第3話 同級生はあだ名がセクハラ。
授業。
というのは、誰にとっても退屈なもののはずだ。
僕だけが特別にそう感じるということはないはずだ。
しかし、休み時間というのは楽しい。
昼休憩はなおさらだ。
「すみ!購買行こうぜ!」
ハツラツ!っと声を掛けてくるのは、黒い髪がサラサラで、目鼻立がキリッと整っているのだが、イケメン!というには少し顔立ちは古く、しかし昔の映画に出てくる俳優のようなやはりイケメンな友人、
「ああ」
伊人は、見た目通りの体育会系で、剣道部の副部長を務めている。
ここで何が言いたいかと言うと、めちゃくちゃ食うのだ。
「早く行こうぜ!売り切れちまう!」
キラキラした謎の軌跡を残して駆け出す伊人を、何の特徴もなく追いかけ、僕たちは購買へ向かった。
☆☆☆
「あれ?チチハルじゃん?」
購買へ向かう途中、僕たちは廊下の端っこで呆然としている女子生徒を見つけた。
あだ名はチチハル。
本名は
同級生だが別のクラスの彼女は有名人である。
どう有名人かというと、その足元に散らばったプリントを見れば分かる。
「またか……」
「まただな……」
チチハルはとかく鈍臭いのだ。
その鈍臭さは8クラス、200人いる学年中に轟いているほどと言えば分かるだろう。
ドジっ子なだけでなくドジっ子がよく似合う小動物的な愛嬌がある。
「大丈夫か?チチ…河内?」
僕は声を掛ける。
「あ、だ、で、え、ど、お、お、桶無くん!?」
ひどくびっくりさせたらしい。
顔が真っ赤だ。
チチハルとは、去年、同じクラスだったので顔見知りだ。
ちなみにチチハルのあだ名は本人には言ってはならない。
あだ名の由来は……言うまでもない。
「だ、大丈夫!全然大丈夫よ!」
チチハルはバタバタと辺りに散らばったプリントを集めようとして
「あた!?」
ムニュっと倒れた。
「………手伝うよ」
「桶無くん、ありがとう。私ほら、栄養が全部おっぱいにいっちゃってるから」
えへへ、と恥ずかしそうに笑いながら、ボタンが悲鳴を上げそうな胸をムニムニと撫で、ツンツンとつつく。
その主張の凄まじさは、サイズ感で言えばリリア姉さんより上だ。
リリア姉さんは本人の自慢によれば95センチとことなので、もしかするとチチハルは三桁あるのかも知れない。
「さっさとやろうぜ?」
「あ、根唐井くんもいたんだ!?って、人の胸ばっかり見ないでよ!!」
そう言うと慌てて胸から手を離して、ぷりぷりと怒る。
理不尽な気もしないではないが、イケメンに自分の胸を撫で回してたと知られたのは恥ずかしいだろう。
「今日は購買?」
「ああ」
拾いまとめたプリントを渡すと、チチハルが聞いてくる。
「へえ……【吸い付くようなモチモチ肌触りと、子どもの頃を思い出す懐かしい甘さの、あーんてしてあげたくなる大っきな大っきなミルクパン】買えるといいね。大っきな大っきなモっチモっチでふわっふわなやつ。少ししっとりしてるんだよね?」
受け取ったプリントをそのクッションで受け止めながらチチハルが笑う。
ドジっ子なのに、その笑顔が妙に妖艶に見えて、思わず曖昧に笑い返した。
「売り切れる前に、さっさと行こうぜ」
「ああ」
根唐井の言葉に誘われて、僕達は購買へ向かった。
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