第4話 ノストラダムスの予言から 多岐川昭

 多岐川昭たきがわあきらは定年間近のサラリーマンだ。都内でA商事の営業のとして勤めていた。家族が関西に住んでいる多岐川は単身赴任で東京に住んでいた。


 多岐川が入社した頃はバブルがはじけ、世の中が少し変わり始めていた。

 世間に飛び交う『バブル崩壊』という言葉が直撃するような事態は、まだ彼の周りでは起こていなかったが、バブルの狂った時代が終わったことは少しずつ実感できた。

 そんな時代に社会人になった。

 そして現在。ある意味もっとひどい時代だ。


 入社してすぐ、時代は1999年を迎えようとしていた。


 世に言う、

『ノストラダムスの予言』


 1999年12月31日 世界は終わる。

『その時』が刻一刻と近づいていた。


『予言』という曖昧な危機感とは別に、世間では『2000年問題』(Y2K)という言葉が飛び交っていた。


 西暦の下二桁を基準にして時間を計算しているプログラムが1999年12月31日23時59分を回った後、年が明けると同時に1900年1月1日になりコンピューターが誤作動を起こすというものだった。

 大きな問題は起こらなかったとされているが、恐らく報告されてない小さな問題や、報告できない問題が起こっていたのではないだろうか。


 その時、こんなことが言われていた西暦に注目が集まっているが、和暦である昭和の暦を基準にしているプログラムがあるのではないか……そうすると、昭和99年から昭和100年になるとき同じ問題が起こるのではないか……と、昭和100年は2025年だ。

 昭和が終わり、平成が始まり、そして、令和になった。昭和は『レトロ』とか、そんな話ばかりだが『昭和』の忘れ物がまだ残っているのではないか……

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