第55話 西園寺みちるは心配する

 由利子さん、大丈夫でしょうか。


 一応の落としどころは見つけたみたいですけど、でもあれって自分の感情を押し殺すってことですよね。

 それはそれで、やっぱり辛いものではないでしょうか。


 由利子さんはああ言ってくれましたけど、やっぱり私、大変なことしちゃってましたよね……。

 これからは自重して――でも今更もう遅いですよね。


 ……はぁ。


 あ、着信――由利子さんから? 何かあったんでしょうか……?


「由利子さん? どうし――」

『みちる! 聞いて! あたし気付いちゃったの!』

「は、はい? な、何に――」

『あたしさ、結局この感情が何なのかまだわかんないんだけどさ、関係なかったのよ!』

「あの、落ち着い――」

『あたしね、今の関係が好きなの! 妥協とかそういうのじゃなくて、あたしが求めてるのって、これだったのよ!』

「ちょっ――」

『だからさ、もう逃げるのはやめた。この感情と向き合ってみることにしたから!』

「――!」

『でさ、また何かあったら、相談に乗ってくれるかな?』

「は、はい! 喜んで!」


 由利子さん、なんだか本当に吹っ切れたみたいです。

 テンションが高い割に何故だか妙に息も絶え絶えな印象なのが気になりますけど……。


『いやー、ちょっと死に掛けちゃったけど、結果オーライね』

「何があったんですか!?」

『でも大丈夫。とりあえずの悩みは全部お風呂の排水溝に流したから』

「本当に何があったんですか!?」

『そんじゃ、また明日!』

「ちょっ――」


 ……切れちゃいました。

 正直、何がなんだかよくわかりませんけど……でも立ち直れたみたいで良かったです。


 でも本当に……何があったんですか?

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