第15話 メス会のオスで

前回までのあらすじ。

MMORPG『テラドットファントム』は初心者でも始めやすいシステムで根強い人気を誇る中堅ネットゲームだ。

練りに練られたストーリー性も、心がときめいて仕方ないキャラデザも、骨抜きにされるような操作性があるわけでもないが、そこそこに楽しめるストーリー、安定したクオリティのキャラデザとイラスト、不快にならず他ゲームにも移りやすい癖のない操作性と、全てが64点ぐらいで、初めてのネトゲとしてとても評価が高い。


月額300円という定額システムで、そのお陰か、いや、たまたまそう言う方針か、割とガチャも渋くない。

まあ上を見ればキリがないのは当然で、廃課金のヘヴィユーザーもたくさんいるのだが、そういう異次元な生き物は別の世界で遊んでいる。

ライトユーザー同士で少し遊んでいるだけでもなかなかに楽しいのだ。


ぬるーいプレイヤースキルしかなくて、デスペナ食らってもけらけら笑える感じがとてもいい。

僕の場合は、平日とかはなかなか自分一人の時間が作れないので、時々インできるだけのまったりプレイヤーなのだが、それでも楽しめる。


さあ、少しばかり『テラドットファントム』について語ってしまった。

何故か。

そうだ。ただの現実逃避だ。


テラドットファントムの仲間とオフ会をする話になり、おっさんに囲まれて非モテの慟哭を上げるつもりだったのに、なぜか僕は今、モデル級のお姉さん方に連れられて、オシャレなカフェで衆目に晒されている。


何故だ!?



☆☆☆



桶無おけない 澄仁すみに君ね。ふうん。じゃあスーちゃんね」

「あ、はい」

キャラネーム【鰻時々山芋ウナさん】はパーティーリーダーで禿頭で筋骨隆々、全身をストラップ状の皮鎧で身を包んだ、漢の中の漢のはずだ。

断じて、士矢武しやぶ リタさん(22歳)が中の人なはずがない。

切れ長細目の目元が涼やかな美人だ。

おかしい、俺様のバスーカはティッシュじゃ受け止めきれねえぜ!!とか言ってたのに。そのツインバズーカがカップで受け止めきれてないじゃないか!!


「高校生ね。可愛いじゃない」

「あ、恐縮っす」

キャラネーム【なめたいナメちゃん】は半ズボンに白タイツがトレードマークの女性恐怖症だけど、太ももフェチという性癖が歪みまくったショタキャラのはずだ。

断じてくわ エルさん(20歳)が中の人のはずがない。

タレ目の目元に黒子があって、どこかおっとりとした雰囲気で、やはり美人だ。

おかしい、他パーティーの女性ヒーラーに『太もも舐めたい』ってメッセージ送りまくってバンされた過去を持つはずなのに。

明らかに舐めたいって言われる側のすべすべ太ももじゃないか!


「汚いおっさんだと思ってたのに、ね」

「あ、すいませんっす」

キャラネーム【G0CHokチョク】は、枯れ果てたじじいキャラのくせにナンパしまくる女好きキャラのはずだ。

断じて滑戸なめと ルルさん(21歳)が中の人のはずがない。

ぱっちりした目にアヒル口のアイドル顔だ。

おかしい、恋人の右手だけじゃ足りなくて、左手がセフレになったぜ?しかも最近は右足も寂しそうにしてるんだ、とか言ってたのに。

間違いなく恋人立候補者で列が出来てるはずだ!持ってる鞄とか、すげー高そうだし!


「何?びっくりしてちっさくなってんの?可愛いじゃない?お姉さんがおっきくしたげようか?」

ふふふ、とリタさんが笑いながら内ももを撫でる。

小さくなっているのには訳がある。いや小さくはなってない。そもそもそんなに大きくな……いや、そうじゃない。いやでも当然、びっくりもしているのだが。

話がややこしい。

要するに、それ以上に、人の目の集まり方が凄まじいのだ。


場所はカフェ。男子高校生には敷居の高いオシャレなカフェだ。

そこにいる三人の美女。それはいいのだ。普通だ。いや、普通ではなかなか見ない美人では……いや普段から美人は見慣れているが、いや、だから、そういう問題じゃないのだ。


格好だ。

三人とも【魔機甲冑戦鬼リラタミロン】の白虎逆鱗羅刹モードのコスプレのままなのだ。

ガン目立ちだ。


「ったく、おっさんだと思ったのに」

ルルさんがほっぺたを膨らませる。

「ね。おじさんだったら適当に写真撮らせて、少しサービスして搾れるだけ搾り上げてやろうと思ってたのにね?」

うふふ、とエルさんが笑う。


……そう。この人たちは、怖い人たちだった。

一応、プロコスプレイヤーらしい。本職は大学生らしいのだが。

三人の話を要約するとネトゲで独身社畜のおっさんプレイヤーと思しき人に目星を付け、オフ会と称して呼び寄せ、少しサービスしてその分、金をむしり取れるだけむしり取るという鬼畜な所業をしているらしい。さすが戦鬼だ。

男同士と思わせて油断した所に、美人三人組が登場!訳が分からんままに気が付けば全て吸い上げられているらしい。

『でも、楽しそうよ?』とはエルさんの談だ。


「まあ、高校生にたかってもしょうがないしね。でも、せっかく来たんだからちょっとぐらい楽しませてよ?」

ギラリとリタさんの目が光った……気がした。


「え?え?」

慌てふためく僕を両端から掴むと、そのまま有無を言わさず連れ去られた。

辿り着いたのは、ルルさんの住むマンションだった。

音大生らしいルルさんのマンションは防音対策もバッチリだった。



☆☆☆



夕方。

……なぜ僕はアバターにあんな装備を選んだのか?自分が着る羽目になるならあんな服は選ばなかった!!

僕には下乳も横乳もないんだ!


後、リラタミロンの玄武転生金棒インサートモードはリアルで見るとあんなことになってるんだなと人体の神秘を知った。


オフ会はもうしないと財布に増えた三万円を握り締め強く心に誓った。

知らない人に会いに行くって危険が一杯だ。


……ただ、来月、我が家でやるというオフ会からはどうやって逃げればいいんだろう?







§§§§


あとがき

見てくれてありがとう!!

そして、☆を押してくれ!!笑

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