第二話 復活した魔王と落ちこぼれ魔王 その2

 剣と魔法の世界。

 まるで空想のような世界に、俺は転生した。

 魔王として、クロム=クロシュバルツとして。


「うわ、めっちゃ本あんじゃん」


 俺の城(クロム様のやつ)を徘徊した結果、かなり大きな図書館を見つけた。

 中には本が数え切れない程ある。多分十万は超えてるな。

 きっとクロム様は読書家だったのだろう。

 でなければこんな数は集められない。


「取り敢えず適当な本をって———」


 おいおい。全部埃まみれじゃないか。

 ペラペラと適当にページを捲るが、所々が虫に食われている。


 そう言えば、思い返してみるとこの城全体もかなり埃まみれというか、殆ど廃墟みたい感じだった。

 天井は蜘蛛の巣だらけで、窓も全てが割られていた。

 魔王の城なのにボロっちい。


「でも、俺が最初に居たあの部屋は綺麗だったんだよな」


 なんだかよく分からんが、取り敢えず今は目の前の本たちだ。


「軽く十冊ぐらい読むか」


 そんな訳で、適当な本を選んで読み出した。

 分厚いし、なんだか難しそうだが、前世でラノベばっか読んでいた俺からすればどうて事ない。

 時間はいっぱいある訳だから、のらりくらりとゆっくり読むとしよう。



 ◽️◆◽️◆◽️◆



 分かった事をまとめていこう。


 まず一つ、この世界は人間の住む人間界と、魔物が住む魔界で分かれている。

 境目はなんか大きな森。興味ないから名前は調べていない。

 そして人間界と魔界は仲が悪く、よく争っているとか。

 まあ、色々と事情があるんだってさ。


 そして二つ、異世界と言えばこれ、魔法について。

 人間だろうが魔物だろうが、生まれつきに一定量の魔力を有している。

 それを元に体内で作られたり、辺りに漂う魔力を使ったりして放たれるのが魔法。

 大きな力を持つ魔法は、それに伴った詠唱が必要となる。

 つまりは日常で使うような魔法は無詠唱で使える訳だ。

 魔法のレベルによって消費する魔力の量は異なり、自身の保有する魔力のキャパを超えると魔法使えないし、体中が重くなるようなダルさに襲われると本には書いてあった。


 まあ大体こんなもんか。


「さてと、他の場所に行くか。ってあれ?」


 読み終えた本を全て棚に戻し、図書館を去ろうとした時だ。

 奥の奥の方にある大きな棚に、一冊だけ本が置かれていた。

 見た目は他のと何ら変わりないのに、何故かその本に目が入ってしまう。


 近寄って、手に取って適当なページを開く。

 なんだかかなり読み込まれた跡が見られるが、さてさて内容は...........


「禁忌、死者蘇生の魔法について?」


 死者蘇生の魔法って、たしかダイヤがクロム様を甦らそうと発動させた魔法だよな。

 つまりこの読み込まれた跡はダイヤのものか。


「復活にはかなりの魔力を必要とし、発動までに短くて数十年、長いと数百年を超えると言われている」


 いやすご。

 ダイヤはこんな魔法を発動させた訳か。

 彼女も多分、数十年は掛けたのかもしれない。

 その結果が俺か。


 なんだか申し訳ないというか、そりゃああんなに殺しに来るか。

 後で会ったら土下座しよう。


 そうして、俺が本を元に戻そうとした時だ。


 ドーン!!


「なんだ!?」


 突如として城中に響く大きな爆破音。

 音の大きさ的にそんなに遠くない所からした。


 これ、俺行かなきゃか?

 正直行きたくないし怖くて動けない。


 でも、今の俺は魔王クロム=クロシュバルツだ。


 ダイヤの努力のおかげで今の俺がある。

 彼女に対して申し訳ないという気持ちも、感謝もある。

 それら感情を思えるのもダイヤのおかげ。

 ならば少しでも失望させないために、魔王として、クロム様としての責務を果たさなければ。


「.........んでもやっぱり怖い!」

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