第9話『スラム街の悪ガキ、無双の後新手と出会う』
屋根伝いに街を駆け抜けるユーリとイヴ。周囲は突然現れた使徒によって大パニックだ。
蜘蛛の子を散らす様にして戦えない住民達が逃げているが……酷い有様だった。
「うわぁああああああ! 助けてぇええええ!」
「どけよお前! 逃げられないだろ!」
「ちょっと押さないでよ!」
「てめぇスラム街の人間か? こっちに来るなよ!」
「うわああああん! ママァ〜!!」
人が人を押し退けようとして転倒事故が起きたり、倒れた人に躓いて喧嘩になったり、都に逃げようとしてこっちに来るなと暴力沙汰が起きたり──はっきり言って醜い光景だった。
それでもイヴとユーリに彼らを助けないという選択肢は無かった。
二人は顔を見合わせて頷くと、イヴは使徒に向かってさらに加速し、ユーリは立ち止まって大きく息を吸って叫んだ。
「みなさん!! 落ち着いてください! 私はGUARDの
彼女の大声に民衆の意識が彼女に向く。しかしこの間にもエリア外の
他のGUARDの
近くの使徒はイヴが倒してくれるが、それ以外の場所には手が届かない。ならば此処に居る住民達の守護、避難誘導を迅速に済ませて使徒の制圧に移らなければならない。
(すぐに行きます。イヴ)
ユーリは混乱がまだ続く民衆を誘導をする為に、再び声を張り上げた。
「アレは……オークとミノタウロス!」
『また捕縛タイプか。一先ず様子見と言ったところか』
ユーリを置いて使徒の撃破を請け負ったイヴの眼前には、暴れ続ける使徒たちが居た。
視界に映る範囲では捕縛タイプの2種の使徒が合計10体。他の区域でも
『むっ。流石に三度目となると早いな。他の
「そうか。だったらこいつ等は……!」
『小僧、貴様の仕事だ』
魔王の言葉に一先ずの安心をしたイヴは、跳躍して一気に使徒の頭上に位置取る。相手はまだ気づいていない。
ギシッと拳を握り締めるとそのまま重力に従い落下し、魔力を限界まで込めた状態で振り下ろした。
再生を許すつもりはない。初めから
弱所を突かれたミノタウロスは自分が何故死ぬのか理解できずに、そのまま魔力となって消えた。
『ブモォ!?』
『ブヒィ!?』
仲間をヤられて流石に気付いたのだろう。驚きながら振り返ったオークとミノタウロスは、イヴの存在を知覚するとそれぞれの得物を手に咆哮を上げながら襲い掛かって来た。
しかし、初戦時のイヴと今のイヴはもはや別人だ。
戦闘タイプのキャスパリーグとの戦闘を経験した彼にとって、捕縛タイプのオークやミノタウロスはもはや敵ではない。
まるで止まって見えるかの様に棍棒や石の剣を避けて、そのまま突っ込み喉太に拳を突き刺す。
『──■■■■■!?!?』
声にならない悲鳴を上げ呼吸ができなくなり苦しみ悶えるのを無視し、足に力を入れて──全身で貫いた。
もし相手が血の通った獣なら、今頃イヴは全身血濡れだろう。
『ブ、ブヒ……』
ミノタウロスは正面から首を貫いて
「……後、8匹」
しかし、イヴは一匹たりとも逃がすつもりはない。
次に狙ったのは当然近くに居たオークだ。ひと跳びでオークの顔面に着地したイヴは、両腕を突き出して眼球に穴を空ける。
『ブヒィィィイイヤッ!!!』
「……」
溜まらずオークは悲鳴を上げて目を抑えるが、イヴはそれを冷たい目で見据えながら無防備となった首裏の
その次は再びオーク。駆けて、跳んで、通りすがりに耳を掴んで力任せに引き千切る。
『プギャアアア──』
「うるせぇな」
『──アア!?!?』
するとオークは痛みに悶えてその場に跪いてしまうが、すぐにその後頭部を踏み付けられて顔面を地面に陥没させる。
『ブ、ブモオオオオ!!』
近くに居たミノタウロスは咆哮を上げてイヴに向かって棍棒を振り下ろし、彼はそれをトンっと跳んで避ける。するとどうなるか?
ミノタウロスの棍棒はオークの頭を叩き潰し、そのまま
『ブ、ブモ……!?』
ミノタウロスは同族を殺めてしまったショックに動揺し、
「──何一丁前に悲しんでんだ使徒風情が」
イヴの苛立ちの声に反応してそちらを見た瞬間、跳躍したイヴに顎を掴まれて……そのまま頭を胴体から引き千切られた。
しかしこのままでは
『……』
「──まだだ」
ギラリと目を赤く苛烈に輝かせたイヴはその後も狩りを続けて──数分後、そこにミノタウロスとオークの姿は無かった。
『随分と遊んで殺すんだな』
「……」
『いや、これも貴様の復讐か』
「気に入らないのか?」
『下らんと思っている』
魔王の言葉にイヴは舌打ちをして──まだ閉じない
何も無いのならこの場を去って次の戦場に向かいたい。
しかしこの魔力の反応から後続の使徒が来る事は明らかであった。そして先ほどのイヴの戦闘を敵が見ていたのなら、恐らく次に来るのは──。
「イヴ!」
「ユーリ。避難誘導は終わったのか」
「はい。遅れてしまい申し訳ありません」
「いや……良いタイミングだ」
そのイヴの言葉が合図と言わんばかりに、
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