〜Side【勇者の子】VS【水龍】〜
ーーー アカネ・フォン・レイヴァーン ーーー
私達は水龍を相手することになった。
「不謹慎な話だけど、この5人揃って【勇者】として動くのは初めてで……ちょっと楽しみ」
レオの発言は不謹慎極まりない。
友好国の危機なのに、そんなことを思うなんて……とは言えない。
私も頬が弛んでいるからだ。
「父に頼られた。これ程嬉しいことがあるか。レオ、オレはやるぞ。リオ・ユーアインは水龍を倒す!」
拳を握り、前に出すリオ。気持ちは分かる。
パナマ運河では役に立てなかった。
ここでなら、役に立つということだ。
史上最高の勇者である父様に頼られる。
期待以上のことをやってみせたいと思うのは至極当然の事だろう。
「やる気があるのは良いこと。でも考えてほしいの。水龍はまだ海上にいる。父は海上にいる水龍を相手にさせないため、太平洋上では私達に戦わせなかった。それをここで……なぜか分からない」
フウカの言う事は尤もだ。
なぜ父様はまだ海上にいる水龍を相手にさせるのか?
それも絶対に上陸させるなと言う。
水龍を上陸させれば弱るのにだ。
「……いや、父さん……ウソだ……え? 私達……いる?」
マリが何かに気付いたらしい。
「マリ、気付いたことがあるなら言ってほしい」
マリは父様から未だに爆撃されている水龍を指差す。
特に何も違いが……んん!?
海水が……引いている? 引き潮というレベルではない。
瞬く間に東京湾から……海水が消えた……。
水龍も爆撃を凌ぎながら驚いているように見える。
所々水溜まりは見えるが、干上がった……なぜ?
高く飛行したフウカが叫んだ。
「父の仕業だ! 【大魔弓伍式】が東京湾から海水を追い出した!」
開いた口が塞がらないとはこのことか。
水龍は障壁として利用していた海水が消失し、父様の爆撃をモロに受ける。
特に【大魔弓肆式・朱雀門〘灰〙】のダメージが大きそうだ。
一撃喰らう度に燃え上がっている。
耐える水龍も水龍だが、父様の火力もどうなっているのだ……。
勇者として、頭3つも4つも抜きん出ているぞ?
だが、そんな父様も1人では三龍に敵わないと知った。
父様にも敵わぬモノがあると知り、悲しくなった。
それと同時に、今、歓喜している。
勇者として、皆で龍を倒す。
父様にこれだけのお膳立てをされているが、それでも皆で力を合わせることができる機会など滅多と無い。
「感謝する。【
父様の攻撃を全て身に受け、それでも尚、露わになった海底を這い、進み来る水龍。
その目は、全く死んでいないのだ。
ならば全力で相手するのみ!
ーーーーーー マリ・モードレイズ ーーーーーー
……父さんの爆撃で弱ったんじゃなかったの?
「フウカ! マリ! 三点連撃!」
アカネの掛け声に合わせて、頭、首、心臓部を魔法剣で斬りつける。
斬るというよりは、叩きつける。
斬れないことは分かっているから。
打撃のつもりで叩き込む。
水龍は口を開けて高圧水攻撃を行おうとする。
「させん! レオ! 行くぞ!」
リオが水龍の頭の下から拳を叩き込む。
そこに水龍の直上からレオの魔法が発動した。
「【
火の球体に閉じ込められる水龍。
でも、すぐに水が溢れるように割られ抜け出してくる。
それだけじゃない。
水龍の周りに浮かぶ水玉から障壁を軽々と貫通する水矢を連続で発射される。
避けて弾いても当たる。
致命傷だけは避けて、攻撃が止まったらすぐに回復する。
水が無いのに、水龍を倒せない。何とか抑えられているようにも見えるけれど、実のところ水龍の邪魔をしているだけ。
上陸されるのも時間の問題。
情けないと言えばそれまでだけど、水龍単独で強過ぎる。
それでも、私は諦めない。
父さんが諦めていないのなら、私だって、諦めるわけにはいかないよ。
次の瞬間、私の左腕が飛ばされた。
アカネの両膝から下も、高水圧砲に切り飛ばされていた。
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