第124話 大厄災【八龍の宴】         三龍、地球へ降り立つ

 ベアにリッヒヴァルド帝国での出来事を報告し終えた翌朝。


 緊急警報が大音量で鳴らされる。


『ノリ・ブラックシート! 今すぐ来い! 【八龍の宴】三龍が動き出した!』


 なにそれやばい。


 僕は飛び起き、寝間着のまま【ゲート】でベアのいる謁見の間に出る。


「ノリよ……せめて服は着替えてから……」

「今すぐ来いって言ったのベアじゃん!? 着替えながら話を聞くから! 三龍ってどれ!? どこで動いてるって!?」


 メリルちゃんもいるけど、気にしている場合ではない。あ、手で目を隠してくれた。


「内訳は【水龍】【雷龍】【地龍】だ。…………。ケラン女王、レガル王、首領ドンボナより直々に連絡を受けた」


 僕がシャツに腕を通しているところで止まらなくても良いのでは?

 ズボンも履き替える。


「…………」

「ベア?」

「ん!? あぁ、どこで動いているかまでは分からん。速報を受けたのだ。地下に行くぞ」


 僕が着替え終えたところで、ベアを抱っこし、メリルちゃんを背負って地下へと向かう。


 そこには、第十連合の面々がモニター越しに揃っていた。


「お待たせしました。現状は?」


 僕はケラン女王、レガル王、首領ボナに問う。


 でも、誰も口を開こうとしない? なんで?


 メリルちゃんが声を震わせて僕に耳打ちしてきた。ベアも耳を寄せてくる。


「見失った……とのことですわ……」


 はぁ?


 あんなデカいのを見失う?


 …………。いや待て。うっそだろ?


「亀裂……いや、【異界の門】を通りやがった!?」


 僕が叫ぶと、全員の冷や汗が噴き出した。


 つまりだ。


「地球に……行ってるってことだよね!? ちょっと行ってきます! が! こっちの勇者全員待機させといて! 僕も向こうの勇者全員と、全戦力を待機させますから!」


 僕は【ゲート】で西ギルドに移動し、門からクロス・ベル本部へ乗り込む。


 そこには、腰を抜かすリリカちゃんとエイラ、頭を抱える文雄と現実感の無い顔をしているレンとヒナ、あとは顔が真っ青の勇者達がいた。

 辞めたはずのベックやノアール、勇者の島で働くエリスもいた。


「ヴァレー! リェン! 状況は!?」


 僕は一番落ち着いていそうな2人に後ろから叫ぶ。


 全員ビクッと反応したが、明らかにホッとした顔になった。


「大西洋、バミューダ諸島近海に【水龍】【雷龍】【地龍】が同時に現れた。NATOがフリゲート艦による艦砲射撃、爆撃機による攻撃を行ったが、効果無し。たった今の出来事だ」


「地球側の被害は!?」


「今のところ無いようだぞ? 三龍共に、何か相談しているのか、全く動こうとしない」


 え? 龍達仲良しなの?


 水龍は巨大なネッシーみたいな見た目。

 雷龍はトゲトゲしい見た目で両肩にコブを乗せた白い大鳥。

 地龍は……どう見ても亀である。立派な甲羅だ。ねぇねぇ、君、龍じゃないの?


 というか、なんで三体揃ってんの?


「マズい……やばい……どうしよう……」


 僕の漏れ出た言葉に、みんな揃って嘘でしょ? みたいな顔をしてくる。


 この際だ。言ってやろう。


「僕は攻撃力に全振り型の勇者だ。守りの全てを捨てている。龍一体は倒せる。三体は僕でも自信が無い」


 ベックは言った。


「じゃあ俺達で一匹ずつ引き剥がすしかねぇじゃん。アランも呼ぶんだろ? 風龍以来か……」


 苦々しい顔をしている。

 風龍戦に良い思い出が無いからだろう。

 僕も気持ちは一緒だ。


「ちょっと近付いて遠距離爆撃してみようか……」


 そしてテレビの画面が突然引きの画になる。


 しばらくして、閃光一色に染まった。


 テレビは言う。


『あ、アメリカが核兵器を使用しましたぁ!』


 キノコ雲。黒い雨。


 平和学習で学んだ景色が、目の前にあった。


 みんな、黙って見守る。


 数分後、ソレは出てきた。


『龍は、龍は無傷! ダメージ無し! ああ! これが……本物の龍!?』


 障壁を張ったのは【地龍】だな。


「……ちょっと引き付けてくる」


 僕は【ゲート】でアメリカのフロリダへ行った。


 飛行し、大西洋へ。


 黒い雨は浴びたくないので、100km以上離れる。


「文雄! そっちの状況教えて! まだ動いてない!?」


 僕はインカムで文雄に叫んだ。


『ああ! 動いてねぇ!』


 じゃあまずは挨拶代わりに【大魔弓壱式・アルテミス】を放つ。


 次の用意をしつつ、文雄に状況を報告させる。


『光の矢が8本! これノリの技か!? ちょくげ……いや、弾いた! 三龍とも微動だにしてねぇ!』


 障壁すら張らないだと?


「文雄、次行くよ! 【大魔弓弐式・サジタリウス】」


 大弓を3つ用意した。

 これらを同時に射出する。


『命中だ! 直撃! さすがノリだぜぇ! ……ウッソだろぉ!?』


 …………。


 僕の最大火力が通じないの?


 どゆこと?


『ノリ! 【雷龍】がそっちに――』


 僕は即座にウサランスを構え、【雷龍】の突進攻撃と真正面からぶつかり合った。

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