第2話

これからは体格差も顕著になっていくことだろう。

そうしてふたりを乗せたバンは無事にコテージに到着した。

コテージが立ち並ぶ一角への入り口はアーチ状の門になっていて、その右手に大きな建物が見えた。



「あれが管理室。僕が駐在しているから、なにかあったら連絡してくれればいいから」



管理室の向かいには売店があり、昼間だというのに明々と明かりが灯されている。

中には数人のお客さんがいるみたいだ。



「君たちが今日泊まる部屋はここの一番奥なんだ」



車はどんどん山の奥へと進んでいく。

道は舗装されていて、左右には同じ大きな、同じデザインのコテージが並んでいるから、寂しさはない。



「え、ここですか?」



停車した場所にあるコテージに視線を向けて亜希が思わず呟いた。

そこは施設内で最奥になり、広い庭がついていた。


夏に来ればこの庭でバーベキューでもできそうだ。

更に庭の隅には小さな小屋が建っている。



「あの小屋はなんですか?」



和也が訊ねると「あれは物置だよ」と、教えてくれた。

家庭で見かける長方形の無骨なものではなく、小さなウッドハウスみたいな見た目をしている。



「中には遊び道具やキャンプ道具が入ってるんだ。貸し出しもしているから、覗いてみたくなったら連絡してね」



それから二人はコテージの鍵を受け取って車をおりた。

二人が泊まる部屋のドアには110という数字が書かれている。



「明日透子が来たら部屋を移動してもらうことになると思うけど、今日はここで我慢してくれるかい?」



おじさんの言葉にふたりは同時に振り向いていた。



「え? 部屋を変わるんですか?」



和也がとまどった様子を浮かべる。

そんな話は今始めて聞いた。

おじさんはそんな和也の反応を見て驚いたように目を丸くし、それから取り繕うように慌てて微笑んだ。



「き、今日は他の部屋が満室だから、最奥の部屋になっただけなんだ。ほら、君たちも売店とか行くときには少しでも近い方がいいだろう?」



何かを隠しているのか早口になっている。

なんだろうと思っている間におじさんはさっさと車に乗り込んで走り出してしまった。



「どうしよう。入る?」



和也に聞かれて亜希は視線をコテージへ戻した。

他のコテージと変わらない、庭がついている分だけ豪華に見える。



「そうだね。寒いし、入ろう」



亜希が頷くと、和也が受け取った鍵でコテージの玄関を開けたのだった。



やってはいけないことリスト


コテージに入るとすぐに半畳分ほどの分厚いマットがひかれていて、そこで靴を脱ぎ、茶色いスリッパをはいて中へ入った。

玄関からリビングとキッチンを見渡すことができて、壁は一切ない。


リビングには白いソファが置かれていて、中央には焦げ茶色のテーブル。

そして壁掛けテレビの下にはゲーム機やブルーレイレコーダーが置かれている。

それらを見て和也の表情が緩んだ。



「なんだ、ちゃんと暇つぶしもできるんだ」



田舎のコテージだと聞いていたから、スキー以外にやることがあるのだとうかと思っていたのだ。



「本もたくさんあるね」



テレビの横には天井まで届きそうな本棚がひとつあり、大人向けの雑誌や小さな子供向けの絵本まである。

もちろん、亜希たちの年代が読むような小説も置いてあった。


二人でキッチンへと移動してくると、そこは家のキッチンよりも少し狭いと感じられるスペースだった。

でも、和也や亜希が料理をするのだから、これくらいで丁度いい。


冷蔵庫を覗いてみると、たくさんの新鮮な食材が準備されていた。

透子から聞いた話だと、食材については好きに使っていいらしい。


最初から宿泊代金に含まれているのだとか。

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