男女の入れ替りがある作品はこれまで数多見て来たけれど、一斉に複数人が入れ替わる作品はこれまでなかったと思います。
それと、複数人のヒロインというとハーレムを想像しましたが、この作品はハーレムものではありません。
それに登場する男子たちは、どちらかといえば『モテたい』という思考とは真逆です。むしろ、男女関係とは一歩引いて、しかしながら女子にはそれなりの配慮をするような男子です。
主人公の大河くんはある理由から高校生活で彼女を作るのはやめたいと思っています。
ヒロインのうちのひとり、大河くんと入れ替わる七海ゆきちゃんは男勝りな女の子。
大河くんの友人、虎門くんはなるべく目立ちたくない。
虎門くんと入れ替るヒロイン、高嶺華ちゃんは……。
各々、人にはあまり打ち明けたくないトラウマや悩みを抱えています。
入れ替わったことで新しい友情が始まったり、友情が深まったりして各々のトラウマや悩みが明らかになってきます。
この作品の魅力は、『入れ替り』という大きな問題に直面した男女が新たな人間関係を築き、トラウマや悩みを越えていこうとするところにあると思いました。
現実でも人にはそれぞれトラウマや悩みを抱えて生きていますよね。
思春期の子たちなら尚更……。
登場人物たちが抱えるものは、等身大でリアリティーがあり、共感もできて読み進めるほど物語に入っていけました。
個人的にはラブコメでありながらも、いきなりラブに振り切らず、徐々に築かれていく人間模様があり、読み手に『このふたりがラブラブになればいいのに!』と思わせてくれるところがとてもいいと思います。
あとは、他の入れ替り作品では『入れ替り理由が原因不明』『戻れるのかが最終目的』なことが多いですが、この作品は『入れ替わった理由』が明白で、戻る期間も明確。また、それに至った経緯もわかります。
『入れ替り』を『要素』として練られたオリジナリティーあふれる一作だと思いました。
完結まで追いたい、完結が楽しみな作品です。
今後も応援しています。