夢幻温泉旅館−2
車の車種とナンバーが分かればナンバーを照会すれば所有者が分かるし、Nシステムで車の位置が把握できる。盗難車だったとしても、どこで盗難された物か分かれば、犯人の手がかりになる。そう
「墓荒らしの手がかりがあれば、葬儀場の事件を調べるのに照会出来そうです」
「一気に片付いてくれれば簡単なのだがな」
大狼の運転でコンビニに到着すると、大狼と狐塚の二人はコンビニで服を買おうとコンビニ入っていく。
「下着やインナーはあるが、ここのコンビニには服はないか」
「下着やインナーだけでも買っておきましょう」
「そうだな」
大狼と狐塚は服と飲み物を手に取り、レジで商品を買うと覆面パトカーに戻って、温泉旅館へと向かい始める。
遠回りしてもかなり近くに温泉旅館はあったようで、コンビニに寄った時間を入れても三十分もかからずに温泉旅館へ到着した。
「中々雰囲気があるな」
「正直、思った以上に綺麗です」
「何で安い値段だったんだろな?」
「偶然ですかね?」
大狼と狐塚は温泉旅館の中に入ると、旅館の従業員が二人の元に駆け寄ってくる。旅館の従業員はしっかりと着物を着ており、安い旅館とは思えない接客だ。
「ようこそ夢幻温泉旅館へ、大狼様でしょうか?」
「はい。予約した大狼です。随分遅くなってしまって申し訳ないです」
「いえ。事前に連絡を頂いていましたから問題ありません。改めまして、ようこそ
夢野が大狼と狐塚を旅館の中に案内しようと、靴箱の位置などを話し始めたが、大狼と狐塚は夢野を見たまま視線を外さない。夢野が視線に気付いたのか大狼にどうしたか尋ね始めた。
「お客様? どうされました?」
「失礼ですが、夢野さんは妖魔ですか?」
「え!」
夢野は大狼の言葉に驚いたような声を出した後に、視線を彷徨わせて動揺している。大狼と狐塚は夢野を落ち着かせるように警察手帳を出して、警視庁の陰陽課に所属していることを伝える。すると夢野は落ち着いたようだ。
「陰陽課の刑事さんでしたか。私と夢幻温泉旅館はちゃんと警察に登録していますよ?」
「急にすみません。術を使っているようですが、あまり見たことがない使い方だったので、妖魔かと思いまして」
「ああ。見た目が怖がられないように普段は化けています」
夢野はお二人なら問題ないでしょうと、術を解き始めた。術を解いた夢野は人の大きさがある狐の妖魔だった。夢野は顔を触りながら大狼と狐塚に化けていた理由は分かって頂けたかと問いかけた。すると狐塚が手を叩いて夢野に話しかけた。
「狐! うちの神様も狐ですよ。親近感沸きますね」
「え? 失礼ですが狐の神様というと何処の?」
「
「紅衣様! これは失礼しました」
紅衣の名前を聞いた瞬間に、夢野は狐塚に頭を下げ始めた。狐塚は自分が偉いわけではないので、そこまでしなくて良いと夢野に声をかけている。夢野が落ち着いたところで、大狼に声をかける。
「あ、あの、大狼とはもしや、大きい狼と書いて大狼ですか?」
「そうですよ」
「
「いや、私も自分が偉い訳ではないので普通で大丈夫ですよ」
夢野を落ち着かせるのに大狼と狐塚は、夢野から話を聞く。どうも夢野は紅衣のファンで、しかも真神のファンでもあったようで、大狼と狐塚に会えた事が嬉しかったようだ。
「紅衣様と真神様の話は関東に住んでいる妖魔の中では有名ですから」
「紅衣様が妖魔から相談を受けているのは知っていましたが、そういう感じなんですね」
大狼と狐塚が夢野と和やかに話ができるようになったところで、夢野が改めて大狼と狐塚がこのような場所の温泉旅館に来た理由を尋ね始めた。
「警視庁のお二人が何故群馬県に?」
「群馬県警の応援できたのですが、帰れば大変な時間になりそうで出張扱いです」
「ああ。もしかして近くの墓地で起きた墓荒らしですか?」
「知っておられるんですか?」
「ええ。私は妖魔なのですが、エイブラハム神父とは仲良くさせて貰っているのです。なので今回のことは聞いていますし、警察から話も聞かれました」
夢野は墓荒らしは流石に酷すぎると随分と語気を荒げて怒った様子だ。大狼が夢野を落ち着かせようと、話しかけている。
「私も旦那を亡くしていますから。旦那の墓を荒らされたら暴れそうですよ」
「旦那さんを亡くされているんですか」
「ええ。亡くなったのは大体二百年前ですがね。相手は人間だったの仕方ありません」
旦那の死は随分昔だから気にはしていないと夢野は笑っている。妖魔と人間が結婚することはあし、子供が生まれる事もあるが、妖魔と人間のハーフは滅多に生まれず、妖魔か人間どちらかで生まれる事が多い。また妖魔は力が強ければ強いほど長生きするため、人間と結婚すると生き別れる事がほとんどだ。
「子供たちや子孫は元気に生きていますしね」
「それなら良かったです」
「ええ。話し込んでしまいましたね。中に案内します」
夢野の案内で大狼と狐塚は旅館の中に案内される。夢野から大狼と狐塚は食事にするか、風呂にするかと尋ねられて、二人は汚れているので先に風呂に入りたいと伝えている。狐塚が夢野に遠慮気味に話しかける。
「あの、夢野さん。お願いがあるんですが」
「何でしょうか?」
「紅衣様を呼んでも良いでしょうか? 紅衣様は温泉が好きなのですが、紅衣様がのんびりと入れる温泉少なくて、入れるなら入れてあげたいのですが」
「もちろん構いませんよ!」
夢野が狐塚に食い気味に答えた。狐塚が部屋風呂のある部屋をお願いすると、夢野が大浴場に入って問題ないと狐塚に伝える。
「良いのですか?」
「平日ですから今日のお客様はお二人だけです。それに辺鄙な場所なので、この旅館に来るのは基本妖魔が多いのです。ですからお客様がおられても気にしませんよ」
「妖魔の客が多いのですか、そんな旅館があったんですね」
群馬県で温泉といえば草津温泉があるので、このような場所に一般人が来ることは滅多にないと夢野は笑っている。続けて夢野は、辺鄙な場所にある宿は妖魔が経営してる事があり、普通の宿だと思って一般人が泊まると妖魔が大量におり驚く事があると言う。
「なので紅衣様がうちの温泉を気に入られましたら、時々入りに来て頂けると嬉しいですね。うちに来る常連のお客様も喜びます」
「分かりました」
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