第3話あの事
朝日が昇り、鳥がさえずりを始める頃。
まだ街の住民たちも起きていない朝一番の人気の無い町を2人は歩いていた。
くたびれた体を少し伸ばし、大きな欠伸をする織部。
リコリスはその間が抜けたような仕草に少し笑いながらも、少し、重いトーンで口を開いた。
「……前からずっと聞こうと思ってたけど……。あの事って何かしら……?」
大きな欠伸の途中でピタッと止まった織部。そのまま少し停止してから、静かに上へと伸ばしていた腕をゆっくりと下ろす。
すっと小さく深呼吸をしてから、織部は静かに話し始めた。
「もう、かなり昔の話なんだがな……。知ってると思うが、【黄泉の国】がこの国に侵攻して来た……。」
この事件はリコリスだけでなく、この国の住民であれば知っている出来事だった。
「確か……黄泉の国の侵攻で数体のガーゴイルが街に侵入して来た……と聞いてます。」
「そう、俺たちは国への侵攻を止められなかったんだ。表向きには残党が侵入してしまった事になっているがな。」
「……軍が大半を撃滅したのでは無いと……?」
ピタッと歩くのをやめる織部。ゆっくり何かを思い返すような視線を空に向ける。
「……軍の7割の人間が死んだよ。1人の男によってな……。」
その返答に、リコリスは大きく目を見開いた。
恐らく国が秘匿情報にしたのだろう。軍が大敗したとなれば、この国は混乱に陥るだろう。
「……俺は目の前で殺される仲間を救えなかった。その中には薙の婚約者もいたんだ……。」
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