけじゃないんだ。彼女という兵器の存在そのものが再び戦争の火種となる。もう一度戦争が起きたら今度こそ世界は……」
ワイズ帝国とルギタニアの大国同士の戦争で大陸の地形は変わり、その影響で気候変動が起こっている。もう一度同じ規模の戦争が起これば人類の文明は終焉を迎えるだろう。
「だからニーナを殺す? 二度と戦争を起こさないように?」
「皇帝はそう思ってるだろうね」
「ふざけないでッ!!」
メリルは、湧き上がる感情を乗せて声を荒げた。帝国の身勝手な理屈を納得出来るわけがない。帝国が犯した罪のために子供の命を犠牲にする。そんなことは許されない。
右手に持つ剣の柄を強く握り、身を焼き溶かすほどの憤怒を編み込んだ言葉を紡ぐ。
「皇帝が暗殺を命じた理由は、世界を憂いてのことじゃない! 自分の過ちのしりぬぐいってわけッ!? あたしとシャーロットはそのために命懸けで!?」
「放置するよりいいでしょ。ニーナの存在は、仮初の平和をまた戦火に引き戻すんだよ。今度は何万……いや何億人死ぬかな?」
血と臓物で飾られた廃墟が視界を埋め尽くし、死臭が鼻腔を痛めつける。戦場の光景を思い出したメリルは、言葉に詰まった。その切れ間にシャーロットが畳みかけてくる。
「状況的に詰んでるの。ニーナの力は大して問題じゃないのよ。あの子の存在そのものが世界を滅ぼすの。それを止めることが私と父さんの意志なんだ。私は託されたんだっ!」
シャーロットの言う通り、ニーナの真実が明るみに出れば、絶対にルギタニアは黙っていない。大量破壊兵器による攻撃を受けたと主張して帝国へ攻撃を仕掛けるだろう。
あるいはニーナを実験動物扱いして研究するか。民主主義国家と言っても国益のためなら政治家や官僚はどこまでも残酷になれる。ニーナの人権なんて簡単に剥奪するだろう。
メリルが真実をルギタニアに暴露したところでどうにもならないし、リョウに話したとしても仕方がない。メリルの話をどこまで信じてくれるか。信じたにしても二人でどうこう出来る問題でもない。まさに八方塞がりの状態だ。
戦争の危機を回避する唯一にして最善の手段は、ニーナを殺すこと。昔のメリルなら迷わなかった。子供一人を犠牲にして世界を守れるならそうしたはずだ。自分が心を痛めるだけで世界を救えるなら迷わない。だけど今のメリルは違う。
「あたしは……ニーナを殺すなんて……あなたの妹を……」
娘のように愛している子供を殺す。戦友の妹を殺す。絶対に出来ない。
そんなメリルとは対照的に、シャーロットの薄緑の瞳には確固たる意志が宿って見えた。
「あんたが手を下す必要はない。私がやるから」
「何言ってるの!? あなたの妹なのよ!?」
「家族だからこそ家族の手であの子を終わらせたいの。父さんに託されたの。あの子のことを頼むって。あの子には悪いけど、世界のためなら……」
微笑むシャーロットが、剣を持つメリルの右手を両手で包み込んだ。
「空間魔術を完成させて。ライトスタンドに触れるだけでいい。そうすれば私の構築した処刑場にニーナを呼び込むことが出来る。メリルは、それだけしてくれればいい」
シャーロットにニーナを殺させたくない。家族を殺す苦痛を味わってほしくない。
他の手段がないか模索するも、答えが全く浮かばなかった。伝説の魔術師だの世界を救った英雄だのと言われても愛する子供も大切な戦友を守ることすら出来ない。
「あたしは……あなたに……妹を、家族を殺させるなんて」
無力感に苛まれて涙が溢れそうになると、シャーロットの手がメリルの両頬を撫でた。
「メリル。二年前を覚えてる? 戦場で死にかけた私をあんたが助けてくれた。その時あんたが何をしてくれたか覚えてる?」
戦場でシャーロットは二人のルギタニア兵に追いつめられていた。名前はジーンとエリーゼ。メリルは、二人を殺してシャーロットの命を救った。
「この前さ、二人の子供のナターシャに会って、あんた傷ついてたよね?」
ニーナの契約魔術を掛けられた翌日、スーパーへ行った際、メリルはナターシャという少女と出会った。彼女は、メリルが殺したジーンとエリーゼの娘だった。
年頃の女の子なのに、おしゃれとは無縁のくたびれた服を着て、弟の面倒を一生懸命に見ている。メリルが両親を奪った結果、ナターシャと彼女の弟を不幸にしてしまった。
右手に握る剣で二人の幸福を断ち切った。黒く輝く刃を見つめ、メリルは自嘲する。
「傷つくなんておこがましいわよ。あたしにそんな資格はないわ……」
「メリル、あんたは優しい。私はあの時の恩返しがしたいし、あんたにこれ以上傷ついてほしくない。あんたは一人で何でも背負いすぎる。私にもさ、少しは辛さを分けて」
「シャーロット……あたしはそんな卑怯なことしたくない……」
家族を殺すなんて悍ましい行為を戦友にはさせらない。
何よりも自分以外の誰かにニーナの命を奪わせたくはない。
どうしても殺さなくてはいけないのなら――メリルは、剣の柄を握り締めた。
「あの子をどうしても殺さないといけないなら、あたしがこの手でやる。あなたの手を家族の血で汚させないわ」
メリルの決意表明に、シャーロットはゆっくりと頷いた。
「……分かった。とにかくあの子の暗殺には処刑場が必要だよ。魔術師工場や他の連中に邪魔されたくない。処刑場の仕上げお願いね」
「……ええ」
メリルが頷くと、シャーロットはメリルの両頬から手を放した。
シャーロットが指を鳴らす。すると彼女の背後で空間がゆがみ、黒い穴が生じた。
「メリル。あんたを信じてるからね」
シャーロットはそう言い残して、彼女が構築した空間に消えていった。
残されたメリルは、剣を持つ右手と何も持たない左手を一層強く握りしめる。
両手の皮が破けて紅の鮮血が床に滴り落ちた。
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