スケルトン−2
映像はまだ続き、葬儀屋の中に入って行ったスケルトンは遺体のような物を運んでいる。スケルトンはトラックの荷台に痛いであろう物を入れると、トラックの荷台にスケルトン三体が乗り込む。姿を隠した者がトラックの運転席に乗ると走り出した。
「映像としては以上だ」
「手がかりとしては十分だ。ナンバープレートは分かったのか?」
「偽物だ。自動車ナンバー自動読取装置も阻害をされていて表示されなかった」
「そこまでの使い手か」
術によって認識をずらす事ができ、デジタルの世界でも効果があるように改造した術が開発されている。最新の技術に対抗するため術も対応するために進化をしている。開発された新しい術に関しては一定以上の技術がないと使う事ができず、非常に扱いが難しい術になっている。
「術の使い手としても凄いが、あれだけのスケルトンを何処から手に入れた?」
「
「知らないな」
顔色の悪い大狼が、最近起こっている遺体の盗難事件を大狼が霞に伝える。盗まれた遺体の数を大狼が霞に伝えると、霞の顔が引き攣る。
「大狼が関わった事件だけで十三体だと? そんなに何に使っている」
「分からん。だが今回でまた増えているし、スケルトンになるほどの遺体ではないと思う」
「つまり遺体は二十体近いと言うことか?」
「そうなるだろうな」
霞の顔色が悪くなる。二十体もの遺体があればかなり強力な術を使える。デジタルに効果があるような術を使う術師が何かをすると考えると、大規模な術を使った場合には大災害が起きる可能性がある。
「今後は関東の陰陽課全体で対応する必要があるな」
「俺は陰陽課から移動になったっていうのに、知りたくなかったぜ」
「霞は運が悪いな」
霞はため息をついて、大狼から詳しい情報を聞いている。霞はメモを取ると水野と話して、遺体に関する事件が周辺で起こっていないか探してほしいと伝える。
水野は無線を入れると一度部屋を離れた。
「霞、墓地の話だが女性の遺体が狙われたと予想しているのだが、こちらの遺体の性別は分かるか?」
「少し待て」
霞が無線で盗まれた遺体の性別を尋ねると、女性だと返事が帰ってきた。霞がさらに男性の遺体は葬儀屋に残っているのかと尋ねると、残っているようだと返事が返ってくる。
「聞こえていたか? 女性だけ運ばれたようだ」
「ああ、聞こえていた。やはり女性を狙っているのか」
霞が女性を狙う理由は何だと大狼に尋ね、大狼は霞に分からないと返している。
霞と大狼が女性だけが必要な術を考えるが、召喚であればユニコーンのような妖魔から、術であれば魔女が使うような術は女性の生贄が必要になる場合もあり、女性を必要とする術の数はかなり多い。
「まだ情報が足りていないな」
「そうだな。情報と言えば欠片を渡そう」
「助かる」
監視カメラの映像を再生していた警察官に霞がお礼を言うと、大狼と
霞はビルの外に出る途中で、大狼と狐塚に監視カメラの位置を説明した。大狼は立ち止まって監視カメラを見てから霞に話しかける。
「よくこの監視カメラはスケルトンを撮れたな」
「最近変えたばかりのカメラらしくてな。ビルのオーナーは詳しくは知らなかったようだが、術に対する抵抗を持った監視カメラだったようだ」
「そんな監視カメラ高かっただろうに」
術に抵抗するにはパソコンに対するウィルスとアンチウィルス同じように、抵抗する術を作る術師と、抵抗する術を破る術師の攻防になる。
ウィルスとアンチウィルスとの違いは、そもそもの術師の数が少ないので必要となる場合が少なく、当然必要ないと販売数が少なくなり、結果的に抵抗する術を作る費用が高額になる。
「おかげでスケルトンは撮れていた訳だし感謝だな」
「そうだな。製造メーカーがどの術に特化しているか調べたいな」
「後で型番を聞いてみるよ。メーカーはカメラに書いてないか?」
「ああ。多分あれだな」
大狼は監視カメラのメーカーをメモした後に、霞の案内でビルを出る。
大狼はビルを出てから、霞にビルのオーナーが遺体の盗難に関わっている可能性を尋ねた。
「それは無いだろう。捜査に協力的だったようだしな」
「だが術に対する抵抗のある監視カメラを買うなんて、やましい事でもあるのか?」
「分からん。だが怪しいと上司には伝えておいた」
霞と大狼が会話をしつつ、一台のパトカーに近づく。
霞がパトカーの中から鞄を取り出し、鞄の中から欠片が入った容器を出した。霞は容器を大狼の手の上に乗せる。
大狼は霞から受け取った欠片を確認するように容器を回す。
「見た目は同じ物だな。以前の物もスケルトンの可能性が高いな」
「科捜研に鑑定をお願いしていないのか?」
「出して結果待ちだ」
大狼は霞に欠片を容器から出すとと断りを入れて、欠片を手の上に乗せる。
次に大狼は狐塚の手の上に欠片を乗せる。
「墓地と同じで二種類の魔力を感じる。狐塚はどうだ?」
「同じです」
狐塚が霞にも試して欲しいとお願いすると、霞は請け負って狐塚に手を差し出す。霞は狐塚から渡された欠片を少し見つめていると頷く。
「見つけた時は気づかなかったが、二種類だな」
「流石、霞先輩」
「俺が狐塚の先輩だったのは一瞬だったがな」
霞が苦笑をしながら霞に答えた。
狐塚が陰陽課に入った時には、霞はすでに医者から事情があって陰陽課を続けることを止められており、陰陽課を異動をする前提で動いていた。異動がほぼ決定していた霞はそれでも陰陽課で時間があるのは自分だと、新人の面倒を見ていた。
「この魔力はあまり感じたことがない種類だな。何というか邪悪だな」
「修験道だと感じ方が違うみたいですね」
「スケルトンを動かすくらいなのだから邪悪なのだろうが、この魔力であればスケルトンに近い存在を召喚できそうなのにな」
大狼はスケルトンを大量に動かす技量や、監視カメラを阻害する実力があるのなら、霞が言う通りにスケルトンに近いアンデットを召喚できると頷く。大狼、狐塚、霞の三人で再び何故そこまで遺体をそこまで集めるのか話し始めたが、答えが出る様子はない。霞は分からないと言いながら、大狼に欠片を返す。
「大狼、水野がすぐに戻ってこないと言うことはすぐに分かることは無さそうだ。何か分かったら連絡をする」
「助かる」
監視カメラの映像も陰陽課に回しておくと、霞が言うと大狼はお礼を言う。
「今分かっている事は以上だ」
「それでは陰陽課に戻って報告をする」
「早めに報告をしといた方が良さそうだ。この場は任せておけ」
霞は最後に、大狼と狐塚にさっさとこんな事件は解決してくれと笑っている。大狼と狐塚は頷いて霞に挨拶をすると、覆面パトカーに乗り込む。
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