生徒会からのお誘い

「星宮さん、生徒会に入ってみないかい?」

「へ?」


 そう提案されたのは、生徒会のテーブルで昼食を食べていたときだった。


 いつも通りすみれ先輩に「可愛い」とか「きゅわわん」とか言われながら食事をしていると、向かい側の席に座る生徒会長である坂本先輩に言われた。


「何やら色々とよろしくないことがあったみたいだね? しかもこうして君に二階席で昼食を取らせているのも原因の一つだったみたいで……すまなかったね」


 申し訳なさそうに言っているけれど、何をいまさらといった気分だ。

 その色々とよろしくないことは結局自力で解決させたし。

 まだ不満を持つ人はいそうだけれど宮根先輩みたいに味方も増えた。

 そんな状況で今更謝られても……。


「一応解決はしたみたいだけれど、まだ不満を持っている生徒はいるだろう? だから、逆手を取って君がここで昼食を取っても問題ないようにすれば良いんじゃないかと思ってね」

「それが、生徒会に入るってことですか?」

「ああ」

「……」


 逆に二階席で昼食を取るのを止めるとはならないんだろうか……?

 そんな疑問を目でうったえてみたけど、笑顔で押し切られる。


「とはいっても、生徒会の仕事内容も分からないんじゃあ不安だよね? だから、お試しで文化祭の間生徒会の仕事を手伝うってのはどうかな?」

「え?」

「生徒会に入るかどうかはその後で決めるってことで」

「……」


 これってドア・イン・ザ・フェイス・テクニックってやつなんじゃあ……。

 大きな要求をした後に小さな要求に切り替えればOKされやすくなるって言う。


 でも実際生徒会長である坂本先輩にここまで言われて断るのも……。


 そうして分かっていながらまんまとテクニックに引っかかてしまって迷っている間に、第三者が発言しだした。


「あら、じゃあそのお手伝いは私の下についてもらおうかしら?」


 すぐそばにいたすみれ先輩が喜々として言い出す。


「いえ、そちらよりこちらの方が手が足りないので、私の下で頑張ってほしいです」


 すると坂本先輩の隣にいる高志くんまでそんなことを言いだした。


「え? いや、まだやるとは――」


 言ってない、と言おうとしたけれどそこに坂本先輩の言葉がかぶさってくる。


「星宮さんは人気者だね。このままだとケンカになりそうだから、僕の下についてもらおうかな?」

「え?」


「まあ、確かに生徒会長の仕事が一番多いですものね……」

「それなら仕方ないですね」


 すみれ先輩と高志くんもそう言って引き下がったことで何とか場が治まったという雰囲気になる。


「じゃあ、詳細は後日話すから。……よろしくね、美来さん」


 もう私が手伝うというのは決定事項のようにされ、開いた口がふさがらない。

 私、やるって言ってないのに⁉


 その衝撃が大きすぎて、さりげなく私の呼び方が名前呼びになっている事にも気付けなかった。


 これ、今からでも断るって出来るかな?

 雰囲気的には出来ないけど……。


「手伝いを通してこの学校に慣れてくれると嬉しい。君はまだ転入したばかりだからね」


 迷っているうちに追い打ちのように言葉を重ねられ、更に断りづらくなる。

 それでも強気で断ることは出来たはずなんだ。

 はず、なんだけど……。


「……はい、よろしくお願いします」


 生徒会に入れれば色々と便利になることもあるよなぁ、なんて思ってしまったこともあり、私は結局了承の返事をしてしまった。

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