第25話 地獄の自業自得
前回までのあらすじ。
幼馴染が押し掛けメイドになりました。
☆☆☆
「なんでここにいるんだよ!?」
そもそも論である。
家には鍵が掛かっていた。
父さんが頑張って建てた大切な大切な家である。
風呂が狭いのと、僕の部屋の鍵が取り払われている以外は、階段が急すぎるとか、壁が薄くて音漏れが酷い、とか、最寄りの駅から少し遠いとかまあ数え上げれば色々あるが、それぐらいしか不満はない立派な家だ。
「ジェレスカさんから鍵を貰ってるからね!」
萌乃がキランと鍵を取り出した。
「戸籍と血縁的には全然家族じゃないけど、なんとなく家族みたいなものだから、って」
「「ねー」」
頷く。
まさかの正攻法な侵入手段だった。
「まあ、とりあえず、朝ご飯にしましょう」
力なく崩れ落ちた僕の肩をポンポンと慰めるように叩く、萌乃。
「そうね。私は片付けをするわ」
同じく肩を叩くかと思いきや、弱っている僕の首をカプカプと甘噛していった。
何が恐ろしいってこの双子姉妹は家事が出来ることだ。アイドルみたいな見た目のくせに、強力な武器まで持っているのだ。
何故、彼氏がいないのだろうか?
いや匂いフェチと、噛みつきグセのせいなんだろうけど。
僕が何かをするまでもなく、テキパキと部屋が片付き、いい匂いがしてくる。
「こんなものね」
先に掃除を終えた冷佳が椅子に座る。
「できたわよ〜」
それから少しして、いい匂いのする朝ご飯が出て来る。
ご飯に焼鮭、卵焼きにお味噌汁。
和食だ。
朝にご飯。
しばらく食べてない。
「「「いただきます」」」
メイド服の幼馴染と朝ご飯を食べる。
変な話だ。
変な話だが、朝ご飯は美味しかった。
「「「ごちそうさま」」」
食べ終わった食器を片付けて改めてリビングに集まる。
「メイドさんごっこって何をするのさ?」
「ん〜?」
「さあ?」
首を傾げる双子姉妹。
「何なんだよ!?やりたいことがあったんだろ?」
「違うわよ〜」
キラキラと否定する萌乃。
「んん?」
「これがあったのよ」
そう言って冷佳が取り出したのは、一冊のボロいノート……ノー……NoooOO!!??
「そ!それは!?」
「そう。スミの書いたノートね」
「字の感じ、中学一年生の11月頃から始まってるわよね」
「な、なぜ、なぜ!?なぜそれがそこに!?」
手を伸ばすとひらりと躱された。
それは、そう。
僕が中学生の頃にうっかり書いてしまった黒歴史!
厨二病ノート……ではなく、エロ妄想垂れ流しノートだ。
幼馴染の女子に見られるなら、厨二病ノートの方がまだマシだ。
「なかなかよね〜」
パラパラとページをめくられる。
「止め、止めなさい!!」
「いや〜」
カラカラと笑って拒否される。
「これとかなかなか秀逸だわ」
「秀逸じゃなくて、ヒドイよね」
萌乃の方が、容赦がない。
「今日から俺が校則だ!……俺だって」
ハハハと笑われる。
「やめろーー!!マジでやめろー!!」
「女子の制服は、マイクロビキニだ」
冷佳が冷静な声で淡々と僕のエロ妄想を読み上げる。
「やーめーろーー!!マジで!ヤメテ゛ぇェ゙ーー!?」
僕の悲鳴は喉が涸れるまで響いた。
☆☆☆
メイドのくせに全然言うこと聞きゃしねえぞ!?このメイド共!?
失礼。
少し言葉が乱れました。
「とまあ、ここにあったから、じゃあやってあげようかって」
真っ白に燃え尽きた僕に、開いたノートをペシペシと叩いて見せる萌乃。
結局、全部読み上げやがったコイツら……。
「なかなか秀逸だわ」
何書いてあってもそれだな……おい……。
「結構な変態よね。『幼馴染双子メイドは俺様の非猥な命令に逆らえない』。卑猥って、字、間違えてるし。幼馴染双子の登場頻度が高いしね」
もう止めて……。謝るから……。後、変態って言わないで……。僕泣いちゃう。
双子姉妹が多いのは仕方ないじゃないか!
仕方ないじゃないか……。
ていうか、なぜそのノートが2人の手元に?
少し前に掃除してて見つけて慌てて捨てたはずなのに……。
「ね? 何か分かんないけど、ポストに入ってたんだよね〜」
「パパに見つからなくて良かった。見つかってたら、さすがに問題になったと思うわ。でも、名前書いてあるわけじゃないから、問題にはならないか」
「良かったね〜。本人にしか見られてなくて!」
最悪だよ。
「で、ここに書いてある通りだと、スミが私達に卑猥な命令をするって遊びなの」
「大丈夫。全部、録音と録画する用意は出来てるから。命令していい。服を脱いでヌルヌルのローション風呂で俺を前と後ろから挟んで体を洗うんだ、って」
「出来るかー!?」
「だよね〜」
ケラケラと笑う萌乃。
安全パイ呼ばわりするMr.パーフェクトチキンこと、この桶無澄仁のことを完全に舐めきっている!
出来ないけども!
「というわけで、メイドらしく、掃除をするわ」
「そう!スミの部屋を隅から隅まで、家さ……じゃなくて、掃除するわ!」
「……なんて?」
なんだその不吉な遊びは!?
「何が出てくるか楽しみ」
「中学生の頃から成長したのか見届けてあげないとね〜」
「やめ「うっかりこのノート、リーちゃんとレイちゃんの部屋に忘れちゃうかもね」
「……好きにしやがれ!ちくしょうめ!」
☆☆☆
てめえら!やめろ!
パソコンの中を漁るのは掃除とは言わねえんだよ!!
やめろ萌乃!それはやめろ!その先に封い……いや、何もないぞ?本当だぞ?ハハハ。それ以上が何もあるわけないじゃないか。
そのツルペタフォルダだけだよ。
……冷佳、アルムちゃんのフィギュアをそんなにまじまじ見ないで!間違えたの!通常制服ver.を買ったつもりが、ポチリ間違えてたみたいで全身網タイツverが届いただけなの!信じて!
もう止めて!
『全身網タイツね』とか冷淡な声で鼻で嘲わないで!
僕の尊厳が破壊される!
違う!
違うんだ!
『エレメンタルファントム』はロボットのデザインが素晴らしいんだ!
ローラがスーパーなロボットに背徳的で変態的で偏執的な行為をするのが見たかったわけじゃないんだ!
分かってくれ!
頼む!
もう僕の喉は涸れているんだ!
これ以上叫ばせないでくれー!!
ほら、もう5時だぞ!
晩御飯の時間だ!
お昼食べてないからお腹ペコペコだよ、僕は!
☆☆☆
結果、夜ご飯は美味しかったのに、なぜかしょっぱかったでした。
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