転生したので真の悪役になろうと思う~推しで悪役な相棒の死亡フラグ、叩き折らせていただきます~

Yuki Mamiya

序章 四季と胎動編

第0話 プロローグ

「オニキス……!」


 土埃が舞っている。瓦礫が散らばった石造りの道の上を、ひとりの男が必死に走っていた。


 男の視線の先には、ひとりの麗しい女がいる。

 長い金髪を風になびかせる彼女は、白銀の剣を太陽光にきらめかせ、無慈悲にもその剣をふるった。


 非現実的なまでに麗しい剣技を前に、またひとつ、無力な瓦礫が増えていく。


「誰も見向きもしなかった」


 女が言った。男は自身が腰に下げた剣の柄に手を添えたまま、動かない。――動けない。


「最後の、希望なんだ」


 女の声には、己の無力さに対する悔しさが滲んでいた。

 本当はこんな手段を採用なんてしたくなかった。だが、彼女にはもう、この「破滅」への道しか、用意されてはいないのだ。


「ともに、世界を変えてくれないか」


 彼女は、どうしようもなく、デッドエンドに向かっていた。


 ――だが、もしも――もしも、彼女を救える存在がいるのだとすれば。その方法が、手段が、力が――己の手中に揃ってしまったのであれば。


 男もまた、進むしかなかったのだ。ただ、彼女を――オニキス・オベールという、もっとも美しいラスボスを、救うために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る