スケルトン−1

 墓荒らしの事件から二日後、大狼と狐塚は科捜研の鑑定待ちだと、再び場を清める為に警察車両のバンで移動をしていると、大狼の携帯が鳴る。大狼が携帯を取り出すと、電話の相手は土御門のようだ。


「大狼です」

『土御門だ。大狼、すまんがまた行ってほしいところができた」

「連続と言う事はまた遺体の盗難ですか?」

『ああ。今回は港区だ』


 大狼は着替えに一度警視庁に戻ると土御門に伝える。土御門が電話越しに同意すると、大狼は電話を切る。大狼はため息をついた後に、狐塚に話しかける。


「また事件のようだ」

「聞いていました。警視庁に戻ります」

「頼む」


 狐塚は警察車両のバンをUターンさせると、霞が関に向けて走らせ始めた。大狼と狐塚は、ここまで連続して遺体を盗む理由は何だろうと話し合っているが、答えが見つかる様子はない。


「今回は手掛かりになるような物が残っていると良いのだが」

「かなりの使い手のようですから難しいかもしれないです」

「そうだな。遺体を盗むなんて事をしていることが不思議なくらいだ」


 警視庁に戻ってきた大狼と狐塚はバンを駐車すると、警視庁の中にある更衣室で着替えて、陰陽課の土御門の元へと向かう。土御門は連絡を取っており、大狼と狐塚に手で少し待てと伝える。土御門は電話を切ると大狼と狐塚に謝る。


「大狼、狐塚、待たせてすまなかった」

「いえ。遺体の盗難について教えて欲しいのですが」

「今の電話が盗難についてだ。どうやら監視カメラに映ったようだぞ」

「監視カメラに?」


 今回盗まれた遺体の出所は前々回と同じような、無縁仏の葬儀屋だと土御門が言う。だが今回違うのは港区のため、周囲の施設に監視カメラが設置されており、そこに写り込んでいたと土御門が説明した。


「早速現場に向かって欲しい」

「分かりました」


 大狼と狐塚は元気に返事をする。土御門から通報の内容を転送されると、大狼と狐塚は覆面パトカーの鍵を借りて陰陽課を出る。大狼の運転で警視庁を出ると、港区へと向かって走り出す。


「これで捜査が進みそうだな」

「筋肉痛の恨み晴らすべし」


 腰や腕を摩りながら狐塚は何処かを睨みつけている。狐塚には土の中から証拠を探す作業は相当辛かったようだ。何処かを睨みつけている狐塚を大狼は見て苦笑している。


「狐塚。犯人を見つけても、やりすぎないようにな」

「分かっています!」


 握り拳を握りながら答えた狐塚に、大狼は苦笑を深めながら運転に集中し始めた。港区の目的地まで大狼の運転で辿り着くと、そこには複数の警察車両が止まっている。大狼と狐塚は覆面パトカーを降りると警察車両に近づいていく。


「何処に行っても遺体盗難は大変そうです」

「普通はそうそう起きることではないから、現場に来た警察官も戸惑っているのだろう」


 大狼と狐塚が近づいていくと現場に居た警察官に止められた為、大狼と狐塚が警察手帳を出す。大狼と狐塚が通されて葬儀屋の敷地内に入っていくと、中には霞が指示を出している。大狼と狐塚が霞に気付いた様子で、霞に近づいていく。


「霞さん」

「おう。大狼と狐塚が来たのか」

「そういえば霞さんは港区に居たんでしたね」


 霞が大狼と狐塚を葬儀屋の中に案内して、遺体のあった場所を大狼と狐塚に説明していく。大狼は周囲を軽く調べてから霞に話しかけた。


「魔力のある欠片はありませんでしたか?」

「有ったぞ。俺が回収しといた。あとで渡すよ」

「助かります」


 霞が陰陽課を辞めたのに陰陽課の仕事ばかりしていると、大狼に愚痴り始めた。霞と以前も一緒に居た警察官が、霞にやっぱり陰陽課だったんですかと問い詰めている。


「いやぁ。水野にもバレてしまったな」

「隠す気ないじゃないですか」

「怖がられるから一応隠してたんだよ。ここまでの事件じゃ隠して動けないだろ」

「分からなくもないですが、仲良くなったら教えて下さいよ」

「悪い悪い」


 霞が謝った後に、一緒にいる警察官を大狼と狐塚に紹介する。霞が水野と呼んだ警察官と大狼と狐塚は挨拶をする。


「水野です。最近は霞さんと組んでいます。霞さんと一緒にいると会う機会も増えるかもしれませんので、今後よろしくお願います」

「大狼です。こちらこそ、よろしくお願いします」


 霞から挨拶はそのくらいにして次に行くぞと言うので、大狼と狐塚は霞と一緒に移動し始めた。大狼は霞に思ったより怖がられていないようで良かったと伝える。霞は頷いて、手を口元に持って行こうとして苦笑している。


「癖は抜けませんか」

「ああ。煙が恋しいよ。大狼が隣にいると余計にな」

「ドクターストップですから諦めるしかないでしょう」

「全く辛いね。今はこんな状態だから飴も舐められないしな」


 霞は手を振りながら大狼と狐塚を向かいのビルへと案内する。霞はビルの警備と書かれている部屋へと大狼と狐塚を招く。部屋の中にいた人に霞が挨拶をして、陰陽課を連れてきたと説明した。その後に、大狼と狐塚を画面の前に連れていく。


「再生して貰うから少し待ってくれ」


 大狼と狐塚が画面を見ていると、映像は夜中の一時と表示されたところから始まった。映像は夜中なのにかなり綺麗に撮れており、機材はかなり新しいようだ。少しするとトラックが葬儀屋の前に止まると、運転席の中から服で全身を覆った人物が出てくる。霞が止めて欲しいと言って、そこで一度映像が止まる。


「怪しい見た目だだな」

「問題はこの後だ」


 霞がお願いすると映像が進み始める。怪しい人物が周囲を警戒した後にトラックの荷台を開けると骸骨が三体出てくる。怪しい人物と骸骨は周囲をした様子で、葬儀屋の方に歩いていく。


「トラックの大きさから人の大きさとそう変わらない、アンデッドのスケルトンか」

「がしゃどくろではないだろうな」


 アンデットのスケルトンは世界各地に登場する妖魔で、土葬の多い地域に多い現れる妖魔だ。がしゃどくろは死者の怨念が集まって現れる日本の妖怪で妖魔だ。がしゃどくろは巨大な骸骨の姿をしている。今回トラックから降りてきた骸骨はがしゃどくろほど大きくはないので、スケルトンだと大狼と霞は予想した。


「最初に降りてきた姿を隠している者も、スケルトンの可能性が高いな」

「スケルトンをあれだけ動かせる術師なら自ら動く必要はないな」

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