学校の事情③

「で、話を戻すけど……えーっと、いいとこのお坊ちゃんがどうして総長やってるかってことだったよね」


 突然の質問に突然の話題修正。

 良くわからないけど、ちゃんと私の疑問に答えようとしてくれているので黙って梅内さんの言葉を待った。

 ちなみに奏は梅内さんを見ながら黙々とスクランブルエッグを食べている。

 コッペパンいらないなら全部くれ。


「まずは、もともとこの学校は不良とかも他に比べると多いのよ。結構来るもの拒まずだから」


 不良が多い学校……もう大前提からしてそれなんだ。

 まあでも、学校の規模が大きいから他に比べてっていうのは理解出来る。


「でもそれだと個人個人が衝突しあってケンカばかりになっちゃうでしょう? だから、まとめるために暴走族っていうグループにしたの。でも一つだとやっぱり合わない人が出てくるから、二つのグループに分けたらしいよ」


「ふーん」


 相槌を打ちながら変な学校と思った。

 ってことはその二つの暴走族は学校公認って感じになってるんじゃないの?

 まあ、表向きは違うだろうけど……。

 やっぱり変な学校と思いながら続きを聞く。


「それで、その総長として白羽の矢が立ったのが御曹司たちの中でも跡継ぎじゃない次男、三男の人たちってわけ。ついでに言うと、もともとちょっと素行が悪かったり喧嘩っ早かったりする人から選んだんだって。今の総長たちもそうやって決まっちゃったらしいよ?」

「へぇー……」


 そんな事情があるんだ?

 ってことはその総長たちは仕方なくそういう役職についてるってこと?

 そう思って聞いてみると。


「いや、最初はそうだったかもしれないけど、さっきも言った【かぐや姫】を探すのにも丁度良かったらしくて今じゃ普通に総長やってるみたい」

「……」


 とりあえず、その総長たちも結局は私の嫌いな不良と同じって認識でいいのかな。

 他にも細々としたことを聞いて、昼食を食べ終える。

 私は最後にお茶を飲み干し、「うん」と頷いた。


「ま、もう転校してきちゃったし仕方ないよね。暴走族がいたり不良が多かったりってのはあるかもしれないけど、こっちから関わっていかなければ大丈夫でしょう」


 一通り話を聞いて、そこが落としどころだと思った。

 実際不良が多いって言っても生徒の数自体が多いんだから、こっちから関わろうとさえしなければ接する機会も少ないだろう。

 そう思っての結論だった。


 ……なのに、梅内さんは「え⁉」と声を上げあからさまにオロオロし始める。


「……え?」


 嫌な予感がした。


「あ、あのね。星宮さん……」


 続く言葉を聞きたくないと思った。

 でも聞かない方がもっと後悔するだろうことも分かっていた。

 だから、聞くという選択肢しかない。


「その、星宮さんの隣の席の人今日いなかったでしょう?」

「……まさか」

「うん、その隣の席の人ね。……【月帝】のNО.3をやってる久保くぼ幹人みきとって人なんだ……」

「…………」


 ……今日はこのままエスケープしてもいいですか……?

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