運命の出逢い

 とうとうこの時が来た――光り輝く魔法陣を前に僕は期待に胸を高鳴らせ、願いに沿った完璧なお姉さんが姿を見せる瞬間を、いまかいまかと待ち構えていた。


 待っている間も他人には見せられない酷い顔で鼻の下を伸ばしながら、幾通りもの理想のお姉さん像を思い浮かべて待っている。


 ――そうだ。僕を散々扱き下ろしてくれた幼馴染に、お姉さんのことを紹介したらアイツのことだから、きっと本気で悔しがるに違いない。


 僕のことを現実と虚構の区別もつかないノータリンのスカポンタンだと散々馬鹿にしているアイツが、顔を真っ赤に染める光景を思い浮かべているだけで溜飲りゅういんが下がるというもの――。


 ぐふふ。またしても薄気味悪い声を出して待っていると、とうとう眼の前に憧れのお姉さんが妖艶な姿を現し――あるぇ?


「うわ……随分とイカ臭い部屋ですね。さすが童貞を拗らせた男子学生の部屋というところですか」

「あの、あれ? 僕は確か……〝小悪魔なお姉さん〟を所望したはずなんだけど……」


 光が消えた魔法陣の中心に立っていたのは――どの角度から見ても〝ちんちくりんの子供ガキ〟だった。


「む。人のことをちんちくりん呼ばわりするとは失礼な人間ですね。貴方の股間もちんちくりんでしょうが」

「出会い頭に股間デリケートゾーンいじってくるのやめてくんない? じゃなくて! 君はいったい何処から僕の部屋に入ってきたんだい?」


 見紛うことなきガキ。それも小学一年生の甥っ子と同じくらいの背丈で、頭には控え目なサイズの小さな角が生えている。


 背中には慎ましやかな羽根まで生えていて、パタパタと動いているではないか。

 なんなんだこの生き物は。


「そちらから呼び出しといて酷い言い草ですね。何処からと呼ばれても、貴方の願いを聞き入れて地獄から馳せ参じただけですよ」

「……もしかして、君が小悪魔なお姉さんってオチ?」

「そうです。私が小悪魔なお姉さんです」

「ズコーッ」


 思わず昭和味あふれるズッコケをかましてしまうほど、眼の前のガキは理想の対極にあった。胸部というにはあまりに心もとない平らな胸を精一杯反らして、自慢気に語った。


「ハハ……そうか。これはきっと夢なんだ。白昼夢に違いない。だってさ、『何でも言うことを聞いてくれて甘やかしてくれる、だけど大人の色香が満載で時々虐めてくる、包容力抜群の小悪魔なお姉さんを召喚してくださいッ!!』ってほとばしるリビドーを伝えたはずなのに、大金叩いてこれじゃあ、ぼかぁあんまりじゃないか……」

「長々と語ってもらって申し訳ないですが、そもそもそんなおめでたい人間が存在するはずがないじゃないですか。現実と虚構の違いもわからないなんて可哀想ですね」

「いや、魔法陣から召喚された君がそんな事言う?」

 

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