第3話顔合わせ

「傭兵団に所属することになった。」


エリス・フォンライトは、自分のダート・アーマーの元に帰ってきて開口一番に言った。


「・・・へ?」


アグネス・カータレットは、鳩が豆鉄砲を食ったように啞然としてしまった。


「いや・・・その・・・ええ?」


「だから戦乙女ヴァルキリーズって言う傭兵団に所属することになった。」


アグネス・カータレットは落ち着いて一つの疑問を投げかけた。


「でも・・・フォンは、今の生活を変えたくないとか何とかで前に騎士になれるのを蹴ったんでしょ。傭兵団も同じようなものじゃない?」


エリス・フォンライトは即答した。


「嫌でもその生活を変えなくちゃ、生きていけなくなったってこと。そして・・・可愛いカータちゃんを養う為にもね。」


アグネス・カータレットはまた啞然とした後に、エリス・フォンライトの顔を見てみるとリンゴみたいな顔色をしてどこかボケっとしていることに気が付いた。


「・・・あーしに、ボロボロのダート・アーマーの整備をさせて一人でお酒を飲んでたなんて・・」


エリス・フォンライトは、慌てながら答えた。


「違う!今日の戦場で、お世話になった人達にお礼しに行ったらたまたま酒場だったから飲んだだけで・・・」


「飲んでんじゃ~ん。」


「あーいや・・・その・・・ごめんなさい。」


アグネス・カータレットは、少し驚いた。普段なら謝らなさそうなエリス・フォンライトが謝った。


「いや、別に怒ってる訳じゃない、あーしよりもよっぽどフォンの方が、いつ死ぬかもわからない危険なことしてるんだから、全然いいよ。けど・・・」


「けど・・?」


「出来れば、フォンと一緒に飲みたかったなーって。それだけだよ。」


お酒を飲んでいないはずなのにアグネス・カータレットの耳が少し赤くなって身体がポカポカし始めた。


「さあ!明日のために頑張って整備を進めていきますか!」


アグネス・カータレットは、まるで何かの感情を忘れたいように整備に精を出し始めた。


「カータ・・・その・・・明日は、戦乙女ヴァルキリーズの野営に行くからダート・アーマーは、歩けようになればいいよ。」


「え・・・じゃあもう整備終わりじゃん。」


アグネス・カータレットはため息をついた。


「はぁー・・・寝ますか。」


エリス・フォンライトが恥ずかしそうに言う


「じゃあ最近寒いから添い寝しない・・・?」


アグネス・カータレットは、快く了承した。

エリス・フォンライトとアグネス・カータレットは、同じベットに入り顔を見つめあいながら同時に言った。


「「おやすみなさい。」」


そして夜が明けてエリス・フォンライトとアグネス・カータレットは、鎧もまともについていないダート・アーマーをとぼとぼ歩かせながら戦乙女ヴァルキリーズの野営に向かった。


「そういえばフォンはお酒には弱いのね。」


昨日の事を思い出しながらアグネス・カータレットは言った。


「昨日の事はなかったことにして。」


エリス・フォンライトは恥ずかしそうにした。


「・・・あーしの夢だったことにしとく。」


そして雑談していると直ぐに、目的地の野営に到着した。


「エリスちゃんようこそ戦乙女ヴァルキリーズへ。」


野営についてすぐに団長であるジル・ウェンズデーがあいさつをしに来た


「えーとあんたが、ジル・ウェンズデーさん?」


「そうよ・・・そう言うあなたは誰かしら?」


「あーしは、フォンの鎧整備士アーマースタイリストをしているアグネス・カータレットだ。」


「よろしくねアグネスちゃん。」


「じゃあこれからあなた達が生活を共にすることになる仲間を紹介してくわね。」


ジル・ウェンズデーがそう言うと立ち話をしている三人組に指をさした。


「あそこにいるのがうちの自慢の隊長達。名前は、あの背が高くて眼帯している子がアディ・レオーネ。で隣の金髪ロングの子はケアリー・ルア。最後に少し背が低くて黒髪ボブの子がカレン・ファルケ。」


エリス・フォンライトは、その3人組をまじまじと見つめていた。アディ・レオーネには、何度も戦場で死線を乗り越えてきたような凄まじい気迫があった。ケアリー・ルアには、知性を感じるような立ち振る舞いが多い。カレン・ファルケは、見るかに元気いっぱいで今にも走り出しそうな感じだ。この3人ともとても頼りがいがありそうだとエリス・フォンライトは少し安心した。エリス・フォンライトがそう考えているとジル・ウェンズデーの呼び声で考えを中断した。


「おーいアディちゃーんちょっと頼みたいことがー。」


「はーい」


アディ・レオーネが返事をしながらこちらに来た。


「この子達の野営の案内頼める?」


「団長の頼みなら任せて。」


するとジル・ウェンズデーは何処かに行ってしまった。


「あんたがあの酒場で団長にキスしたっていうエリス・フォンライトかい?」


アディ・レオーネがこの話を振った瞬間アグネス・カータレットがエリス・フォンライトの方を凄い形相で見てきたのは置いといてエリス・フォンライトが答えた。


「そうだよ私がエリス・フォンライト。隣にいるのがアグネス・カータレット。」


「・・・そうかい。あたいに関しては、団長から軽く紹介してあると思うから詳しいことは、あたいの天幕についてから。とりあえずあんた達が、今後一番お世話になるであろう所を案内しよう。」


そう言われて案内された場所は熱気に溢れている鍛冶場だった。確かにお世話になる場所だった。


「あいつがうちの鍛冶場を指揮している親方のクラム・プラタだ。挨拶しときな。」


そう紹介されたのは7から9歳ぐらいに見え鉢巻きをしている小さな子供みたいだった。


「こんにちは。私は、エリス・フォンライトこの戦乙女ヴァルキリーズに所属することになった土被りだよろしく頼む。」


「あーしはアグネス・カータレット。フォンの鎧整備士アーマースタイリストをしているのよろしく。」


クラム・プラタは今は忙しいらしく軽くうなずくだけだった。


「それじゃあたいの天幕に行くか。」


アディ・レオーネの天幕の中で詳しい説明が始まった。


「あたいは、この傭兵団での戦闘隊長をしている。さっきまで一緒に話していたあの2人も別々の隊長だ。それであんた達には、あたいの元で働いて貰う。正直なところまだあんた達は、まだ信頼におけるような土被りじゃあない。だから次の戦場で、信頼できるような活躍を期待するよ。なんせ団長が直接スカウトしたんだからな。」


「期待に応えらるように善処する。」


「うん・・・いい返事だ。あんた達のテントは隣にあるから明日はここに来ての初仕事だしっかり休んでおけよ。」


そしてエリス・フォンライトとても忙しい初仕事が始まるのだった。
































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