【完結】群青カタルシス
千鶴
※公募用梗概※
死刑囚
「タイムリミットは三時間。浅倉潤さん、あなたはあなたの人生を振り返ってくださればそれでいい」
そう言って、宗胤は徐に部屋の扉に爆弾を取り付け始める。
最初は戸惑いを隠せなかった潤だが、この宗胤の一連の行動を自らの心境の変化を期待して行われているなんらかの催し及び罰だと理解し、人生を振り返る事を受け入れた。
少年時代に父を殺し、少年院を出て務めた清掃業務の最中に旧友
実のところ、潤は誰も殺してはいなかった。父親を殺したのは潤の妹、ゆかり。黒函莉里、木村礼人を殺害したのは旧友である前田清玄だった。だが潤はある事情からその罪を被り、死刑までもを受け入れるつもりだったのだ。宗胤は、潤からその事実を暴露させようとしていた。
潤が父親を殺害したとされた事件。その真相は、潤の母親が三代目鳳蝶である
黒函莉里が死んだ事件は、樋井蝶子が首謀していた。移植を受けた合併症で心臓を悪くした蝶子には治療のために莫大な金が要り、その金を自らにかけた保険金で補填しようとしたのだ。そこに白羽の矢が立ったのが、無戸籍の少女。少女を身元が判別できないよう処理し、そこに自らの手首を残すことで自身が死んだことにしよう、そういうシナリオだった。だが切り落とされた手首が鑑定された結果、死んだとされたのは蝶子ではなく黒函莉里に。切り落とされた蝶子の手首には、遥か昔に蝶子に髄液を分け与えた潤の母親のDNAが残っていたのだ。つまり、潤の母親の名は黒函莉里だった。
さらに潤が殺したとされる(実際は前田清玄が殺害)最後の一人
現在、教誨師として浅倉潤と対峙する宗胤は、刑事
樋井紫子は浅倉潤の妹、ゆかりだった。
紫子は自身の心臓を姉の蝶子に託すことで、生きて罪を償わせたかったのだ。自分ができなかった贖罪を蝶子と、それから兄である浅倉潤に、生きて
暗証番号を明かした浅倉潤は、死刑を執行——されたことになった。出所した浅倉潤は名を変えて慎ましく生活する中で、妹ゆかりへの思いを胸に抱えながら、虚無を生きていく。
了
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