第2話 幼馴染はアイドルみたいな双子姉妹。
通学路。
僕の通学は一人だ。
リリアとレイミも同じ学校なのだが、他校も含めたくさんの生徒が歩いている中で、プラチナブロンドの十頭身美女を二人も連れて歩く勇気は僕にない。
血のつながっていない僕たちは傍から見れば兄妹には見えないし、万が一に恋人などと勘違いされては彼女たちにとっても迷惑だろうから。
「スミ〜!おっはよ~!」
「ぐえっ!?」
どげし!という音とともに体当たりをくらい前に数歩たたらを踏む。
通学路。
他校も含めたくさんの生徒が歩いている中で、コケたりすれば恥ずかしい。
何とか踏みとどまると、背中に抱き着いている幼馴染に声を掛ける。
「おはよう、
彼女の名前は
同い年の彼女は、物心ついた頃にはお隣にいた、いわゆる幼馴染である。
天真爛漫を絵に描いたような性格で、子どもの頃の距離感が未だに抜けていない萌はことあるごとに抱き着いて来る。
当然、子どもの頃と違って萌乃の身体は女性らしく、柔らかくなっており、それは子どもの頃からあまり変わっていないが、整った容姿と相まって、抱き着かれるとオレンジっぽい良い匂いとかもして、色々困るのだが、今更振り払うのも気にしているようで恥ずかしく、僕は何気なさを装っている。
「あ~。スミの匂いがする~」
そう言って蕩けたような声でからかいながら、僕のうなじに顔を埋める。
「くすぐったいよ、萌乃」
「あ~。スミの味もする~」
ちゅるちゅると音を立てて、首筋を舐められる。
「だから、くすぐったいって、萌乃」
天真爛漫で、隠し撮りの写真が出回るような萌乃だが、うなじの匂いフェチと、汗の味フェチという変態臭が漂う嗜好の持ち主で、一般男子にこんなことをすれば大変なことになってしまうので、僕が引き受けているわけだ。
……役得とかは思ってない。
「止めなさい。人前で」
「いた~!?」
ゴス!という音とともに、萌乃がずるずると背中からずり落ちる。
背中を柔らかな感触が滑り落ちていく。
「スミ君、おはよう」
「おはよう、
背中に冷たいものを当てられたような冷たい声の彼女は、
萌乃の双子の妹である。
栗色の髪に、スラリとしたスタイル。
雰囲気はまるで違うが、よーく見てみると萌乃とそっくりだ。
「いきなり後ろから抱き着いたりしたら危ないのよ?スミ君がムチウチにでもなったらどうするの?」
萌乃と違って大人びた冷佳は、冷静に萌乃を叱る。
「でもぉ〜」
「でも、じゃないわ」
ピシャリ。
「後ろから突然は危ないのよ」
そう言うと、僕の前に立つ。
距離が近い。
シトラスのような爽やかな香りがする。
「こうして、正面から、ゆっくりと抱き着くのよ?」
そう言うと、僕を正面からゆっくりと抱きしめる。
「その時にこうして……」
僕の手を自分の腰の辺りに回させる。
薬指と小指が、腰と言うには柔らかな部分に触れている。
触れているが気にしてない、どころか、何度も『こう、分かる?こう』と萌乃に教える度に手の位置は下がっていき、完全にその小さめなおしりを抱えるような手の位置になっている。
「こうして、ぎゅーっとされるのが至高なの」
そのまま、ぽやーっとした目で僕の背中に回した手を強く絡める。
「そして……」
――カプッ――
可愛らしい音ともに、首筋に噛みつかれる。
――カプッ――
――カプッ――
――カプッ――
そのまま何度も甘噛みされる。
冷佳は、見た目は凛々しいのだが、甘えん坊なのは子どもの頃から変わらず、抱き着きグセがある。
後、噛み癖もある。
冷佳が言うには、週に10回以上のハグと、毎日10回以上の甘噛をしないとストレスで頭がおかしくなるらしい。
真面目な冷佳が言うのだから、本当なのだろう。
この、少し変わった性癖のせいか、見た目にも性格にも不自由してないはずの冷佳にも恋人はおらず、仕方ないので幼馴染で取り繕う必要のない僕が彼女のストレス発散の相手を務めているわけだ。
他の生徒の目があるので、できれば朝は止めてほしいのだけれど。
……役得とかは思ってない。少ししか。
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