第57話 西園寺みちるは発表を待つ
ただ今11時50分。発表まであと10分です。
発表を待ちながら、ちょっと早めのお昼を食べてます。あったかいうちに食べたいですしね。
「みちるって、よく食べるよね」
「えっ!?」
別に普通……ですよね?
由利子さんはササミタツタバーガーとポテトのL。
涼子さんはササミバーガーとポテトのMにササミナゲット。
私は――ササミタツタバーガーとポテトのLは由利子さんと同じですし、ナゲットを頼んでるのも涼子さんと同じ。
おふたりと同じじゃないですか。ナゲットは15個入り頼んじゃいましたけど。
あ、クリームパイもありました。でもこれは誤差ですよね?
ちなみにマクドゥのパイは鶏ささみの形を模していて女子高生の間から可愛いと大人気です。
色が黒いショコラパイまでささみを模してるのは正直どうかと思いますけど。
それにしても、やっぱり美味しいですね、アマックスコーヒー。
程よい甘さが身に沁みます。自分で飲み物を用意できるのはテイクアウトの醍醐味ですね。
店内で食べるのもいいんですけど、これが無いのが困りものです。
……でも、何でしょう。おふたりがこっちをチラチラ見ています。
私のアマックスコーヒーと、ご自分の分とを見比べているようですが……ひょっとして、甘さが足りないんでしょうか?
それならミルクも砂糖もまだあるんですから、遠慮なく使っていただいていいんですけど。
……あと5分ですね。
今日は、みなさん口数が少ないです。やっぱり緊張してるんでしょうか。はい、私は緊張してます。
「……ところで、Aランクになると何が変わるのかしら?」
「い、今更それ聞くぅ?」
ほ、本当に今更ですね。ちょっと気が抜けちゃいました。
「基本的にはBランクと変わりませんよ。特権ランクなんて言われたりもしますけど、そこまで特別でもないですし」
「前に言った、要望が通りやすくなるっての以外だと……マギリアでの買い物が半額だとか」
「1人でもAランクの人がいればその人に買い物代行してもらったりとかできますね」
「あと腕試し的に
普通は相手が格上と見れば躊躇うものなんですけどね。
Aランクだとむしろ挑んでみようという気にさせてしまうみたいなんですよね。
そのあたり、正直私にはよくわからないんですけど。
「ある意味一番変わるのって、Aランクになったっていう記録が残り続けることじゃないかな?」
「……? どういうことかしら?」
「普通は
「でもAランク経験者なら、ランク落ちしてからも今のランクと一緒に最高順位も一緒に表示されるのよ」
Bランクは割と簡単になれるので、その実力はピンキリです。
でも一度でもAランクになったことがあればその記録は残るので、「この人はピンの方なんだ」というように伝わるんです。
それが良いことなのかどうなのか、やっぱり私にはよくわからないんですけど。
――っと、そろそろ正午です。
さぁ、発表……来ました!
由利子さんと涼子さんの名前はすぐに発見です!
私は…………私もありました! 全員Aランク昇格です!
正直なところ……少し不安だったんですけど、でも良かったです!
みんな仲良く昇格です! さぁお祝いしましょう!
「さ、最下位……最下位だわ……」
「リョーコはまだいいじゃん……。魔力放出量のハンデのせいでしょ? あたしのこれ、299位って要はAランク最弱ってことじゃん……」
あ、あれー? なんだかお祝いとは程遠いムードに……?
「あ、あのー……? まずはみんな揃ってAランクになれたことを喜びましょう……?」
「そうだよね……。あたしはAランクの中でも一番の小物になれたことを喜ぶべきだよね……」
「そう……。そう、よね。まずはお祝いしましょう……。祝・最下位ね……。ふふ……、ふふふ……」
はうぅ。ど、どうしてこんなことに……。
「ほ、ほら、せっかくのマクドゥが冷めちゃいますよ! まずは食べま――」
「あれぇー? 底辺争いに加わらないみちるちゃんは何位だったのかなー?」
はうぅ、こっちに振って来ましたぁぁ。
えええ、私の順位って……。
「そ、その……、257位、なんですけど……」
「ふぅ……、裏切者ね」
「ふふ……、これが強者の余裕というものなのね」
ええー!? なんでそうなっちゃうんですかぁぁ。
「高みの見物されちゃったなぁ……」
「格の違いを見せつけられてしまったわ……」
別に私そんなに凄いわけじゃないですよぉー。
馬鹿みたいに魔力放出してたのが委員会にとって都合が良かったってだけなんですからぁー。
「まぁ冗談はこのくらいにしましょ。可哀相だし」
「笑えない冗談はやめてくださいよー」
「ごめんごめん。ま、次で順位上げればいいんだもんね。遅れて参戦でランクインできただけで大したもんだもん」
実際、今回は不利な条件がいくつかありましたからね。
つまり来月はもっと上を狙える、というわけです。
「そんじゃ、気を取り直してお祝いと行きますかー」
「あ、お菓子取って来ますね」
「待って、まだマクドゥ食べてるから! そんなに食べれないから!」
「あ、そうですね。食べ終わってから持って来ます」
「だから食べれないって言っ――」
「そうね、お祝いしましょう……。私のような穀潰しまでお情けでランクインさせてくれたことを……」
…………。
「あああああリョーコ落ち着け! ガチで凹んでたんかい!」
「大丈夫ですから! ちゃんと認めれらてランクインしたんですから!」
あああ、そうでした。涼子さん、なんでかすぐネガティブモードに入っちゃうんでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます