第49話 高梨由利子は水浴びする
「ほーらみちる、
「あ、いただきます」
みちるほんとよく食べるなー。
美味しそうに食べてくれるし、餌付けしたくなっちゃうのも仕方ないよね?
ではあたしも1つ。
……うん。鶏ささみのパサパサしたヘルシーな食感がたまらないね。
しかし、暑そうだな。水着じゃ恥ずかしいからと言ってブラウスを着ちゃってるんだけど、この陽気である。
そしてバーベキュー。もはや汗だくで滅茶苦茶エロい。
むしろブラウスのせいでエロいまである。
だって下は水着なんだよ? なまじ上を隠したせいで下がパンツにしか見えない。
いっそ羽織るだけの方がマシなのでは?
「ねぇみちる、それ脱いだ方が良くない? 暑いでしょ?」
「う……、でも……」
「汗で濡れて透けちゃってるよ」
「えっ!?」
慌てて確認してる。いや嘘なんだけどね?
このくらいで透けちゃってたら普段からやばいからね?
「……騙しましたね?」
「いやごめん。でもほんと暑いでしょ?」
「それはそうですけど、う~~~~」
「それに汚しちゃまずいし」
「わかりましたよ、もうー!」
なんて言いながら豪快に脱いでる。ほんとは暑さにだいぶ参ってたんでしょ。
ま、開放的になってくれたのは何よりだね。
「食べ終わったら水浴びしよ。庭の池、入れるでしょ?」
「いいわね。手入れはしてあるから入れるわよ」
「池……ですか……? あの、深さは……?」
あれ? みちる……なんか顔が引きつってる?
「えーと、みちる、もしかして?」
「はい……、私、泳げなくて……」
恥ずかしそうに顔を伏せ気味にカミングアウト。
運動苦手そうだとは思ってたけど泳げなかったかー。
「深いところでも1メートル無いわよ。浅い所なら50センチくらいだし溺れる心配は無いわ」
「でも私、お風呂で溺れたことありますし……」
お風呂……自宅のお風呂だよね? そこで溺れるのはむしろ難易度高いのでは?
「まぁあたしらが近くにいるし、大丈夫でしょ。泳いだりするわけじゃないし、ちゃんと見てるからさ」
「それなら……はい。ちゃんと見ててくださいよ?」
そりゃもう、ちゃんと見ますとも。
じっくりと見させてもらいますとも。フヒヒ……。
「……やっぱりあんまり見ないでもらえますか?」
「ちょっ、いや邪な気持ちなんてちっともさっぱりありませんですよ!?」
あっれー? 顔に出ちゃってた!? もうちょっと隠す努力しろあたし!
「涼子さん、由利子さんの代わりに見ててもらえますか?」
「ええ、任せてちょうだい。なんなら由利子は沈めておくわ」
「沈めないで!? 変な目で見たりしないから沈めないで!?」
いいですよーだ。だったらリョーコの方じっくり見てやりますよーだ。
……いや、こっちはこっちで退廃的で背徳的で一周回って前衛的なのよね。
い、いいのかな? じっくり見ちゃっていいのかな?
リョーコの方は多分気にしないんだろうけど。
ま、まぁ、沈められたら沈められたで、むしろ水中から眺めるのも乙なものだと思おう。
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「そぉーれ、くらえリョーコ!」
両手で掬った水をリョーコに向けて思いっきり――
――バシャッ!
「ふふっ、やったわね、由利子」
というわけでまぁ、いざ水に入ってしまえば沈めるだの何だのといった物騒な話は忘れてしまうわけで。
リョーコも珍しく上機嫌な顔で水浴びを楽しんでいる。
そして腰を落として深く構え、右手は腰の後ろでスプーンのような形にして水面近くの水を掬い――
「いやちょっ、待っ――! 何その構えあぎゃーーーーっ!」
およそ女子高生らしからぬ声を上げてしまったけど仕方ない。
リョーコが右手を振り抜いたと思ったら次の瞬間には水滴が散弾銃のように打ち付けてきたわけだからして。
いや人間散弾銃って何よ物騒過ぎるでしょ。
浅いところで座って見物してるみちるも、こんな光景を見せられては恐怖のあまりに――
「あははっ、涼子さん、やり過ぎですよー」
……無邪気に笑っていらっしゃる。いや笑い事じゃないですよ?
めっちゃ痛いです。やり過ぎとかそういう次元じゃないですよ?
いやまぁ、いいんだけどね。女の子は笑顔が一番だからね。
この笑顔のためならピエロにだって何だってなってあげますとも。
せっかく青春を取り戻したのに、ここんとこ魔獣退治ばっかだったもんね。
ここらでちょっと、羽目を外して遊びまくらなきゃね。
「みちるも座ってないで遊ぼうよー」
「い、いえ私は――」
――バシャッ!
「ひゃわわっ」
「ほーら、気持ちいいでしょー?」
へっへっへー。ぶっかけてやるぜー。
せっかく水着なんて着てるんだし、もっと濡れちゃおうぜー?
ほら、リョーコも一緒になって水を――って、リョーコがやったら危な――
――バシャッ!
「気持ちいいわよ、みちる」
何も危険なことは無く一緒になって水をぶっかけて……あれ?
今普通にぶっかけたよね? あたしにやった時と違くない?
「ねぇリョーコ、なんであたしには散弾銃みたいに飛ばしたの?」
「えっ……? 何故と言われても、塊のまま飛ばしたら危ないでしょう?
あーうん。飛沫で飛ばしてあの威力なんじゃ、塊のまま飛ばしたら危ないね、うん。
いや、聞きたかったのはそういうことじゃないんだけどまぁいいや。
みちるもちょっとプンスカ顔でやる気になってきたみたいだし。
「仕返しですっ! えいっ!」
ってやり返してきたけど、全然腰も入ってないし、腕もあんまり振れてない。
パシャッって感じで可愛らしく飛んだだけ。
「おっと、そんなんじゃ届かないよー?」
「うう~~っ、それならこれでどうですかっ!」
っと、今度は両足を内股に軽く開いて、その間で両手に掬った水を思いっきり――
――バシャアッ!
ひゃわわっ! 揺れてる揺れてる!
思いっきり上体を反らすように両腕を振り上げたもんだからお胸様が大変なことに!
ドキッ! 魔法少女だらけの水浴び大会だけどポロリはまずいですよ!
「……えいっ! ……えいっ!」
「うわっ、ちょっ、ストップ! みちるストップ!」
「やめませんよ! ……えいっ!」
ひえええ! 気付いてみちる! あなたは今、大変な凶器を振り回しているの!
ああああでも水着がピッタリフィットしてるからセェーーーーフ! フルカップで良かった!
「楽しそうね、私も混ぜてちょうだい」
リョーコまで一緒になってバシャッと――あ、今度は普通に掛けてくれた。
あれもうやめてよね? めっちゃ痛いから。
「ええい、やったるわー!」
なんか気が付いたら2対1の形になっちゃってるのが謎だけどこれはあれだ。
あたしが2人から愛されてるってことだよね? うんきっとそうだ。そうに違いない。
しっかし2人同時に相手するのはきっついな!
よーし裏技使っちゃる! 五体投地アターック! ざっばーん!
って、あ痛ったー! これ自分が痛いやつだ!
水面に全身叩き付けた! 痛い! ヒリヒリする!
「ぷっ、ふふっ、何やってるんですか、由利子さん」
「全くもう、見てて飽きないわね、あなたは」
な、なんかウケたからから結果オーライ!
で、でも痛い。痛いけどこれもう笑うしかないな。あははー。
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ふぅ。楽しかった。目の保養にもなった。
2人とも楽しんでくれてたし、イベントは大成功だよね?
というわけで、ちょっと名残惜しいけど水着タイムはおしまい。
今はリョーコが洗面所で着替えてるところ。みちるは着替え終わってて最後があたし。
リョーコが最後になるって言ってたけど、そこは順番譲っておいた。
というかまぁ、さっさと着替えてもらわないと色々とアレなのよ。
水浴びしてる間はまだよかったんだけどね?
いざ水から上がったら濡れたスク水の破壊力がやばい。
何あの光沢。エロさ倍増でしょ。しかも濡れた髪が張り付いてて更に倍で4倍。
こんな状態でお尻の食い込み直されたりしたら更に3倍の合計1200万エロスよ。
あたしの中のバッファローがどうにかなっちゃうじゃないの。
いやまぁ、せっかくだしもうちょっと見ておきたかった気も――
「ねえ由利子」
「ほひゃああい!? いや変な想像とかしてないですよホント!?」
「何を言っているの。それよりごめんなさい」
あーびっくりした。何でいつも変なタイミングで来んの?
それで何だって? ごめんなさいって何?
「水浴びを始める前に着替えを縁側に並べておいたじゃない。その時に私の下着を由利子の着替えの上に落としてしまったのよ」
「ほぁい!?」
なんか前にもそういうこと無かった!?
お願いだから人の着替えの上に危険物置かないで!?
「念のため取り違えないように由利子の下着も取り出してじっくり見比べてみたのだけれど」
勝手に人のパンツ掘り出してじっくり見ないで!?
お気に入りの可愛いのだからいいけど! いや良くないけど!
「ほら、由利子の下着ってなんだかお洒落なデザインじゃない? それでせっかくだから観察させてもらったのだけれど、満足して返そうと思ったところで取り違えてしまったみたいなの」
いや何でよ!? じっくり観察しといて取り違えるってコントか何か!?
違うでしょ! 何も違うでしょリョーコ! あんたは白! あたしは黄色! 白と黄色!
色がだいいち違うでしょ! 色が違うから一目で違うってわかるでしょ! OK!?
「すぐに脱いだから汚れてはいないと思うけれど、気になるようなら代わりの下着を持ってくるわ」
「いやいいから! 気にしないから!」
代わりのってつまりリョーコ使用済みでしょ!?
そんなん穿けるか! 子供が出来ちゃったりしたらどうしてくれんのよ!
「それなら良かったわ。では返すわね、ごめんなさい」
無造作に手掴みで持って来よった……。
リョ、リョーコさんはもう少しデリカシーというものを学ぶべきだと思います!
「あれ? でも取り違えたって、リョーコのパンツここに無いよ?」
「あら、おかしいわね」
「あと確認だけど、ちゃんと代わりのパンツ穿いてるよね?」
「もちろん穿いているわよ」
……良かった。穿いてなかったらどうしようかと思った。
「どこかその辺りに落ちてしまったのかしら……見つけたら教えてちょうだい」
その辺りって……どこにも見当たらないのよね。風で飛んでってたりしてなきゃいいんだけど。
っていうか一番上にパンツ置くのやめよ?
まぁ無いものはしょうがない。あたしも着替えてこよ。
あたしのパンツはちゃんとここにあるし。
……って、えっ? これリョーコ穿いちゃったの?
え? 大丈夫? リョーコ子供できちゃったりしてない?
っていうかちょっととは言えリョーコが穿いたパンツをあたしに穿けと?
ははははは穿けるかぁー!
どどどどど、どうしよ? さっきまで穿いてたのまた穿いちゃう?
ちょ、ちょっと気になるけどまぁ風呂上りってわけでもないし?
って、そうだ風呂上り用にもう1枚あるじゃん!
とりあえずそれ穿いて今のうちにパンツ洗っとこ。
なんとか夜までに乾かさないと……。
で、でもこのリョーコが穿いちゃったやつ、洗って穿けるようになるのかな?
あたしまだ子供とか作る気無いんだけど?
うぅぅ、これお気に入りなんだよなぁ。
仕方ない、特別な日にだけ穿くようにしよう。そうしよう。
いや深い意味とか無いですけどね?
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