第25話
☆☆☆
それから1度最奥のコテージに寄ってみたけれど、二人が見た写真と日記はどこにも見当たらなかった。
鏡の中に女の子の姿が映ることもなく、血に濡れた方ょうが飛び回ることもない。
あの、大学生たちが残した『やってはいけないことリスト』だけが、テーブルの上に残されていた。
それも、おじさんが処分してしまった。
あとにはなにも残らない。
「あ、でもひとつだけあるか」
和也がそう呟いて、スマホを取り出した。
そこには若菜と良子と純の3人が映った写真を撮影したものが残っている。
日記と同じ様に消えてしまったかと思ったが、これだけはなぜか残っていた。
でも、写真からは嫌なものは感じられないから、わざわざ消す必要もなさそうだ。
それから数カ月後。
「おじさん、やっと地鎮祭終わったってさ」
教室で亜希と和也が話をしていたら、透子がそう声をかけてきた。
「そっか。よかったね」
これでもう、あの最奥のコテージでも悪いことは起きないはずだ。
そこでふと思い出したように和也がスマホを取り出した。
「地鎮祭が終わったってことは……」
スマホで若菜たちが映っているあの写真を表示する。
亜希と透子も、和也のスマホ画面を覗き込んだ。
そこに映っていたのは……満面の笑みをこぼして笑う、3人の姿だった。
純と良子は若菜を抱きしめるようにして笑い、若菜はふたりに囲まれてとても楽しそうにしている。
写真が、変わった……。
「なんだか、すごく楽しそうな写真だね」
透子がワクワクしている口調で言う。
透子にこの写真を見せるのは初めてだから、なんの写真か理解していないみたいだ。
でも、それでいいんだ。
写真の中の3人が殺し合って自殺したなんて、知らなくていい。
それに、今の写真から感じるのはとてもたのしそうな雰囲気だった。
そうして見ていると、ふいに写真が消えた。
「あれ、なんで消えたの?」
急に暗転したスマホ画面に透子は不思議そうに首をかしげる。
亜希と和也は目を見交わせて微笑んだ。
「きっと、もうここにいる必要がなくなったから消えたんだよ」
亜希はそう説明し、透子はますます首を傾げたのだった。
END
怖い部屋-やってはいけないことリスト- 西羽咲 花月 @katsuki03
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