第2話『出会い』
六年前、ルギタニア共和国と東に位置する隣国、ワイズ帝国との間で戦争が起きた。
リズアリア大陸で一、二を争う大国同士の戦争は五年続き、ルギタニア側で二百二十万人。ワイズ帝国側で八十万人。合計三百万人の尊い命が戦火によって焼き尽くされた。
当初魔術師の数が少ないルギタニア共和国は、敗色が濃厚であった。
圧倒的不利の戦局。これを覆したのが他ならぬリョウだ。
リョウが開発、普及させたルギタニア式魔術によってワイズ帝国との戦力差を逆転。最終的には講和条約まで締結出来た。故にルギタニアで、リョウは英雄と呼ばれている。
そんな救国の英雄は、夜の繁華街で酒瓶を持って二人の女性と向き合っていた。
『この浮気者!』
女性二人の罵声が響き、リョウの顔面に二つの鉄拳が突き刺さった。殴られた勢いで、煉瓦で舗装された道路にしりもちをつく。
淡褐色の瞳で二人の女性を見上げた。二人とも、憤怒の情を露わにしている。
「リョウ!! あんた最ッ低よ! その男前に見事に騙されたわ!」
「世界を救った英雄が聞いて呆れますっ!! 顔以外最低ですっ!」
二人の女性は、侮蔑の眼差しでリョウを睨み、その場を後にした。女性の姿が見えなくなると周囲の人々は、憐れみと嘲りの混じった声を次々に上げる。
「またあいつか。世界を救った英雄が女と酒に溺れてら」
「帝国との戦争を終わらせた英雄が見る影もねぇ」
「あの人が本当にこの国に魔術をもたらした人なの? ただの飲んだくれじゃん」
リョウは、ボサボサの黒髪をがしがしかきながら立ち上がった。
酒瓶に口をつけて一気にあおる。麦酒が喉を焼いて胃を熱くした。
「俺は……英雄じゃねぇ。英雄は、あの子たちだ……勘違いすんじゃねぇよ……」
そう呟いてリョウは歩き出した。浴びるように酒を飲んでいるのに足取りはしっかりしている。酒に強い体質がほとほと嫌になりながら、夜の街を彷徨った。
どこか良い店はないか。捜し歩くが、どの店からもやんわりと入店を拒否された。
終戦から数ヶ月の間は、どこも快く迎え入れてくれた。しかし一年も経つと、敬遠されるようになった。けれど、別に酔って暴れるわけではない。
きっとリョウの姿を見ていると、戦争が思い出されるのが嫌なのだろう。
今日も酒瓶を片手にあてどなく夜の繁華街を行く。人々の活気は一年前の戦争を忘れているかのように見えた。あるいは忘れるために楽しさを装っているのかもしれない。
多くの人々が家族や友を亡くした。何かで紛らわせないと生きていけない。
リョウも同じだ。世間の言うような英雄ではない。愚かな罪人だ。己の罪から逃れてはいけない。分かっていても罪悪感に耐えかねた。
だから酒を飲み、女を抱いて紛らわせる。だが今日はどちらにも恵まれていない。
何処の店にも入れず、酒瓶の中身も底を尽きかけた頃、廃墟に辿り着いた。
煉瓦や木材の残骸が一帯を支配している。戦争の爪痕は、一年足らずでは消えない。こんな廃墟がルギタニアのそこかしこにある。
廃墟だけではない。ルギタニアとワイズ帝国の戦争は大陸の地形を変え、世界中の気候をも変化させた。あと半年戦争が続いていたら世界は滅んでいたとまで言われている。
廃墟を進むリョウの鼻をすえた臭いが刺した。視線を右に振ると、残骸に夥しい血痕が染みついている。これは昨日起きた魔獣襲撃事件で生じたものだ。
廃墟に現れた魔獣が復興作業に従事している作業員を襲った。幸い死者は出なかったが怪我人の数は三百人に及んでいる。
魔獣の正体は、温厚な性格の魔獣バルデアオックスだ。成体でも普段は子犬ほどの大きさだが、自分の身に危険が迫ると四十メートルを超える巨体に変化する。
これまでバルデアオックスが人間に危害を加えたという事例は報告されていない。
多くの魔獣は、ルギタニア北東にあるアガイスの森に隔離されている。
アガイスの森は広大な森で、五十年前、ルギタニア中に生息していた魔獣を集め、周囲には結界が張り巡らされていた。
人間の生活の役に立つ一部の魔獣のみ、契約魔術によって使役され、街中でも見ることが出来る。だが、バルデアオックスはそうした類の魔獣でもない。
どうしてバルデアオックスがアガイスの森を抜け出したのか。何故温厚な魔獣が人を傷つけたのか。原因究明のために、軍と警察は共同で捜査を続けている。
「よっぽど暴れたい事情があったのかねぇ」
瓶底に残った最後の一滴を飲み干して、空き瓶を投げ捨てる。
その瞬間、頬を鋭い気配が突き刺した。間違いなく殺気だ。
リョウは、右手に魔力を込めて魔術を構築する。作り上げたのは召喚魔術だ。
魔術を起動すると、リョウの手中に銃剣付きの小銃が召喚された。
月明りのか細い光に対応するべく双眸に魔力を流して視力を強化し、小銃を構える。
照準の先にいるのは二人。
一人は少女だ。背丈からしても恐らく十歳にも満たない。人形のような愛くるしい面立ちだ。背中まで伸びた白い髪と赤い瞳がその美しさを一層彩っている。
服装は白いジャケット・黒いシャツ・赤いネクタイ・灰色のプリーツスカート。ルギタニア魔術学院の制服だ。小さな手に野花で作った花を握りしめていた。
もう一人は黒づくめの装束に身を包んでいた。背丈はリョウより小柄だが、男か女かはっきりしない。右手には黒い刃の直剣を握っていた。
黒づくめの人物が逃げる少女の背後へと追いすがり、剣を振り上げている。その光景は、リョウにとってもっとも忌むべき記憶を――マリーの死の瞬間を鮮明に蘇らせた。
「やめろッ!!」
リョウは黒づくめを狙い、トリガーに右手の人差し指をかける。指先に魔術を構築し、トリガーを絞ると同時に、魔術構築を指先からトリガーを通して弾丸に伝える。
弾丸に封入された魔力が構築を読み取り、魔術へと形を変えて銃口から放たれた。青い閃光が闇夜を切り裂き、飛翔する。しかし魔弾の射線上に既に黒づくめの姿はなかった。
突然背後から害意を感じてリョウは振り返る。黒づくめが両手で握った剣を振り上げていた。恐るべき俊足は尋常の領域ではない。紛うことなき達人だ。
振り下ろされた剣閃は、落雷と見紛う速度でリョウの首筋に迫る。すさかず銃剣で刃を受け止め、火花が散った。
黒づくめは後退することなく、力押ししてくる。
驚異的な馬力は、身体強化魔術の練度の表れだ。
天賦の才と己を徹底的に苛め抜く鍛錬。その両方が揃って始めて到達出来る領域だ。
「ぐっ!」
相手の膂力に、リョウはたまらず苦悶の声を漏らした。否応なく理解させられる。黒づくめはリョウより格上だ。酔いの有無は関係ない。万全の状態であっても勝率は一割あるかないかだろう。特に接近戦では勝負にならない。
リョウは、人差し指に魔術を構築してトリガーを引いた。銃口から眩い光が溢れ出し、一帯が昼間のように照らされる。
黒づくめが一瞬顔を背けた。リョウは、すかさず地面を蹴って後方へ逃れ、二度トリガーを引いた。青い魔弾が二発、黒づくめの額と左胸に突き進む。
命中を確信すると同時に、黒づくめから紅の光が放たれた。鮮烈な光が暴風のように吹き荒び、二発の魔弾をかき消してしまう。
リョウの使用した〝
だがリョウにとって重要なのは、そこではなかった。
「なッ!? この紅の魔術は!!」
今でも目に焼き付いている。戦場で見たあの紅の色そのままだ。
この紅色の魔術を使えるのは、世界で恐らく一人きりである。
ワイズ帝国で最強と称される伝説の英雄、紅だ。相対したルギタニア兵はリョウを覗いて一人として生還しておらず、顔はおろか性別でさえ明らかになっていない。
リョウ自身が出会った時も眼が眩んで、その姿をはっきり見ることは叶わなかった。
だがワイズ帝国の切り札とも呼べる魔術師が何故ルギタニアにいるのか。
そんな魔術師に狙われている少女も、相当特別な存在であるのは間違いない。
けれど帝国の英雄がここにいる理由も、少女が狙われる理由もどうでもよかった。
重要なのは探し求めた敵が目の前にいるという事実だ。
腹の底から溶岩のように滾る憎悪が生じた。それは血流に乗って身体を巡り、体温を上昇させる。ようやく見つけた怨敵を前に、リョウは破顔していた。
「この時をッ! 三年待ったぞ!
紅に対する渾身の殺意を込めた指をトリガーにかけた瞬間、リョウの背後で爆発的な魔力の気配が迸った。リョウの百倍や二百倍ではすまない。もっと桁違いな魔力の発露だ。
鳥肌が立ち、毛穴という毛穴から汗が噴き出す。眼前に敵がいることも忘れて、リョウは振り返った。
人知を超越した魔力の主、それはあの少女だった。
「……いたいけな子供が大人に命を狙われる」
冷たい顔をした少女が足元に花束を置き、両手を掲げた。少女の頭上に黒い魔力の塊が生じる。塊はどんどん膨らんだ。まるで日食が地上に落ちてきたかのような光景である。
込められた魔力の量は途方もない。並みの魔術師、数百人あるいは数千人分の魔力だ。
「こんな世界滅べばいいのに――」
少女の鋭い視線が紅を射抜いた。小さな両手を振り下ろすと、黒い魔力塊が弾けて無数の黒い魔力弾となり、空間を埋め尽くした。
巻き込まれてはかなわないと、リョウはバックステップする。
紅もリョウと同時に後方へ逃れた。すると黒い魔弾の軍勢が軌道を変える。弾頭が狙うのは紅だ。黒い魔弾が毒蛇のようにうねりながら紅へと迫る。弾速はそこまでではないが驚異的な数と強い誘導性に、紅は視線を奪われているようだった。
この機を逃す手はない。リョウは、小銃のトリガーを引いた。
放たれた貫通弾が黒い魔弾の群れの隙間を縫ってまっすぐ飛ぶ。虚を突かれた紅は反射的に上体をよじるが、左肩を青い魔弾が掠めた。
「っ!?」
紅の動きがわずかに硬直し、そこを狙い撃つかのように黒い魔弾の雨が降り注いだ。黒い魔力が着弾と同時に炸裂、地面をえぐりながら土埃を巻き上げる。並みの魔術師なら肉片一つ残らない壮絶な集中砲火だ。
次第に土煙が晴れて、着弾点の様子が露わになる。地面には巨大な穴が穿たれていた。
リョウは、小銃を構えながら穴に近づいて中を確かめる。月明りでは底が見えない。
足元に転がっている小石を靴で蹴り、穴の中に落とした。小石が穴の底にぶつかる音がいくら待っても聞こえなかった。
「……なんて野郎だ。おいちびっ子、大丈夫か?」
少女のほうを見ると、彼女は地面にへたり込んでいた。あれだけの魔力を行使したのだから身体に負担がかかって当然だ。下手をすれば命にもかかわる。
「おいっ! 大丈夫か!?」
リョウが少女に駆け寄った。すると少女は、何食わぬ顔で足元の花束を拾い上げた。
「もっと早く助けて。大人として情けなくない?」
赤い瞳なのに、氷のように冷たい視線をぶつけてくる。
まずお礼ぐらい言ったらどうだ。と言いたいのを堪えたリョウは、しゃがんで少女と視線を合わせた。
「悪かったな。怪我はないか?」
「ないわ。見て分からない?」
「……名前は?」
「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るのが常識」
やたらと突っかかってくる性格だ。相手が大人だったらとっくに殴っているが相手は子供である。はらわたが煮えくり返る自分に言い聞かせながら、リョウは笑顔を作った。
「俺の名前はリョウだ。お前の名前は?」
「知らない人に名乗らないのは防犯の常識。そんなことも知らないの?」
とことこん神経を逆なでしてくる性格をしている。相手が大人だったらとっくに頭を撃ち抜いているが相手は子供だ。再度自分に言い聞かせて、リョウは笑顔を維持する。
「ここを離れるぞ。またさっきのやつが襲ってくるかもしれねぇしな」
「……死んでないと思うの?」
少女の魔術は、人知を超越していた。並の魔術師ならまず助からないだろう。
だがリョウにはある直感があった。紅は、簡単に殺せる相手じゃない。
それにこの少女も只者ではないだろう。彼女を狙っているのが、紅一人だけという可能性は低い。次の襲撃者の可能性が僅かでもある以上、一人にするのは得策じゃない。
「分からん。でも念には念を入れたほうがいいだろ」
「そう……仕留めそこねるなんて最近の大人は情けないわ。子供への愛情が足りないのかしら」
少女は呆れ顔で嘆息を漏らした。命を救われたことへの感謝は微塵もない。ここまで来ると、さすがのリョウも苛立ちを抑えられなかった。
「お前があほみたいな連射したせいだろうが……」
あの弾幕があったから紅に一撃入れられたのはたしかだ。
しかし、あの過剰な弾幕のせいで紅の安否確認が難しくなったのも事実である。
「あれさえなけりゃ確実に仕留められたんだ」
「それがなかったら殺されていたのは誰?」
痛いところを的確に突いてくる。歳の頃は十歳にも満たないはずなのに、ある種の老獪さすら感じさせる話術だ。口喧嘩では分が悪そうだが、リョウもここで引くつもりはない。
「お前だって俺に助けてもらわなきゃ死んでただろうが」
「お前って言わないで。わたしには名前がある」
「だからっ、それをっ、教えろって言ってんだろうがっ」
「短気な大人ばかりね。こんな世界滅べばいいのに」
少女の赤い瞳に憎悪の念が渦巻いている。本気で世界が滅べと思っているようだ。荒んだ家庭で育ったのが容易に想像出来る。
リョウの中で苛立ちはしぼみ、代わりに生意気な少女への同情心が膨らんだ。
「俺もお前なんて呼びたくねぇんだ。頼むから名前を教えてくれ」
「……ニーナよ」
「よろしくニーナ。じゃあ魔術学院の寮に帰るぞ」
「どうして分かるの?」
「その制服見りゃ分かる」
ニーナが口を開きかけた。何を言われるかも想像がつく。
先手を打ってリョウは、ビシッとニーナを指差した。
「言っておくが制服マニアではねぇぞ!」
「じゃあなんで?」
ニーナは訝しげだ。たしかに初対面の大人を信じろというほうが難しい。
出来れば昔の仕事について話したくなかった。
リョウにとっては忘れてはならない。けれど語りたくはない恥ずべき過去だ。
しかし本当のことを話して信頼を得るしかないだろうと意を決した。
「……昔の職場なんだよ。ほら行くぞ」
「待って」
ニーナは、バルデアオックスの血痕の傍に近づくと手に持っていた花束を置いた。
「その花は?」
「ともだちが死んだの」
「それでこんな時間に一人で?」
「別のともだちと来るはずだった。待ち合わせてしていたけど……来なかったわ」
魔獣襲撃事件で死者は出ていない。となれば戦争中にここで死んだ者へ手向けた花だろう。花束を置いたニーナは踵を返し、てくてくと歩き出した。
「送ってくれるなら早くして。夜が明ける」
嘆息をついたリョウは、ニーナの歩調に合わせて隣を歩いた。
襲撃の可能性を考慮して小銃は構え、周辺への警戒は怠らない。
「ニーナ。お前、生意気だって言われないか?」
「言われないわ。言ったやつは全員制裁したもの」
「ああ、お前そういうことやりそうだなぁ」
出会って十分も経ってないが、同級生を制裁するニーナの姿が容易に想像出来た。
あの凄まじい魔力をもってすれば大抵の魔術師は黙らせられるだろう。ましてやニーナの同級生となれば幼い子供だ。束になっても太刀打ち出来ないだろう。
そしてこの魔力が紅に狙われた理由であるはずだ。
リョウは、あえて人気のない路地裏を歩いてルギタニア魔術学院の学生寮を目指した。
小銃を持ったまま繁華街を歩くのは目立つし、人気の多い場所では襲撃者の気配を気取りにくい。感覚を研ぎ澄ませるも近くに敵の気配はなかった。
路地裏から路地裏を渡り歩くようにして数分後、ルギタニアの首都ワイバニアの中心地に辿り着いた。石造りの壁に囲まれた白亜の城が煉瓦造りの都市の中央にそびえている。
そこは世界でもっとも新しくもっとも巨大な魔術教育機関・ルギタニア魔術学院だ。
リョウは、この場所に来ると、自分のおぞましい罪を改めて思い知らされる。だから毎日ここに足を運んでいる。絶対に忘れてはならないから。楽になることは許されないから。
ここにいるといつも何時間も時間を使ってしまう。早くニーナを送り届けなくてはと意識を切り替える。初等科の学生寮には南門から入るのが早い。リョウは南へ足を向けた。
「違う。そっちじゃない」
ニーナが東を指差してそう言った。東門の近くにあるのは高等科の学生寮だ。
「そっちは高等科の寮だぞ?」
「わたしは高等科の生徒」
「そうか。ニーナは飛び級してんのか」
ルギタニア魔術学院では優秀な成績の生徒は、飛び級させる。
ニーナの底を知れない膨大な魔力は、初等科で収まる器ではない。強大な魔力の制御を学ばせるために高等科の授業を受けさせる学院側の判断は正しいと言える。
「リョウ、こっちに来て」
ニーナが東門へ向かって歩き出した。リョウもニーナ隣について壁伝いに歩いていく。
しばらくして東門に辿り着いた。巨大な鉄扉の前に黒い制服を着た警備員の男が一人立っている。警備員は、リョウとニーナの姿を見つけると目を丸くした。
「リョウ先生!? どうしてあなたがニーナと!?」
「この子が襲われてたんでな」
「なんとっ!? 勝手に抜け出して探してたんです! では一緒に学院長のところへ!!」
想定していなかった提案に、リョウは眉根を寄せた。
「いや、俺は……」
「お願いしますっ!! さぁ早く!」
警備員が鉄扉に右手で触れると、紫色の魔術陣が鉄扉全体に展開される。外部からの侵入者を防ぐ結界魔術だ。
結界魔術陣は一瞬強く光り輝いたが、すぐに消えて、ガチャリ! と鍵の開く音がした。
「早く中へ!」
そう言いながら警備員は、鉄扉を押し開き、手招きしてくる。
ニーナを預けて終わりにしたかったが、警備員はリョウに事情を聞きたいのだろう。
しかし自分には学院に入る資格はない。自責の念が両足に絡みつく。中々一歩を踏み出せないでいると、先に学院の敷地に入ったニーナが手招きしてきた。
「リョウ、はやく」
「……今行く! マリー……みんな……今日だけだから入らせてもらうぞ」
深呼吸したリョウは一歩前に踏み出して、一年ぶりに学院の敷地に足を踏み入れた。
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