第5章 新たな目標とチーム結成
第38話 高梨由利子は決意した
「よーし、それじゃ、やるぞー!」
Aランク魔法少女に、あたしはなる!
とはいえ口で言うほど簡単じゃない。条件さえ満たせば誰でもなれるBランクとはわけが違うんだ。
「ところでAランクになるにはどうすればいいのかしら?」
「はい、いい質問だねリョーコ。では解説のみちるさん、どうぞ」
「えっ、私ですか? ええと……、Bランクの昇格条件はわかります?」
「ええ。Bランクになるには中型の魔獣討伐、もしくはBランクの魔法少女に
「はい、そうです。そのどちらかの条件さえ満たせば誰でもなることができます」
そんな条件だから仲間内で八百長試合して昇格だけさせるという手もあったりするんだよね。
ただ、普通はやらない。実力に見合わないランクになるのはそれはそれでリスクがあるのだ。
「ですがAランクには明確な条件は無いんです。一言で言うと……貢献度を積み重ねていく感じでしょうか」
「分かりやすいのが魔獣退治だね。たくさん魔獣を倒して貢献する」
「それと大気中への魔力還元なんてのもありますね。ただ、これは涼子さんは……」
「……? 私だと何なのかしら?」
これは……リョーコにはちょっと辛い現実を突きつけないといけないんだよね。
「魔法ってね、例えば魔力弾とか
「魔法少女の役目って、突き詰めると世界の魔力濃度の調整なんです。だからこの魔力還元も大事なお仕事のひとつなんですよ」
「なるほど、つまり何も無いところで意味も無く魔法を使うだけでも実は世界に貢献できるということね」
「そう……なんだけど、どんな魔法でも、ってわけじゃなくてね」
これを伝えるのは、辛いけど……でも、言わないと。
「例えば強化魔法の場合、使った魔力は使った本人の体に還元されちゃうのよ。だから大気中には還元されないの」
「ですから身体強化しか使っていない涼子さんの場合、魔力還元量はゼロ……ということに……」
「…………」
「…………」
「そ、そうだったのね。つまり私は世界に貢献できない穀潰しだったということね……」
「い、いやそこまでは……」
「こんな私ではAランクになるだなんて無理な話だったのね。ごめんなさい由利子。力になれなくて――」
「お、落ち着いてください涼子さん!」
「大丈夫だから! 魔獣退治頑張れば貢献できるから!」
ああもう! なんでいちいちネガティブモード入るんだよもう!
━━━━━━━━━━━━━━━━
「リョーコ、落ち着いた?」
「ええ。みっともないところを見せてしまったわね」
「いえそんなことは……」
と言いつつ、若干引き気味である。みちるがネガティブリョーコ見たの、初めてだもんね。
「とにかくさ、これから魔獣退治頑張って、みんなでAランク目指そう!」
「はい、頑張りましょう!」
「期待してるわよ、みちる。私は……魔獣退治ではあまり……貢献できないから……」
「だからなんでまたネガティブモード入ってんの!?」
ああもう! めんどくさいな!
「言っとくけど、リョーコにだって期待してんのよ?」
「大型の魔獣ってほんとに危険なんですから! 強い人に守ってもらわないと安心して魔法に専念もできないんですよ!」
「リョーコだから任せられるの。OK?」
ああもう。あんたなんであんな強いのにそんな自己評価低いのよ。
「じゃあ早速明日から……って言いたかったけど、さすがにもう1日休みたいね」
「むしろあと1日だけで大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。今までもしょっちゅうボッコボコにされてたし」
「そうね。由利子の頑丈さは私が保証するわ」
「そんなわけだから、明後日またうちに来てちょうだい」
━━━━━━━━━━━━━━━━
…………。
さて、と。どうしたものか。
いやAランクを目指すなんてのは、ぶっちゃけどうとでもなる問題なんだ。たくさん頑張ればいい。それだけ。
それより問題はリョーコだ。
昨日の
リョーコは感情の振れ幅が小さいんだと思ってたんだけど、違った。あれは強引に感情を抑え込んでるんだ。
しかも上から抑え込んでる感じだからネガティブ方向には際限なく――いやそれはこの際置いといて。
強引にやってるからコントロールしきれてるわけじゃない。
限度を超えて高ぶっちゃうと、一気に溢れて暴走しちゃうんだ。
本当に、どうしたものか。
無理に直そうとして直せるものでもないだろうしなぁ。
んーーーー。
まぁやることは変わらないか。
新しいこと覚えさせて、いろんなこと楽しんで、感情との付き合い方を教えてあげればいい。
そしたら時間が解決してくれるはずだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます