第127話 大厄災【八龍の宴】         三龍VS勇者 東京湾岸大決戦

 あぁもう最悪である。


 最悪を想定し、その最悪通りになるのが最悪である。


 東京湾に入ってすぐ、何か一悶着していそうだったが、葛西臨海公園方面からレインボーブリッジ方向に切り替えたようだ。


 東京湾に侵入する前に、大魔弓弐式を20発お見舞いしたのだが、地龍に完封された。

 もちろん雷龍にも発射したが、全部避けられた。やっぱ遠かったよ。


 文雄を通じ、日本政府から何度も要請をされる。


 日本の領海に侵入する前に仕留めろと。


 それが出来れば苦労はしない。


 まぁこれが【大厄災】であると地球世界の人々にしっかり理解していただきましょう。


 どうすることもできないが、批判は甘んじて受けよう。


 もちろん、全部終わって僕が生きていればの話だ。


 地龍が動く。


 水龍の背から突然飛んだ。

 反動で水龍が東京湾に沈み込む。


 羽田空港の海に飛び出たD滑走路へと着地する。


 そして2足歩行で立ち上がる姿は……もう大怪獣のソレである。


 海面から顔を出した水龍は、少し戻って葛西臨海公園方面に移動しようとする。


 雷龍は高度を下げ、汐留に向かおうとしていた。


 もちろん、これ以上の侵攻は許さない。


 3手に別れた今が好機。


「行くぞ! 龍達! 【大魔弓きゅう式・インビジブル】……解除ぉ!」


 僕はインビジブルで透明化していた全ての大魔弓を出現させる。


 東京湾岸上空に、これだけ仕込んだ。


 弐式200発、肆式100発、伍式300発、陸式500発、漆式200発、捌式50発。


 2時間だとこれが限界だ。


 勇者覚醒の実の貯蔵量もかなり減った。


 僕が戦う分も残しておかなければならない。


 それでも、龍相手に出し惜しみはしない!


「これが、第十勇者の本気だ! 受けてみろ!」


 そして一斉に発射する。


 雷龍は高速飛行で逃げ惑う。


 地龍は障壁を張った上で、甲羅に閉じ籠もる。


 水龍は海水に潜り、さらに障壁を張って耐える。


 僕はその間に【ゲート】で動ける勇者を全員呼ぶ。


「アカネはリーダー! 【勇者の子】は水龍を押し留めろ! 絶対に上陸させるな!」


「父様、任せてくれ! 行くぞ、みんな!」

「父よ! 行ってきます!」

「ふふん。倒しても構わないだろう!?」

「リオ、それはフラグだよ。父よ、行ってきます」

「父さん、みんなでやっつけてくる」


 マリ、フウカの話聞いてた?

 まぁ良いや。僕がフラグを圧し折りに行こう。


「アラン、みんな、雷龍を任せるぞ!」


「任せてくれ、ノリオミ」

「はぁ〜、このメンツでやるのね」

「しかもヒカリ無しだぜ?」

「ボスの命令だ、やるしかない」

「ボクはノアール様と一緒なら!」

「ヒカリの代わり……できるかしらぁ?」

「ボスにこれだけお膳立てされていて……負ける訳にはいかんだろう」

「ねぇねぇ、私国会議員で総務大臣なんだけど!?」


 第一勇者から第八勇者。このみんなが雷龍に挑む。

 ヒカリちゃんはいない。ノースォーラにいるらしい。

 行ったことがないので【ゲート】が開けないのだ。

 無理なものは無理なので諦める。

 瑠花もサウスバーンにいるらしいし。


 ともかく動ける者に指示を出す。


「攻撃を止めるな。それだけで良い。あとは僕が何とかする!」


 みんなを【ゲート】で送る。


 雷龍はまだ頑張って逃げていた。


 僕はウサランスを持って飛ぶ。


「そろそろ、止まれぇ!」


 ウサランスを叩きつけ、雷龍を叩き落とした。


「あとはみんな、任せたよ!」


 地龍のいる羽田空港の滑走路へと飛んだ。


 僕は降り立つ。


 このガッチガチの地龍、その甲羅の上に。


 そしてウサランスを突き立てる。


「行くぞ、ウサランス! 【風魔法:回】【土魔法:回】【雷魔法:回】【錬金術:回】」


 僕が何を言っているか分からないだろう。


 ウサランスを回転させるためだけの魔法だ。


 ウサランスを超高速回転させるとどうなる?


 そう、超高速ドリルだ。


「オトコの浪漫を見せてやる! 一点集中! 金剛眼の不砕龍ダイヤモンド アイズ アダマンタイト ドラゴン! 不砕の名前は、今日で終わりだぁ!」


 ウサランスは、僅かではあるが、確実に甲羅の掘削を開始した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る