第22話 高梨由利子は洗われる
というわけで今日もリョーコの服を洗っている。
いや、服を洗ってるうちはいいんだけど……次はパンツだぁ……。
あああ……やばい、心拍数上がって来たぁぁぁぁぁぁ。
だが落ち着け由利子。落ち着くんだ。
そもそもあたしはパンツを洗うのが嫌なのか? いや答えはNOだ。
単に興奮し過ぎて命の危険がピンチでヤバいことが危機的状況であるというだけであって。
そう、むしろパンツは大好きだ。
ならば――気の持ちようで乗り越えられるのではないだろうか!?
そう、発想を逆転させるんだ。
『死にたくないからパンツ洗いたくない』ではなく『パンツ洗えるなら死んでもいい』と!
そう考えればきっと、新しい世界が見えてくるはず……!
…………。
フフ……ウフフフ……。パ、パンツ……ぬ、脱ぎたて……ハァ……ハァ………
って、これじゃただの変態さんじゃん!
落ち着け落ち着け。確かにあたしはパンツ大好きだけど? でも一線を越えるつもりは無いからね?
……でも洗い終わってから臭いが残ってないか確認するのはむしろマナーよね?
――ってそんなわけあるかぁ! ねぇーよそんなマナー!
落ち着け! 落ち着け由利子! そこを踏み外したらもう戻っては来れないのよ……ッ!
……ふぅ。よし!
さて、落ち着いたところで次はパン……ツを……。
ああああああ洗わなきゃはひぃぃぃぃ……。
そんな感じであたしが苦悩してる傍らで。
リョーコはいつものように涼しげな顔で語りかけてくるのだった。
「さて、他の方法を探すと言っても、本当にあるのかしら?」
「そこはまぁ、あると信じてやるしかないかなぁ」
「マニュアルをよく読んでも分からないものなのよね?」
「うん。元々
契約ブッチする人がいる!→じゃあ強制力持たせよう。
2人掛かりで攻撃してきた!→じゃあ横槍禁止。戦闘は一対一で。
みたいな感じで基本後手後手対応なのよね。
「そんなわけでね、委員会でも把握してない抜け穴がある可能性はまぁ、低くはないのよ」
「保証は無いけれど可能性は有るということね。では頑張って探すしかないわね」
「そ。頑張るしかないね」
うん、さっさと見つけないとあたし、いつか心臓破裂して死ぬのでは?
いやそもそもあるの? 無かったらどうすんの? いつまで探し続けるの?
「あ、そうだ。一番シンプルなのあった。多分ダメだろうけどやってみる」
「何かしら?」
「
そう、あたしは今、八百長で手に入れた契約権が1つあるのだ。
ダメ元だけど、これで破棄されてくれれば……!
――じゃぶじゃぶじゃぶ
「破棄されてはいないようね」
ああああああ手はパンツ洗い続けてるぅぅぅぅぅぅ。
っていうか仮に今ので破棄できたとして、再現するには被害者側の子が加害者側に
その時点で無理じゃん。ダメだ。
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というわけで、リョーコの実験のための契約を使ってしまったので、やり直しである。なのだが――
「ではやり直しね。さあ、撃って来なさい」
「それなんだけどさぁ」
八百長してしまえば一瞬で終わるのだが――ぶっちゃけ虚しい。
あれもう一度やるとかきっつい。というわけで。
「八百長じゃなくて、あたしが実力で勝っちゃえばそれでいい話だよね?」
「あら、勝てるつもりかしら?」
っと、なんかリョーコも乗り気っぽい顔してる。
やっぱリョーコも八百長とか好きじゃないんだろーね。
「やってみなきゃわかんないでしょ?」
「ではやってみましょう。でも実力で勝てないようなら素直に勝ちを認めてもらうわよ」
「はんっ。その時は潔く勝ちを認めてやらぁ!」
……なんだこのやり取り。いや間違ってないんだけど。
「じゃあ、石を投げて地面に落ちたらスタートでいい?」
「別にいいけれど……その間合いでいいのかしら?」
この間合い――だいたい8メートルといったところかな。
元々は八百長する前提の適当に決めた間合い。ぶっちゃけあたしの間合いじゃないんだけど。
「これでいいよ。じゃあ投げるね」
その辺に落ちてる石を拾って、真上に投げる。
その石が地面に落ちると同時に――全力で
真正面に! 一気に! 間合いを詰める!
今まであたしは散々搦め手を繰り出してきた。だからこそ、正面突破で意表を突く!
たったの8メートル。全力で加速すれば一瞬で間合いは詰まる。
だから
そしてこの
――バァァァァン!
爆風で砂利が飛び散り、リョーコに襲い掛かる。面での攻撃はリョーコに対して効果てき面!
ほら後ろに飛び退いたね? はい掛かった!
ここで
まぁあたしもちょっと浴びちゃってるけどそこは我慢。
そしてここで優しい由利子さんからの助け舟。リョーコの正面にも
はいこれでもう安心。爆風も砂利ももう届かないでしょ? いいなー羨ましいなーあたしまだ砂利かぶってんのよねー。なーんて。
さぁて、前後を
もっともリョーコならその狭い空間内でも
でも砕いてから脱出するまでにタイムラグがあるよね? そこを突いてやる!
魔力弾発射! 挟み撃ちだぁ!
……と、リョーコが腰を落として――重心を低くして――何する気?
「
――バキィィィィン!
突進技!?
この前食らったのと同じ……いやちょっと違う。強化版?
やられた! これならタイムラグ無しで脱出できちゃう!
くそっ、
――バァン!
急いで作ったから大した威力じゃないけど――それでもリョーコの勢いは削い……だ……。
ヒェェ! 爆風でリョーコさんの
威力は抑えめだったはずだけど、突進の勢いが合わさって倍加しちゃってたのね。
リョーコさん気付いて! いや気付いてるんだろうから気にして! 見えちゃう見えちゃう!
という心の叫びも届かずスカートボロボロなのに右の上段蹴り!
あ、でもスカートの下はスパッツだからセェーフ! じゃなくて左手でガード!
――の動きを見てから中断蹴りにシフト。はいそれは読んでました左手を下げてガード!
痛ったぁー、ズシンって来た。ガードしてなかったら悶絶してたわ。
でもやられっぱなしじゃいられない。
今、リョーコは蹴りを放った不安定な体勢だ。体勢を整える前に――うん?
リョーコの右足が――あたしの左手に引っ掛かるような形で――抑え……込まれ……?
「
転ば……された! 片足引っ掛けられてるだけなのに、めっちゃ重……っ!
鉄柱か何かが圧し掛かってくるみたいに! 強引に押し込まれた!
でも体勢が不安定なのは変わってない! 集中砲火を食らえ! 魔力弾発射!
――あれ、ちょっと待って。
この位置関係、何か
ああああああ痛たたたたたたたた!
リョーコが弾いた魔力弾が全部あたしに向かって降り注ぐぅ!
わかってたことじゃん! ちょっとくらい体勢が不安定でも捌かれちゃうって!
学習しろあたしぃぃぃぃぃぃぃ!
…………。
……また負けたぁぁぁ。
「まだ続けるかしら?」
「もう結構ですぅ……」
「ではあなたの勝ちということで。はい降参するわ」
うぅぅー。結局八百長になっちゃったぁ……。
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「では、今度は由利子の服を洗濯しないといけないわね。一度変身を解いて脱いできてもらえるかしら?」
「あ、さっき脱いどいたから持ってくるよ」
うぅぅ、リョーコの白魚のような手が……あたしのパンツなんかで汚されちゃう……。
頑固な由利子汚れがリョーコに侵食しちゃうぅ……。
「はい、じゃあお願い」
「任せておいて。あ、そうだわ由利子」
「なに?」
……え、なんでブラ持ち上げてんの?
ほんとに何?
「これはどう洗えばいいのかしら?」
「え、いや普通にいつも洗ってるように洗ってくれれば……あれ?」
そう言えば、テンパってて記憶が曖昧だけど……あたし、リョーコのブラ、洗った記憶が無い……?
え、もしかしてリョーコ、ブラ着けてない? いや、必要無さそうではあるけど……え、マジ?
「う……、じゃあ、洗い方教えるから……」
友人に自分の下着を洗ってもらう傍らで洗い方を教える構図。
なに、この……なに?
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「そんじゃ、今日は帰るねー」
どっと、疲れた。主に精神的に。はぁ。
とんでもないことになってしまった。いや実験自体は自分から言い出したことだけどさぁ。
さっさと解除法見つけないと、こんなの何ヶ月も続いたら身が持たないわ。
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