第12話 高梨由利子はリベンジしたい
ふーごちそうさま。
さて、それじゃあ食後の運動といきますか。
しかしまぁ、なんだ。全く勝てる気がしない。
リョーコに勝とうと思ったら、まず全力で上空まで飛んで何もさせないうちに全画面レーザーみたいの撃つしか思い浮かばない。
とまぁ、勝つための手段はある。問題は全画面レーザーなんてあたしには撃てないってことだけど。
でも負けっぱなしは癪だからねぇ。小細工でもなんでもやってやる。
「一応言っとくけど、リョーコもうBランクになってるから昨日みたいな無茶な契約はできないからね?」
「ええ、わかっているわ」
お互いBランクとなると、せいぜい1~2時間の拘束時間で済む程度のお願いが関の山。
ちなみにあたしがよくやってた『お買い物デート』みたいのなら話はちょっと変わってくる。
一緒に遊ぶだけとかなら相手もそんなに不満を抱かないから、拘束時間が多少長くても割と了承してくれる。
相手の了承さえあれば本来無理な契約でも有効になるわけだ。
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台所を通って土間に出て、そこの勝手口から外に出る。案内されたのは裏庭――というか、もうちょっと行くともう山だな。
「ここでやんの? てっきり道場使うのかと思った」
「魔獣というのは屋外にいるものなのでしょう? 実戦形式で屋外戦闘に慣らしておきたいのよ」
確かにこういう山の中で魔獣と戦うのはよくあることだからね。慣らしておかないと力加減を間違えて木に激突とかするかもしれないもんね。
ってもリョーコがそんなギャグみたいなことするとは思えないけど。
でもこれ、どっちが有利なんだろ?
木の間を縫って飛ぶのは大変だけど、それはリョーコも同じよね。足場の悪さが関係ない分あたしが有利?
でもリョーコなら気配で背後の木の位置とかわかりそう。死角からの魔力弾を見もしないで弾くとかされてんのよね。
後ろが見えない分あたしの方が不利な気してきた。
まぁなるようになれ、かな。やるならとことんやってやる!
「せっかくだからもっと奥行こっか。リョーコも変身しといた方がいいよ。虫に刺されなくなるから」
なんと
でも蜘蛛の巣は勘弁な。その場にある物はこっちで避けなきゃならない。
「あ、そうだ。変身したら忘れずにスパッツ穿いてよね。持って来てる?」
「ええ。持って来ているわ」
よしよし、きちんと穿いて……いや、目の前で穿くなよぅ……。
そんな盛大にスカート捲り上げちゃって……目、逸らさなきゃ……。
「ところで由利子」
「なに?」
「これって、服装が変わっているだけよね? 変身とは言わないのでは――」
「そういうこと言うなよォ!?」
「……よくわからないけれど、ごめんなさい」
まったく、問題発言はほどほどにしてよね?
いやまぁリョーコに至っては服装すらほとんど変わってないんだけどね。
「でも最近はドレスアップとかマジカルチェンジとかって呼ぶ子も多いんだよね」
「結局変身ではないのでは……」
まぁそれはそれとして。
「じゃ、この辺で結界張りますか」
結界を張ると、周囲から生物の気配が消えていく。
虫に刺されないどころか、虫自体がいなくなるわけだ。当然、蜘蛛の巣からも蜘蛛が居なくなる。
なお巣は残る模様。ほんと蜘蛛の巣は勘弁な。
「それじゃ、お互い10歩ずつ下がったところでスタートってことでいい?」
「それでいいわ」
1……2……3……
うっ……、リョーコ、後ろ見ないで下がってる。やっぱり木の位置とか気配でわかるんだ。
まぁいいけどね。こっちはこっちで障害物を利用させてもらうからね。
7……8……9……10!
開始と同時に右に飛ぶ。と同時に魔力弾をバラ撒く!
そこら辺の木に当たって乱反射した魔力弾は、もはやあたし自身にも軌道が読めない!
……あ、ダメだ。変なとこばっか飛んでく。うぅ、跳弾使うんならちゃんと軌道計算しないとやっぱダメかぁ。
やっば、リョーコがどんどん迫って来る。でも乱反射を警戒して縮地とかいう技は控えてるっぽい。
全く無駄じゃないってんなら、こうだ! 魔力砲台設置!
砲台はリョーコに向けて発射しつつ、あたし自身は魔力弾バラ撒き!
自分に向かって来る魔力弾を捌きながら、乱反射する魔力弾にまで対応しないといけないのだ!
さぁ、どうだ!
…………。
うっぐ、完璧に捌いておられる。でも確実に歩みは鈍ってる。なら押し戻しちゃる!
弾幕密度を上げてやる。1発の威力を落とせば、発射間隔を狭められるからね。
毎秒10発発射可能になれば、砲台4基とあたし自身を含めた5門で毎秒合計50発!
せっかくだから技名も付けよう。食らえリョーコ!
「 ハイパーミラクルギガントビューティーミステリアスバスター! 」
毎秒50発の高密度弾幕がリョーコに襲い掛かる――って、全部捌かれてるじゃん!
押し戻せてもいない。威力を落とした分、小さな力でも捌けるようになるとは言え――全部見切るってどんな動体視力だよ。
方針転換。歩みが鈍ってるうちに上空に飛ぶ!
そして空圧球を生成して――破裂! 頭上の枝葉を吹き飛ばす!
前後左右の木々にも空圧球――破裂! 大量の木の葉を舞い散らせながら、再び魔力砲台設置からの全門発射!
木の葉で視界が悪くなったところに上空から降り注ぐ魔力弾。さすがにこれは捌き切れないでしょ!?
って――あぁぁぁ逃げられた!
失敗だ。一瞬攻撃の手を止めちゃったから縮地っての使う余裕与えちゃった。
ダメだ隠れられた。ほんの数秒のうちに枝葉の残ってる木々の下に移動された。
あたしからは位置が確認できない――なんて言うと思った?
こっちには魔力感知の魔法があるからね。残念ながらあんたの位置は丸見えよ。
でもあえて探してるフリ。見失ったあたりの木々の枝葉を空圧球で散らす。
でも本当は知ってる。リョーコもうとっくに離れた場所まで移動してる。だから見失ったフリ。
少しづつ近付いて来てる。
凄いな。魔力感知で位置は分かるのに、全然見えない。完全に隠れてる。
あたしの視界を完全に把握して死角に入った瞬間に移動してる。
多分もうすぐ来る――来たっ!
木の幹を足場に三角跳びを繰り返して死角から一気に間合いを詰めて来る。
でも残念。お見通し! 振り向きざまに――空圧球!
って、ぎゃあ! なんかぶっかけられた!
なにこれ腐った葉っぱ!? 口に入った! うげぇ、ぺっぺっ……って、あ。
「残念だったわね。誘い方が露骨すぎたわよ」
言いながら前方宙返りしつつの踵落とし! ひぇぇ、スカートの中丸見え!
でもスパッツのおかげでセェーフ! なんて言ってる場合じゃ――
「
――ゴガッ!
「んぎゃあっ!」
蹴り落とされて、あたしは――地面に突っ伏した。
落ち葉のクッションのおかげであんまり痛くなかったけど……もうやだぁ……おうち帰るぅ……。
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「まったく、よりによってあんなもん投げる?」
「ごめんなさい。でも確実に意表を突くにはあれがいいと思って」
ええそりゃもう完璧に戦意挫かれたからね。
でもだからって現役JKに腐った葉っぱぶっかけるって、いくらなんでもひどいからね?
変身解いたら服は元通りだし、顔も洗って口もゆすいだけど……まだへんな感触が残ってる。
「あのさ、こういうの他所では絶対にやらないでよね?」
「分かったわ。由利子以外にはやらないようにするわね」
いや、出来ればあたしにもやらないでもらいたいんだけど……まぁいいや。
しかしさすがにこれは……責任取って一緒にお風呂に入ってもらうくらいしないと割に合わないよね?
まぁそんなこと言う度胸すら無いんだけどね!
それにこれは
「で? リョーコの勝ちだけど契約どうする?」
「そうね。実戦訓練がしたかっただけで、何かやってもらいたいことがあるわけじゃないのよね。どうしようかしら」
もういっそ、一緒にお風呂に入るとかでいいのでは?
しょうがないなー。契約なら仕方ないよなー。
「では
…………。
……は?
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