第2話傭兵団

「ああ・・・畜生!こんなとろで・・・死にたくない」


そうダート・アーマーの中で叫んだ、しかし誰かに伝わるわけでもなくエリス・フォンライトは現状に対して、悪態をつくしかなかった。戦況は最悪、複数のダート・アーマーに囲まれて味方同士で背中合わせの状態になってしまった。そして相手の残りのダート・アーマーがこちらの歩兵陣を荒らしまわっていた。このままいけば自陣は、崩壊しそのまま敗走してしまう。すると目がくらむ様な閃光と共に凄まじい轟音が鳴り響いた。


「なんだ?!」


エリス・フォンライトはその轟音が鳴った方向に、目を向けるとこちらの歩兵陣にいたダート・アーマーの一体が黒焦げになっていた。どうやら味方の中に、合体魔法が使える程の練度の高い集団がいたようだった。


「今しかない。」


あの合体魔法のおかげで相手の包囲が少し緩んだのを、エリス・フォンライトは見逃さなかった。

ダート・アーマーが振り上げたつるぎが風切り音と共に振り下ろされ相手を切り裂いた。包囲されていたダート・アーマーたちは、徐々に押し返していきその日の野戦は辛くも勝利を収めた。


「野営についたらあの人達にお礼しなきゃ。」


そう思いつつボロボロになったダート・アーマーを引きずりながら帰還する。


野営につく頃には、周りはオレンジ色に染まっていた。アグネス・カータレットが怪訝な顔でダート・アーマーを見つめていた。


「フォン・・・何をどうしたらここまで派手に壊せるのさ?」


「必死に戦った,それだけ。」


とぶっきらぼうにエリス・フォンライトは答えた。


「そーかい。あーしはフォンが無事ならそれでいんだけどさ。」


アグネス・カータレットは不満ではあったが少し安心しているようでもあった。


「カータ、修理は任せたよ、私は少し用事があるから。」


「りょーかい、また完璧に修理してあげるよ。」


そしてあの戦場で見た合体魔法を発動させた人達を野営で探し始めた、色々なところで聞き込みをしてその人たちがとある傭兵団であると知った。更に近くに、ある豚のしっぽ停という酒場で勝利を祝っているそうなので行ってみることにした。

エリス・フォンライトはその酒場を訪れ少し面食らった、女しかいない。

それでも命の恩人には変わらないのだから、エリス・フォンライトはお酒をおごると決めた。


「今日の昼間の合体魔法の礼がしたい、ここに居る傭兵団に一杯おごらせてくれ。」


酒場が更に盛り上がった。カウンターの席に案内されエリス・フォンライトもお酒を飲み始めた。しばらくの間お酒を楽しんでいた。すると見るからに眼帯をして高身長まるでこの傭兵団のボスような人がエリス・フォンライトに話しかけてきた。


「あなたがこのバカ騒ぎを起こした張本人さん?」


「そう・・・って言ったらどうするの?」


「お礼をしに来ただけよ。」


「じゃあ・・私がこの騒ぎを引き起こした張本人です。」


「ふふ・・意外と面白い子なのね。私の名前はジル・ウェンズデー。戦乙女ヴァルキリーズって呼ばれている傭兵団の団長をしているの。」


「私はエリス・フォンライト。土被りをしている流れの傭兵。それとこちらからもお礼が言いたかった。あの合体魔法がなかったらあの場で死んでいたかもしれない。ありがとう。」


「いえいえ、あの場で真っ先に私たちに合わせてたのは、エリスちゃんぐらいしかいなかったからこちらも凄く助かったのよ。」


エリス・フォンライトは内心もう自分の名前にをつけるのかと思っていると続けてジル・ウェンズデーは言った。


「ねえ、もし良かったらうちの団に入らない?あなたほどの土被りをフリーにしておくには惜しいし、うちの団の土被りはあなたが殺しちゃったからね・・・だから・・・


ジル・ウェンズデーが言い切る前にエリス・フォンライトは飲んでいたお酒を噴き出して盛大にむせた。


「まさか・・お礼って私を殺す・・・」


「そんなわけないじゃない。」


ジル・ウェンズデーは苦笑いを浮かべていた。少なくとも殺す気はないようで安心した。


「いや・・・え?恨みとか憎いとか思ってないの?」


「それは、多少なりともあるけど。傭兵なんだから殺し殺されは日常的じゃない。じゃあ逆に、エリスちゃんは、そうゆうの気にしたことってあるの?」


言われてみれば確かにそうだ。土被りになってからは気にしたことがなかった。


「えーとちなみに、いつのことなの?」


「最近起こった攻城戦で、エリスちゃんが高らかに打ち取った宣言したあの人。」


エリス・フォンライトは考えた、この戦乙女ヴァルキリーズに入団してしまったら自分一人勝手に行動ができなくなってしまう・・・しかし今回の戦いでは一人では厳しかった。もっとうまく連携が取れるようになればこの先楽に戦えることができる・・・


「わかった。戦乙女ヴァルキリーズに入団しよう。」


どうやらジル・ウェンズデーにとってこの判断は、意外だったようで驚きを隠せずにいた。


「ダメもとで誘ってみたけど、うちに来るのね。」


「あなたたちと一緒に戦ったほうが楽できそうだから。」


「じゃあ、この話はこれぐらいにして、お酒を飲みながら世間話でもしましょうかねぇ。」


「ねぇ、エリスちゃんあなたって恋とかしたことあるの?」


エリス・フォンライトはまた盛大にむせた。


「世間話というよりも恋バナじゃないか・・・けど今まで生きて恋愛は、したことないですね・・・」


「もしかしてぇ~エリスちゃんの~恋愛対象は~女の子だったり~?」


「・・・この話はやめ、なんか他の話題ないんですか?」


「あ~もしかして当たってる?」


怒ったエリス・フォンライトは、ジル・ウェンズデーにこちらに顔を向かせて強引にキスをした、しかも舌を入れるような熱いキスを。


「これが答えです。これ以上・・おちょくるのなら食べちゃいますよ。」


エリス・フォンライトは小悪魔のような微笑みを浮かべ優雅に口の周りについてしまった蜜を余裕を持ってふき取っていた。それの一部始終を見ていた周りの団員に驚愕されていた。これにジル・ウェンズデーは顔を赤らめて口をパクパクとしかできないぐらいに啞然としていた。普段の行動からはあり得ないことだが、今晩は違った。

ジル・ウェンズデーはお酒を飲むことはできるが・・・タイプの人間だった。




























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