君に降り積もる雪のような悲しみの記憶に僕は触れたくなかった。~可愛い子犬を飼うはずが黒髪清楚な美少女となぜか同棲生活が始まった件~
【特別番外編 プロローグ】 新しいおうち。新しいご主人様!! ※オリザ視点
【特別番外編 プロローグ】 新しいおうち。新しいご主人様!! ※オリザ視点
十二月一日 晴れ。
わん!! 私の名前はオリザ。白いもふもふな耳が可愛いでしょ。自分のなかではお気に入りの部分なんだ。犬種はビションフリーゼっていうんだよ。けっこう珍しい種類なんだって迎えに来てくれた優しそうなおじさんが私に教えてくれた。
これからどこかにお引っ越しするのかな? 住み慣れた場所を離れるのはちょっと寂しいけど。ひとりぼっちになってから心細かったんだ。
なにより大好きなお散歩が出来ないのはつまんない。
新しい飼い主さんはいっぱいお外に連れて行ってくれると嬉しいんだけどな……。
「今日からオリザくんはうちの家族の一員だ。私のことは忘れているかもしれないが、君のお父さんから頼まれたんだ」
……私のお父さん? 優しそうなおじさんの言っている意味がわかんないな。子犬の私にはそんな記憶なんてないから。まあ細かいことはべつにいいや。おじさんが今日から新しい飼い主さんなのかな。
「わん、おじさんが私のご主人様なの?」
「ははっ、勘違いさせてごめんね。新しい飼い主はおじさんじゃないよ。君と同い年の息子が私にはいるんだ。オリザくんの世話を頼もうと思っている。無愛想な奴だけどよろしくね」
「おじさんの息子さん。名前はなんていうの?」
「
「あっ、おじさん、聞いて聞いて!! 私も変な名前なら負けてないよ。オリザってなんか変じゃない?」
「君の名前には意味があるんだよ。親友のあいつと一緒にお酒を飲むと必ず言っていたよ。あっ、これは君のお父さんの話だけどね」
「んんっ!? おじさん、いったいどんな話なの」
「オリザはラテン語で穀物の稲という意味なんだ」
「こくもつのいね?」
「宮沢賢治の小説から君のお父さんは名前の由来をとったらしい。稲穂のようにどんな困難があってもまっすぐに天を突くように伸びてほしいとの願いが込められているんだ」
「ふ~ん、何だか難しいけどそれは食べ物になるのかな?」
「そうだよ稲はお米になる。君の食べるごはんだよ」
「オリザはごはんが大好きだからそれは嬉しいかも!!」
「……君は友人のたったひとりの忘れ形見なんだ。オリザくん」
「んっ、なんでおじさんは急に泣いているの? かなしいことでもあったのかな」
「いや、何でもないよ。さあ!! 急ごう。ここにも誰か来るといけないから。表に車を回してある。荷物はもう積んだから」
「嬉しいな!! オリザ、お出かけ大好きだから……」
「うちに到着したら少し眠るといい、オリザくんの住む部屋は用意してあるから」
「お部屋は広い、おもちゃもあるかな?」
「まあまあ広いかな。君の遊ぶおもちゃはまだないけどね」
「大丈夫、オリザ、新しいおうちでもおりこうさんにするから!!」
新しいおうちに新しいご主人様!! どうしよう……わくわくが止まらないよ。ご主人様の顔を見たら最初に相手のお鼻をぺろぺろしちゃうかもしれない。
だってそれがオリザの大好きっていうあいさつのしるしだから……。
はやく新しいご主人様に会いたいな。わん♡
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