第32話 泊まり確定
それより重要な事がある。
「まあ、あの神の腕がどんなものかはある程度わかった。後はこれが役に立つかだ。荒魂と相打ちになったんだから強力な手札なのはわかっているが、魔物や人と戦うのに使えるのか?」
そこは確認しておかなくてはならない。強力でも使う度に痛みでぶっ倒れる能力なんて危なくて使えない。
「……今回は急に収まりきらない神力を注いだせいで魂の器が壊れそうになってた。少しずつならしていけば、器は壊れないはず」
ミサキに訊ねたけど、意外にも隣にいたアヤから答えが返ってきた。
そうか、俺を治療したのはアヤだものな。身体に何が起こったのかは把握しているか。
「そういえばお礼がまだだったな。助けてくれてありがとうな」
「ん……もっと頼ってくれてもいい」
そういって上目遣いをしてくるアヤ。こころなしか眉間に皺が寄っている気がする。
どういう表情なんだそれは?
「なんだアヤ、今日はめずらしく自己主張するな?」
「……リクトが苦しんでいるのを見ていてつらかった。だから……これからは私も戦う……回復させる力には自信ある」
そういって手の上の空中にスライムの塊を出してみせた。
心なしか鼻息も荒い気がする。
そうか、アヤは心配してくれてたのか。
「ああ、回復役はいるだけで心強いよ。あらためてよろしくな」
握手をするために右手を差し出すと、それをじっとみていたアヤがおもむろに身をかがめた。
スリッ
右手に絹のような感触。アヤが右手に頭をこすりつけていた。
自然に頭をなでる形になってしまった。
「そういう意味じゃなかったんだけどなぁ」
「あ……まちがえ、た?」
「まあ、アヤが良いならいいけど」
「ん……」
そういって顔を赤くしながら頭をすりつけるアヤ。ちょっと照れているのかも知れない。いまだ無表情で感情が読みづらいけど、だんだんわかるようになっていくだろう。たぶん。
「ふむ、まあ、お主らは今後も行動をともにするのだから仲良くするのはよいことじゃな。後腕を使う事についてはわしも問題ないと思うぞ。あの神はお主が強くなる事を望んで腕を貸してやると言ったのだからお主を害するものではないはずじゃ」
「そうだな。得体の知れないものではあるけど、使えるものは使っていくか」
アヤを見てなぜかニヤニヤしているミサキが気になるけど、とりあえず目下の気がかりが消えたのは良かった。
「して、今夜は泊まっていくのじゃろう? 寝具の類いはここにはないがどうする?」
唐突にミサキが今夜の予定を訊いてきた。
「それは自前の布団があるから適当なところにしかせてもらえば……って泊まるの確定なのか?」
外に目を向けるがまだ太陽は沈んではいない。泊まるのは別に構わないがなぜ?
疑問に思いミサキを見ると、ミサキは黙って俺の背後を見た。
直後、背中に衝撃。
「ちょ〜い〜、リクトばっかりチートな属性盛りすぎでずるくな〜い? 主人公補正強くな〜い? ねぇアヤ、スイ様に手紙書いてよぉ。ゲームのバランス調整希望しまーす! 具体的には私にもチートくださーい!」
振り向くと、そこにはできあがった酔っ払いがいた。その手にはワインボトルが握られている。お前、いつの間にストレージから取り出したんだよ。
「アヤもさぁ、いつの間にヒーラーなんてポジションゲットしちゃってさぁ……リクト! あと何枠あるのか教えなさいよぉ!」
「枠ってなんだよ⁉ グラスを押しつけるな、注ぐな!」
からみ酒をはじめたカノの手からボトルをもぎ取るとカノは空になった右手に別なボトルを出現させそのままのみ始めた。行儀がわるい事この上ない。
「まあそういうことじゃからおとなしく泊まっていくがよい。それにしてもこやつ酒癖悪いのう……」
「いや、ここまでなるのはめずらしいんだが……悪いけど、厄介になる」
ちょっとだけ引いているミサキに頭を下げ、俺達はミサキの社殿で一晩を明かすことになった。
スマホの鑑定アプリでキノコを見ていたら『スライム』が見つかった。いつから日本のジャンルはファンタジーになったのだろうか? 空館ソウ @tamagoyasan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スマホの鑑定アプリでキノコを見ていたら『スライム』が見つかった。いつから日本のジャンルはファンタジーになったのだろうか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます