第115話 西ギルド出張所

 僕の用意した作戦が華麗に決まり、日本のクロス・ベル本部とウェスタリア西ギルドを繋ぐことに見事成功した。

 

 エイラが僕の胸に飛び込んできたことをみんなしてイジってあげる中、今まで全く絡みの無かったレオとリオの頭が僕の前に差し出される。


「母やエイラばかりズルいです。ボクも【第十三勇者】として頑張っています。父よ、ボクにもこれくらいの褒美があっても良いと思うのですが」


「レオの言う通り……いや、もっとハッキリ言ってやる。母達だけでなく、我らにも構え」


 そう言って、灰髪と橙髪を揺らしてくる……。


 ナニこの可愛いワンコ……いや生命体。


 美人系美少女とでも言うべきか。


 美人なんだけど、身長が低めなせいで幼く見える。


 娘達と言えど、あんまり頭を撫で回すのもなぁ……。


「へぅ……やっぱりボク達が。男だからですか?」

「生涯会えないと思っていた父と再会できた。我らとも遊べ」

「オトコのコ……だと……? いやこんな可愛い子が男の子な訳……ハッ……」


 僕は思わず口を叩くように塞いだ。


 ウェスタリア組から白い目線で見られる。


 文雄は血眼だし、レンやヒナは目が点なのに、僕だけにその視線が浴びせられる。


 当の本人達は、顔を上げて首を傾げるだけなのが幸いだ。


 メリルちゃんから耳打ちされる。


「二人とも立派なハーフエルフ男児ですわ。だからこそミルフレイア崇樹国と余計拗れたのです」


 そりゃ王位継承権を放棄しても火種が燻り続ける訳だよ。


 エルフの子が勇者で男児。


 確か他種族で勇者って滅多といなかったよな?


 そりゃ付き人の子でも担がれるって。


「レオ、リオ、よく頑張ったな」


 僕はエイラを胸にしまったまま、レオとリオの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。


「むふー。もっと褒めてもらえるよう頑張ります!」

「ふふん、まぁ勇者だからな。父程ではないが、精進してやる」


 でもこの子たちは15歳だったよな?


 やけに子供っぽい……いや待て僕が15歳の頃を思い出してみろ。


 何も考えずに友達とゲームやって遊んでを繰り返していた餓鬼んちょだったはずだ。


 それを思えば十分過ぎるくらい立派である。


 そこにリリカちゃんが首を傾げながらやって来た。


「エイラ、スズやカノンさんはどうしたの? ここに待機じゃなかった?」


 文雄を待つ間に、リリカちゃんから西ギルド出張所にはスズも常勤で配置されることになっている。

 職員ではなく冒険者枠で。


 カノンさんは非常勤だ。ウェスタリアではもう医者としての地位を確立しているらしいからね。


「それが……その……」


 エイラは僕をチラチラと見る。

 何か言いにくいことでもあるのかな?


「スズもカノンさんも、ついでにマリも……ラビが行方不明になっちゃって……」


 は?


「ラビ……まだ生きてたの?」


 みんなからの目線が冷たくなる。

 いや、待って待って。


「ホーンラビットの寿命が5年くらいってエイラが言ったんじゃん」


「そ……そんなこと言ったかしら?」


 声が上擦っている。覚えがあるというか、思い出したな?

 リリカちゃんが溜息を吐きながらフォローしてくれた。


「むしろ5年過ぎたくらいからもっとツヤツヤになったんですよ? 私達と出会った時、アレでまだ1歳にもなっていなかったようです」


「なんだってー!?」


「ボス種はどうも寿命10倍らしいですよ。私達、頑張って調べましたから。えっへん」


 胸を張るリリカちゃん。

 ナニがとは言わないがぽよんぽよん。


 いや待て余計なことは考えるなここには文雄とメリルちゃんがいるのだから。


「ということは、ラビの寿命は50年……。そのラビが失踪したと。いつから?」


 …………。みんな黙った。


 ということはだ。それくらい僕にも推察できる。


「スズが死んでからだね」


「スズを看取った時には居たのよ。私とリリカ、それにマスターもその場には居たわ。でも、そこから先は分からなくて……」


 その時だった。


「ノリくぅん!? いたぁ!」


 スズが西ギルドの裏庭にやってきて、僕を見つけるなり飛び込んで来た。


「ぐぇえっ」


 エイラが僕とスズの間に挟まれている。


「ラビが! ラビからの手紙が来たよぉ!」


 スズが僕の眼の前に手紙を突き出す。

 近過ぎて見えない。


「スズ! 待ちな……さい! ノリ、様……」

「母さん、待っ……。あ、父さん……」


 どうやらカノンさんとマリもやって来たようだ。


 せっかく西ギルド出張所のメンバーが揃ったのだ。


「スズ、カノンさん、マリ。まずは挨拶だ。ラビのことはそのすぐ後!」


 僕はその場を仕切り、文雄達と顔合せ的な挨拶をさせ、改めてラビからの手紙の封を切った。

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