伝説の白鬼

神山 陽之晴(かみやま ひのはる)

第1話 ギフト

目の前の男はスマフォをジャケットにしまうと「一度、人間を切ってみたかったんだよなぁ」とニヤリ笑いながら僕に日本刀を向けた。


「い、嫌だ…やめてくれ」


腰を抜かし怯える僕に蔑むような目で男は返した。


「はぁ? こっちは大金払ってんだよ。主の話じゃお前、切っても直ぐ再生するそうじゃねぇか。どんな体してやがんだ、興味湧くねぇ」

「でも、痛いし、怖いし、本当にやめて!」

「うっせぇぇ!」


そう言って男は僕の右腕を一途両断した。


血が天井にまで噴き飛ぶ。目の前の男は腕に残った切れ味が余程良かったのか、掲げた日本刀を嬉しそうに見上げていた。


「うぁぁぁぁぁっ!」暫く激痛が僕を襲い悶絶する。


だが、どうしてだろう。

ある一定時間経過すると止血し流れる血がうねり出す。

それはまるで別の生き物であるかのように動きだし、綺麗に再生を遂げるのだ。


そう、何度でも。


「はぁはぁはぁ…」


震える体、乱れる呼吸。傷は消える。痛みも消える。だが…


いつまでも心の傷が消えることはなかった。


なぜ僕は傷が再生するのが早いのだろう。

いや普通なら切り離した腕が生えることもない。


お父さんとお母さんはどこに行ったのだろう。

どうして僕を捨てたのだろう。


十八歳になる今日まで僕は闇サイトを運営している男に育てられた。

彼は尋常じゃない僕の再生力を利用し「半殺し屋」という闇サイトで稼いでいた。切ったり、殴ったり、あるいは半殺し状態までしたり。

殺さなければいいというルールでストレス発散の道具にされいたのだ。


監禁生活はもう慣れた。飯も風呂も与えられる。頼めべば書物も貰える。だから読み書きはできる。外の世界を本で知り、僕はいつか本屋に行くのが夢だった。



両親、環境、容姿、能力。それらは生まれた時から存在し、自身で選んだ物ではない。その全ては、自分の成長のために与えられたギフトと呼ばれている、とそう好きな本に書かれていた。


良いものは世のため人のために。

悪いものは己の成長のために。


この言葉がどれほど僕を支えただろう。

言葉がなければ僕は立っていられない。いや生きていられない。


だって僕は、どんなに願っても…死ねないからだ。












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伝説の白鬼 神山 陽之晴(かみやま ひのはる) @sunrise3

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