第3話 コミュ障でごめん
中層の攻略を始めてかなりの時間が経った。中層ではオーク、状態異常系スライム、武器持ちスケルトンが5、6体くらいで集まって攻撃してくる。私の場合状態異常無効のスキルがあるからスライムはもういくらいても意味ないのだが厄介なのはスケルトンだ。
中層のモンスターに新人冒険者がやられる理由として中層からのモンスターには知性があるという事が挙げられる。中には盾を持ったスケルトンが防御を、弓を持ったスケルトンが隙を見て攻撃なんてこともある。
そして、私はそれの攻略法を思いついた。盾で守れない程の圧倒的な力で一気に倒せばいいのだ。
「
手を前に掲げて魔法を唱えた途端スケルトンの群れの足元から竜巻状に炎が噴き出した。もちろん後には何も残っていない。
魔法って本当に便利なんだな。魔力量的に魔力切れを起こす気がしない上に遠距離攻撃手段としてとんでもない力を発揮する。
今まで試した魔法だと草属性の魔法で木に閉じ込め身動きを取れなくする
威力が高い魔法ばかりだと使い勝手が悪いので魔力消費が少なく連発性能が高い
因みに魔法には覚える難易度によって初級、中級、上級、特級に分けられる。初級は誰でも覚えることができ、中級は多少の訓練が必要、上級になると年単位での訓練が必要になり、特級になると人生を捧げるようになる者も少なくはない。
本来、それだけ魔法というのは習得が困難なものなのだが。
「うわ、あの魔法かっけぇ。えーと、
離れていたところで戦闘をしていた冒険者が使った魔法を見様見真似で習得してしまった。どうやら俺はスキルの影響で一度見た魔法を再現できるらしい。
こんなことをしていると流石の私でもスキルが強すぎて他の冒険者に申し訳ないと思い始めてくる。
まあ、そんなこんなで中層の探索を進めていると珍しいものを発見した。
「食虫植物型のモンスターか。……ここって洞窟型のダンジョンだよな?植物系統のダンジョンならあってもおかしくないけど」
薄暗い洞窟の中で一箇所だけ明るい色をしているから一瞬でモンスターだと分かってしまった。
珍しいがそこまで貴重なものでないので燃やそうとすると、
「ゴポッ、ゴポゴポポ」
「え」
モンスターの腹の中から獲物を消化する音が聞こえてきた。焼いてしまおうと思ったがどうやら中に誰かが入っているらしい。
こうなれば助けるしかないだろう。まあ死んでいるかもしれないがその時はその時だ。
私は魔法で身体強化をし、超加速で勢いをつけ、今できる最高速度で人が入っていないであろう入り口付近を切り裂いた。
分かりやすいのだとウツボカズラだろうか?その形をしているモンスターの口が大きく垂れ下がり、中身を吐き出す。
中から出てきたのは今の私と同じくらいの年齢の女の子だった。
「ケホッケホッ、あれ?私、モンスターに飲み込まれて…それで……」
「大丈夫?怪我はない?」
私が彼女に寄り添い背中をさすりながら訊ねると彼女はひどく驚いた様子で辺りを確認した。
「ヒャ!?だ、誰⁉︎」
やべ、ローブあるの忘れてた。私はすぐにローブを脱いでちゃんと彼女に姿が見えるようにした。私が急に現れたことで彼女がもう一度驚く様子を見せる。
「う、うわぁ……」
彼女をよく見るとモンスターの体液で溶かされたのか服が溶け肌の露出が多くなっている。今は女だが元は男。彼女の豊満な体が身じろぎのたび見え隠れするのが最高に目の保……とても目のやり場に困る。
「すみませんこのローブを羽織ってくれませんか?その格好だと恥ずかしいでしょう?顔を出していれば見えなくなることはないので」
恥ずかしいって?主に私がね。
「すみません、ありがとうございます」
「あ、うん……………………」
やばい、なんかめっちゃ気まずい。いやだって、私ずっとソロプレイしてたし?俺が日常的に話すのなんてお姉ちゃんだけだし?急に気の利いたこと話せみたいな状況になっても話せるわけねえし?事務的な話以外で何も話すことが思いつかねぇ……。
俺がずっと黙っていると彼女の方から話しかけてくれた。
「えと、助けてくれてありがとうございます。私、
「私は斑目羽瑠…。えと、タメ口でいいよ多分同い年だし敬語だと話しづらいと思うから」
タメ口なら私も話しやすいしきっと会話が弾むはずだ。
「うん…うんそうだよね!分かった!じゃあ敬語はなしね。ごめんね愛紗初めて会う人と話すの緊張しちゃってさ〜。命の恩人の前なのに話すの尻込みしちゃって。ていうかソロで攻略してるの?ここ中層だよね。羽瑠ちゃんみたいな子が1人で潜って大丈夫なの?」
「え、あ……う、うんそうだね」
愛紗はそのままえへへ、と笑う。めっちゃグイグイくるなこの子。若い子ってみんな距離感バグってるよね?これだけ元気なら大丈夫だろうけど。って、ソロなのはお前も同じだろ。
「そんなに騒げるなら大丈夫そうだね。モンスターに溶かされかけたって体験がトラウマになってるかもとか考えてたけど杞憂だったみたい。怪我はないんだよね?」
「うん!腕がちょっと痛い感じがするんだけど歩けるからこのままダンジョンを出て病院に行くよ」
腕の痛みか。彼女の腰には短剣が刺さっていた。その体では満足に戦えないのではないだろうか?あ、そうだ。
「じゃあ私がダンジョンの入り口まで送ってくよ。もしかしたら強いモンスターが出るかもしれないし、そうなったら私がいたほうが安全でしょ?私は私でまだ愛紗に聞きたいことがあるからさ」
「じゃ、じゃあお願いしていいかな?」
「うん、よろしく」
私だけが一方的に気まずさを感じてる(と思う)二人でダンジョンの入り口を目指すことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
素のステータスで下層のモンスターを嬲り殺せる12歳少女。実は愛紗ちゃんの方が年上だったり?
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