第7話 ダンジョンはゴミ箱ではありません
MP:540
DP:30
【ステータス】正常
【吸収MP・DP】560・36
【維持MP・DP】141・3
【地図】1F・B1・B2
【収納】14/100
【拡張】【階層】【階段】【通路】
【生産】
【変換】MP10→DP1
4日目の午前0時。
昨日地面から吸収したMPとDPが振り込まれたので、ダンジョンの拡張作業を開始する。
昨日は地下2階の12本目の階段と通路を作って、MPが尽きたのでそこからだ。
「ちょうど秘密の部屋を作るところからだな」
【拡張】→【部屋】で今いるダンジョンの一番奥にあたる通路から、ダンジョンの入口の部屋から伸びる階段の下の通路との間に部屋を作るのだ。
この部屋を俺の部屋として、しばらくはダンジョンコアをここに置く。
ダンジョンから出るときは入口側の壁を掘ると、真っ直ぐ階段を上ればすぐ外だ。
出入りの度に掘っては埋め戻してDPを消費するが必要経費だと割り切ってしまう。
ゴゴゴっと音がして、目の前の壁がなくなる。
DP:30→23
秘密の小部屋完成だ。
一番小さいサイズの【部屋】でもDP消費は5。
それといつでも埋め戻せる通路をダンジョンの奥と入口側に1本ずつでDPを2、計7消費した。
「小さいけど、寝起き分には十分だな……眠くならないんだったか」
自分にツッコミを入れつつも実際に横になってみる。
ショートカットが出来たので早速外の探索に行きたいが、時刻は0時。
日が昇るまではこの部屋でゴロゴロする。
眠くならなくてもベットと毛布くらいはほしいな。
「あと枕。あっダンジョンコア」
枕で先程まで寄りかかっていたダンジョンコアと台座を思い出す。
この部屋に移動させておこう。
場所は真ん中でいいか。
ほんのり光ってるし、照明代わりだ。
「ちゃんとした照明もほしいな」
現状灯りはダンジョンコアとタブレットだけだ。
侵入者対策で階段と通路には灯りを設置しないが、この部屋には欲しい。
帰って来た時に部屋が明るいと元気が出るってもんだ。
「【生産】にあるかな?いや、MPをつかうのは……」
我慢だ。
ベットに枕に照明。
欲しいがそれで命が危険になったら元も子もない。
ある程度ダンジョンが形になるまでは……。
「いや、待てよ?自分で作ればいいのか?」
照明はともかくベットと枕くらいならその辺に落ちている物を組み合わせれば俺でも作れるんじゃないか?
時間はあるんだ。
現状日付跨ぎでDPが振り込まれた後、1時間もしないで俺の仕事は終わる。
後はタブレット片手にゴロゴロしているだけだ。
でも道具もなしに作れるか?
道具だけ、せめてナイフ一本……。
それなら照明を作った方が……。
「うーん。うーーん。ううーーーん」
益体もないことを考えていたら【タブレット】のアラーム機能が起動する。
そんなに時間が経っていたか……。
『06:00』
「よし、もう日は昇っているはずだ。外に行って一晩考えたことを試して見よう」
ダンジョンの奥方向ではなく、入口側の通路から部屋をでる。
「一応埋め戻しておこう」
自称天使はしばらくは安全と言っていたので、誰も入って来ないとは思うが念のためだ。
ここでタブレットから【
少ないMPで結構な範囲を埋める選択も出来たが、ダンジョンの堅牢な土壁にするにはDPが必要みたいだ。
今回はこれでいいけど、長期間留守にしたり、この抜け道を使わない時はちゃんとDPを消費して土壁にしておいたほうがいいな。
(これは使えるのでは?好きな形に土を盛ることができるし、盛った土はダンジョンに吸収されない設定にできる……)
そんなことを考えながら階段を上って初日に目を覚ました部屋を通過する。
眩しい。
2日ほど外に出ていなかっただけだけど、朝日が染みる。
階段を上りきって外に出る。
「おっと、靴、靴」
裸足だったのを忘れていた。
一旦戻って収納から靴を出して履いたら、改めて外に出ていく。
朝の清涼な空気がうまい。
都会とは違うな。
(流石異世界……であってるのか?)
まだ人間の街を見ていないからわからない。
石炭とかガンガン焚いてる世界だったら空気がうまいのは田舎だからということになるな。
そもそもここがこの世界にとってどういう場所なのかもわからない。
隣の山が異世界人の総本山だったりしたら、即詰みだ。
そういう意味でもこの外の探索は大事になってくるな。
(まずは階段が作れなかった先の斜面を見に行こうか)
入口の階段から斜面の方向を予測して歩き出す。
距離は直線距離で100メートルもないはずだ。
一応迷わないように、周辺の植生を覚えながら、まっすぐ進んでいく。
ダンジョンの入口周辺だけが平らになっていただけで、少し離れただけで地面は傾いて凸凹になり、木々も
(うえ、靴の中に枝が入った)
片手を木について、片足立ちになって靴から枝を出す。
手をついている木は見たことない葉っぱだ。
周りも大体そうだ。
丸とか四角の葉っぱに、これまた見たことのない形の実を付けている。
少なくとも日本の植生ではないな。
(気になるところではあるが、こいつらは後だ。今は斜面を目指そう)
しかし歩きにくい。
意外と『世界樹のダンジョン』は理にかなっているのかもしれない。
広い森っていうのもいいコンセプトだろう。
(実は世界樹はダミーで他の場所にダンジョンコアが隠してあったら、探しようもないな……)
階段もヒドイが山もヒドイ。
100メートル進むのに10分以上かかっている。
「崖じゃないか」
外に出てからは声を出さないようにしていたが、思わず言葉が漏れる。
斜面と言うよりはほぼ崖だった。
下りたら戻って来れないやつだ。
斜面には木が生えていないので、周りが良く見える。
斜面の下には森が広がっていて、人が住んでいる痕跡はなさそうだ。
今は朝飯時だと思うが、火を焚いて煙が上がっているということもない。
少なくともこっち側には人は住んでいなそうだ。
(ここはやっぱり中腹辺りか?)
タブレットで見たダンジョンの壁を伸ばせる範囲では、この斜面はまだまだ上に続いていた。
頂上まで行ってみたいところだが、迷子になると困る。
ダンジョンに帰れないダンジョンマスターとかシャレにならん。
頂上まで登るにしても、準備が必要だろう。
今日はやりたいこともあるし、来た道を帰ることにする。
(こいつらを回収していこう)
帰りがけに先程の植物の実を回収する。
小さな木に生っている三角の実や、丸い葉っぱや四角い葉っぱ。
なるべく種類を集めてポケットいっぱいに詰めていく。
(集めるのに夢中になり過ぎて、道を間違えないようにしないとな……)
帰り道からは逸れないように気をつける。
ダンジョンの階段が見えてきた。
ダンジョンを出てから30分ほどだが、なんだか安心する。
さて、なんのために植物を集めていたかと言えば、収納にしまうためである。
「【タブレット】、【収納】っと」
早速階段を下りて【収納】に拾った植物を入れていく。
この【収納】というやつはダンジョンの壁の中にしまわれるので、ポケットから壁にインだ。
「するとあら不思議!鑑定されるのです」
【タブレット】の【収納】の項目を見ると仕舞ってある物の名前がわかるのだ。
『マルイの木の実』に『マルイの木の葉』。
『シカクイに木の葉』と『モウドクの木の実』っと。
「……なんか変なのあるな」
別に名前を調べるのが、主な目的ではないが、知ることは大事だ。
名前が変に感じるのはおそらく現地語を日本語に変換しているからだ。
『マルイ』は『丸い』だろう。
丸い葉っぱだったから間違いない。
きっと本来はカッコイイ発音の木なのだろう。
「この分だと現地人と会話できないんだろうな……」
【異世界言語】みたいなスキルは貰ってないし、話せる気もしないと言うことは、無理だろう。
「気を取り直して『モウドクの木の実』だ。こういうのを探してたんだよ。コイツを【変換】っと」
何のために植物を集めていたのかと言えば、MPを集めるためだ。
【収納】に入れた物は【変換】で魔力に変えることができる。
同じ量でも土を【変換】するよりも、石を【変換】するほうが効率が良かったし、変な名前の付いている鉱石はちょっとの量でもMPになった。
MP:539→540
キタ!
予想通り。
拳よりも小さい実一個でMPが1増えた。
100個拾ってきたらMPが100増えるのか?
これはかなりいい物を見つけたんじゃないか?
「昼間やることが出来たな」
この調子で植物以外にも石とかも拾って試したいところだ。
欠点は【収納】はダンジョンでしか使えないので、ダンジョンまで持って帰ってこないといけないということだ。
デカい岩とかは無理そうだ。
「とりあえず『モウドクの木の実』を集めてくるか」
もう一度外に出て、さっきの『モウドクの木の実』が生っていた木の所に向かう。
MPが収穫できるとわかったのは大きい。
木の実や葉っぱだけじゃなくて、草も集めていこう。
猛毒が有効なMP回収手段なら毒キノコなんかもポイントが高いってことにある。
目を皿のようにして地面を探す。
「これ以上は届かないな」
先程『モウドクの木の実』を採った木からは、手の届く範囲では全部採ったと思う。
地面に落ちていた『モウドクの木の実』も拾った。
全部で30個くらいか?
スーツの上着を風呂敷替わりにして持ち帰る。
この実を全部変換したら、そのMPでナイフとか鞄を作ろう。
収穫の効率を上げるんだ。
それで昼は外で探索をしつつ、MP効率のいい物を探す。
暗くなる前には戻ってきて、ダンジョンでお勉強だ。
「楽しくなってきたぜ」
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