第六話 村作り始めました。

 夢を見ていた。

 虐められた光景を。

 殴られて、蹴られて。

 でも、不思議と体は痛くなかった。

 ペットとじゃれ合っているようで、心も全然苦しくない。


 変われたんだ。俺はすげえ奴なんだ。


 そう喜ぶと場面が変わる。


 見たこともない焼け野原に俺だけが居た。

 周りには死体の山が大量にある。

 そしてその死体の顔を覗くと全て俺だという事に気が付いた。


 は?


 刹那、死体の山に火が放たれる。

 熱い、熱い熱い熱い。

 体がどんどんと焼けていく。

 俺の体が焼けている。


 熱い熱い熱い熱い熱い———


「———ってアッツ!! いやアッツ!」

「チッ、何だ。まだ生きてるの」


 夢から覚めると、木で作られた十字架に磔にされダイヤに燃やされていた。

 変な夢を見たのはこいつのせいか。

 おかげで目覚めが最悪過ぎる。


「それで、私の体はよかったかしら?」

「何の事だ」

「惚けないで。無防備な私の隣で寝ていたくせに」


 そう言われ睨まれるが、決してそんな事はしていない。

 いやしようとは思ったが.........。

 取り敢えずダイヤ、火力を上げるのはやめてくれ。

 俺の、クロム様の服が限界そうだ。


「まあいいわ。お喋りはこのぐらいとして、そろそろ本題に入りましょう」

「本題?」


 未だ足元でバチバチと火花が散る中、ダイヤが真剣な眼差しで口を開いた。

 どうやらまだ解放してくれないらしい。


「あんた」

「アオバでいい」

「カス野郎は自分がした事を分かってる?」


 うんストレートな悪口。

 これならあんたのままが一番よかった。


「俺のした事?」

「そうよ」

「なんかまずい事しちゃった?」

「まずいかどうかは知らないわ。軽く全世界に宣戦布告した程度よ」


 ............それかなりやばくないか?

 チンピラ一人殺ったぐらいで大袈裟過ぎるだろ。


「とにかく、アオバの存在が世界中に知られたのは間違いないわ。これから色々な勢力が———ってどうしたの?」


 色々な展開があり過ぎて唖然としてる俺を不思議に思ったのか、ダイヤが顔を覗いてくる。

 うん、かわい———じゃない。


「いや.........」

「?」

「今、アオバって」

「自害するわ」



 ◽️◆◽️◆◽️◆



 必死でダイヤの自殺を止めて、色々と教えて貰った。


 まず何故全世界に宣戦布告をした事になったのか。

 大まかに分けた二つの理由がある。

 一つ目が魔法を使ったという事。

 そのせいで世界中にある魔法探知の結界に引っかかって、俺ことクロム様の復活がバレた。

 これだけだったらみんなビビって手を出さないらしいが、あのビームを放った事が二つ目の理由。

 やっぱりやり過ぎだったらしく、あれが世界の端っこぐらいまで吹っ飛んだ。

 魔王から放たれた滅びの一撃が世界中に! となるとそりぁ宣戦布告と捉えられても仕方がない。


 かなりまずいのは変わらないが、ダイヤ曰くあんまりそうでもないらしい。

 どうしてなのか尋ねると、


「クロム様は強過ぎるから、まともに戦える相手はまずいない。人間達もそれを分かっているからこそ、よっぽど武力に自信のある国以外は攻めてこないわ」

「つまり来るのは精鋭ばかりでは?」

「勿論そうよ」


 結局かなりまずい状況だった。


「あとは他の魔王が攻めてくる程度よ」


 もっとまずい状況になった。


「その自信はどこから来るんだよ」

「クロム様ね」


 即答されたが、そのクロム様も一度倒された身なんだがな。


「なんか策はないのか? 争わない方法とかさ」

「無理ね、貴方が蒔いた種ですもの」


 なるほど反論できない。


 となるとだ。

 俺は今後、二対大勢で精鋭達を相手にしないといけないのか?

 流石のクロム様でもキツ過ぎる。

 てか俺が無理だ。


「なあ、せめて俺達もある程度の数用意できないのか? クロム様も今まで一人で戦ってきた訳じゃないだろ?」

「ええそうよ。昔はクロノワ王国と言って、ここら一帯にクロム様の統べる国があったわ」

「じゃあそれ———」

「百五十年程前になくなったけどね」


 悲しそうな表情をして上を見るダイヤ。

 しまった、変な事を聞いたな。


「懐かしいわね」


 ポツリとダイヤが呟いた。


 さてどうしたものか。

 魔王として、そして今後攻めてくるであろう奴らとの戦闘準備として、ある程度の武力は欲しい。

 戦闘は俺が全面的にやるとしても、サポートだったり武器を作る場所は作っておきたい。

 しかしだ。

 俺に国が作れるのか?

 テクノブレイクで死んだ男だぞ?

 俺ならこんな奴には付いて行きたくない。


 だとしても考えろ俺。

 俺は魔王として変わるんだ。

 あの中学生も言っていただろ。

 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。


 そうだ。


「ダイヤ、お前賢いか?」

「急に何をってそうね、貴方の百億倍は賢い自信があるわ」

「よし分かった。ダイヤ」

「何?」

「国——いや村を作ろう」


 そう俺が言うとダイヤは顔面蒼白になり、服の上から自身の胸を隠すようにして距離を取った。

 何してんのこいつ?


「私に産めと? 気持ち悪いわ死んで頂戴」

「お前がキモいわアホ」


 取り敢えず思い切りチョップしといた。

 

 ああ不安だ。

 変態と思い込みが変態な奴が村を作るのか?


 ごめん。まだ皆村人達よ。

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