第8話体育祭(後編)

 お昼を簡単に済まして、午後の部がはじまった。


 俺が出る借り物競争は最後の方なのでまだ時間はある。


「あ!湊〜!」

「ん?今井か、どうした?」

「二人三脚見たよ〜あの白石さんに合わせられるなんてはすごいね〜!」

「あぁ、ありがとう」

「透なんてサッカー部に欲しい!って言ってたよ」

「俺は部活には入らないぞ」


 今井と話していたら背後から突然話しかけられた。


「彼方」

「「………」」


 思わず2人して固まってしまった。


「どうてそんなに固まっているのかしら?」


 そりゃそうだろ…だって話しかけてきた相手は…



 ……九条愛莉だったから。


「えーと…どうしましたか?」

「どうして敬語なの?」

「そんな、九条様にタメ口なんて恐れ多い…」

「気持ち悪いからやめてくれない」

「あ、はい…」


 今井はポカンとしている。

 うん、まぁそうだろうな。


「ごめんなさいね今井くん」

「い、いえ。またね、湊」


 今井が逃げるように去っていった。

 


「あら、これで2人きりね♪」

「ワーイトッテモウレシイナー」

「心にもない言葉をどうもありがとう」

「それでなんのよう?」

「ここじゃ目立つし、少し場所を移しましょう」

「そうだな」


 そして体育館裏へ来た。


「こんなとこまで来てなんの話なんだ?」

「あんなに目立ちたくないって言っていたのにどうしたの?」


 なんだそんなことか


「どうもしてないよ、今でも目立ちたいと思ってない」

「じゃあどうして?」

「白石さんのことがほっとけなかったから…かな」

「え?」

「あまり詳しいことは話せないが…ただ、を見ているようだった」

「……そう」


 放送で「借り物競争に出る方は準備してください」とアナウンスが流れた。


「呼ばれたみたいだ」

「ええ、そうみたいね」

「じゃあな」


 そう言い俺はグラウンドの方に戻った。


♦︎


「さぁ続いては借り物競走です!司会は放送部と変わりまして生徒会長九条愛莉がお送りいたします!」


 …まじですか!?

 こっちみてウインクしてきたんだが…

 うわ〜嫌な予感が…


「借り物競走のルール説明を行います。お題の書かれた紙が載っているテーブルまで走ります。そこから一枚選び引いていただきます。中に書かれたお題に添ったものをゴールまでお持ちいただきます。ゴールでお題に添っているかを確認し、合っていればゴール、合っていなければやり直しでもう一度となります」


 わかりやすいね〜


 もうすぐ始まるので、俺はスタートラインに並んだ。


「よーい!」


 そしてピストルの音が鳴り響き、一斉に走り出した。

 お題が乗っているテーブルに辿り着き…


 …………は?????


 俺はフリーズした

 理由は簡単、箱の中に紙が一枚しかなかったから。

 犯人は一人しかいない…

 こんなことができるのは…生徒会長である九条愛莉ただ一人だ!!

 しかも隠す気もなく、こっちをみて笑ってやがる…

 仕方なく、一枚の紙を取り開くと…

 あ〜はいはい、やってくれましたね!

 中に書かれたお題は


「あなたが気になってる人(女子)」


 終わった〜

 しかも女子指定だ。

 いっそのこと愛莉を連れて行ってやろうかと考えたが、後が怖いのでやめた。

 と言うことは女子のつながりが一切ない俺は白石さんしかいなくなってしまった。

 確かに白石さんのことをほっとけないとは言ったが意味合いが違う

 絶対わかってやってるな…

 とにかく動くしかない

 俺は白石さんのもとまで走った。


「白石さん!」

「え?」

「ごめん!」

「ちょ、え?」


 腕を掴んで走ろうとしたら


「そういえば言い忘れてましたが、お題のものはゴールまで来てください」


 悪魔かよあいつ…


「白石さん!乗ってくれ!」

「う、うん」


 白石さんを背負った。

 背中に何やら柔らかいものがあったているが、心を無にし猛ダッシュしてゴールについた。


「では確認しますね」


 実行委員の人に紙を渡すと、ニヤニヤした顔で


「おっけいでーす!」


 といった。ニヤニヤした顔で。

 絶対勘違いしてるって…


「一応紙お返ししますね」

「いえ、いりません」

「まぁまぁ一応ね!」


 一応ってなに!?

 とりあえずポケットに入れとくか。


「ねぇ!お題なんだったの?」

「ん?いや〜気にしなくていいよ」

「むぅ、気になるじゃん!」


 だって言えるわけなくね!?

「お題は気になってる人だよ⭐︎」って!


「あ〜ちょっと用事を思い出した」

「あ、ねぇちょっと〜!」


 ごめん白石さんこれだけは墓場まで持っていくつもりなんだ!

 だが、この時の俺は気づいていなかった。

 まさかポケットから紙が落ちていたなんて……


「もう!…ん?あれ?落としてる!えーとなになに――え、え〜〜〜!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」


 ===================================


 体育祭編が終わりました!

 予定より長くなりましたね本当は一話で収めるつもりだったんですけどね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る