第46話 高梨由利子は今日も振り回される
「由利子ー、今日は朝からお疲れー?」
「てか昨日も授業中寝てたよね?」
「あーうん、最近いろいろあってねー」
学校。なんでもない、ただの日常。
そして友達。魔法少女じゃない、普通の友達。
なんか最近、非日常に慣れ過ぎて何が普通なのかわからなくなってんね。
「まーたどっかで女の子拾ってきたのー?」
「どーせ長続きしないくせにー」
「こ、今度は長続きしてるからね……?」
でも毎回その日限りでさようなら――なんてのはもう昔の話!
いやね、元々一夜限りのロマンスを求めてたわけだからね、それ自体はいいんだけどね。
ロマンスの欠片すら無かったのが問題だっただけで。
「そー言えば前に拾った子、もう2ヶ月なんだ」
「由利子にしては長続きしてるね」
「まぁ、あれは――寂しいと死んじゃうウサギみたいな子だからねー」
なんだろう。たまに妙に距離感近かったり、なんであんな懐いてくるんだろ?
我ながら不思議。自分で言うのもなんだけど、だってあたしだよ?
「それで? 今度は二股?」
「いーけないんだー」
「いや、二股って言うか公認だから。って言うか……ペット枠?」
「なに? 可愛い子?」
「まーね。ハムスターみたいで可愛いよ」
餌付けするとね、可愛いんだよね。
カリカリもしゃもしゃなんでも食べちゃう。
「ま、そんなわけでこれからちょーっと忙しくなるから。ごめーん」
「フラれたら言ってね? 慰めてあげるから」
「じゃあ明日はカラオケ行こっか。おもっきり泣いちゃえ」
「フラれる前提で話さないで!?」
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「お待たせぇー」
「あら由利子。なんだかお疲れのようね。何かあったのかしら?」
「いやうん、原因その2さんは元気そうでいいね」
「原因その2とは」
「あ、原因その1も来たね」
「その1とは」
ちなみにあたし自身も原因その3。
やっぱり明日の準備を後回しにしとくのは良くないね。
今日は来る前に済ませておいた。
「それじゃあ揃ったところで確認なんだけど、ぶっちゃけこの山の捜索って、今日1日でほとんど終わっちゃうよね?」
「そうね」
「よく考えたらこのあたりにある山ってそんなに大きくないんですよね」
昨日の時点で薄々気付いてはいたんだけど、最後バタバタしてそのまま解散してしまった。
正直ここまで効率よく進むなんて思ってなかったんだよね。
「とりあえず今日はここでやるとして、明日どうしよっか?」
「少し離れたところの山にでも行ってみてはどうかしら」
「林とかなら近くにも結構ありますし、そういうところはどうでしょう?」
林か。確かに結構あるね、この辺。
というか、山か森か林か畑くらいしか無い。あと田んぼ。
「うん、あたしとしては近場から攻めて行きたいかな」
「私もそれで構わないわ。それと一ついいかしら?」
「何でしょう?」
「二人とも、明後日の土曜日は朝から来られるかしら?」
むしろあたしは最初から入り浸るつもりだったけど。
いやもうほんとナチュラルに。
「あたしは全然オッケー」
「私も大丈夫です」
「良かったわ。その日、重大発表があるの」
ほう、重大発表とな。
なんだろ? なんかそこはかとなく照れてるような仕草してるけど。
リョーコのこの仕草は大抵なんでもないことだから判断に困るんだよね。
「それとみちる、その日はうちに泊まって行かないかしら?」
「あ、お泊りですか? 私、そういうの憧れだったんです!」
「それなら是非泊まって行ってちょうだい。一緒に寝ましょう」
「い、いいい一緒に寝るんですか!?」
いやちょっとみちる? またなんか変な想像してない?
「ええ。もちろん由利子も一緒に三人で、よ」
「さ、3人で……? ひええ……!」
ほらやっぱりまた妄想が暴走してる!
そういうのじゃないって何度も言ったよね!?
「落ち着いて、みちる。普通に寝るだけだから。変な意味じゃないから」
「お、おふたりはもう、一緒に寝るのが普通なんですか……!?」
「だからそういうのじゃないって昨日小一時間説明したばっかでしょいいから落ち着けェェェェェェェ!」
はぁっ、はぁっ、はぁっ。
……はぁ。こりゃもうしばらく振り回される日が続きそうだわ。
あーもう、どうしちゃったんだろな、あたし。
疲れる予感しかしないってのに、なーんで自然に笑っちゃってんだろねー。
まったく、退屈できなくてつらいわー。
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